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日本の広告費 インターネット広告媒体費詳細分析No.4

「2021年インターネット広告媒体費」解説。ビデオ(動画)広告、ソーシャル広告、現在のトレンドは?

2022/04/21

CARTA COMMUNICATIONS(CCI)、D2C、電通、電通デジタルの4社は共同で「2021年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(以下、本調査)を発表しました。CARTA HOLDINGSの梶原理加が解説します。

※ニュースリリース「2021年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」
 
CARTA HOLDINGS 梶原理加

インターネット広告費が、マスコミ四媒体広告費の総計を初めて上回る

2021年日本の総広告費は、6兆7998億円。そのうちインターネット広告費の総計は、前年比121.4%の2兆7052億円に到達。マスコミ四媒体広告費(※)の総計2兆4538億円を初めて上回りました。広告費全体に占める割合は39.8%と、伸長しています。

※マスコミ四媒体広告費=「新聞」「雑誌」「ラジオ」「テレビメディア(地上波テレビ+衛星メディア関連)」の媒体費と制作費の合算。

 

媒体別構成比

「インターネット広告費」から「インターネット広告制作費」および「物販系ECプラットフォーム広告費」を除いた「インターネット広告媒体費」は、前年比122.8%の2兆1571億円となりました。

本記事では、「インターネット広告媒体費」を中心に解説します。

「広告種別」「取引手法別」に見たインターネット広告媒体費

インターネット広告媒体費2兆1571億円の内訳について、「広告種別」と「取引手法別」で分析していきます。

●「広告種別」広告費
 
広告種別インターネット広告媒体費の広告種別構成比

広告種別では、インターネット広告媒体費全体の2兆1571億円のうち、Google等の検索エンジンと連動した「検索連動型広告」が7991億円。全体の37.0%と、最も大きな割合を占めました。

続いて、さまざまなウェブサイトに表示されるバナータイプの「ディスプレイ広告」が6856億円で、全体の31.8%。そして毎年大きく成長している「ビデオ(動画)広告」は、5128億円で全体の23.8%を占めました。2022年は、「ビデオ(動画)広告」が6000億円を超えると予測されています。

ビデオ(動画)広告市場 推移(予測)

●「取引手法別」広告費

取引手法別

インターネット広告媒体費の取引手法別構成比続いて、取引手法別の広告費を見ていきます。

最も多いのは今回も「運用型広告」で1兆8382億円、広告費全体の実に85.2%を占めています。この比率は年々増加しています。運用型広告はインターネット広告取引の主力として年々増加しており、2021年も前年比126.3%と大きく伸長しました。Googleを始めとする海外のプラットフォームの勢いが依然として強いことが大きな理由です。

「予約型広告」は前年比111.1%とこちらも伸長したものの、運用型広告の拡大により構成比はわずかに縮小しました。「成果報酬型広告」は前年比95.4%と2020年に続き減少しました。

●「取引手法別×広告種別」広告費

取引手法別×広告種別構成比取引手法別の広告費の内訳を広告種別と掛け合わせてみると(上図)、「運用型×検索連動型広告」が7991億円(前年比117.7%)。インターネット広告媒体費全体の37.0%と、最も構成比が大きくなりました。

次いで「運用型×ディスプレイ広告」が6059億円(前年比134.1%)で、全体の28.1%です。また、「運用型×ビデオ(動画)広告」が前年比133.8%と大きく伸長し、全体における構成比も少し上がって19.9%になりました。

トピック①ビデオ(動画)広告費はインストリーム広告がアウトストリーム広告を上回った

ビデオ(動画)広告種類別・取引手法別構成比

インターネット広告費で特に伸長の著しい、ビデオ(動画)広告費の内訳を分析しました。

ビデオ(動画)広告費では、動画コンテンツの前後や間に再生される「インストリーム広告」が2921億円で、全体の57.0%と、過半数を占めました。

一方、動画コンテンツ外に表示される広告枠や記事のコンテンツ面といった「アウトストリーム広告」は2207億円で、全体の43.0%となりました。

2020年は、インストリーム広告が46.6%、アウトストリーム広告が53.4%でしたので、2021年はインストリーム広告が逆転したということです。隆盛を極めるYouTubeの勢いもあり、広告主から、インストリーム広告のニーズが年々高まっていると言えるでしょう。

なお、ビデオ(動画)広告費の取引手法別では「運用型」が83.7%と圧倒的で、この構成比は2020年とほぼ変わっていませんでした。

トピック②ソーシャル広告はインターネット広告媒体費全体の35.4%を占める

ユーザーが投稿した情報をコンテンツとする「ソーシャルメディア(SNS系、動画共有系、その他)」。本調査では、ソーシャルメディア上で展開される広告を「ソーシャル広告」として推計しています。

ソーシャル広告は2020年も高い成長率を示していましたが、2021年はさらに大きく成長が加速。ソーシャル広告全体で7640億円(前年比134.3%)、今やインターネット広告媒体費の35.4%を占めるまでになっています。

ソーシャル広告市場

2020年同様「SNS系」「動画共有系」、さらにブログサービスやソーシャルブックマークサービス、電子掲示板サービスなどの「その他」という三つに分類し、構成比を分析しました。

ソーシャル広告種類別構成比

ソーシャル広告の中では「SNS系」が3168億円と最も規模が大きく、全体の41.5%を占めています。

また、「動画共有系」は2610億円で全体の34.2%。2020年は27.9%(1585億円)でしたので、ここでも大きく伸長しました。

2022年のインターネット広告費はどうなる?

2021年、インターネット広告費の総計は、前年比121.4%の2兆7052億円に到達しました。これは日本の広告費全体の39.8%にあたります。

2019年は30.3%、2020年は36.2%だったので、日本の広告費におけるインターネット広告費の占める割合は年々増加していると言えます。

特にポイントとなるのは、今回詳細分析をした「ビデオ(動画)広告」「ソーシャル広告」です。

「ビデオ(動画)広告」が伸長している大きな要因の一つに、YouTubeやTikTokに代表される「動画共有系」の伸長があります。2020年にはコロナ禍をきっかけに加速しましたが、2021年もその流れが続いています。

また、特にZ世代向けマーケティングの主流だったソーシャルメディア上の動画広告ですが、TikTok等のプラットフォームで利用者の年齢層の広がりがみられています。利用者の年齢層が広がることで、新たなマーケティングへの活用が期待され、今後も「ソーシャルメディアでの動画広告」がさらに伸びていくと予想されます。

現在の勢いでいえば、「物販系ECプラットフォーム広告」の伸長も見逃せません。こちらは、コロナ禍で生活者のEC利用が増加したこともあり、前年比123.5%で1631億円となりました。2020年の124.2%(1321億円)に続き、大きな成長率を示しています。

物販系ECプラットフォーム広告費

物販系ECプラットフォーム広告費は、ECモール内でオンライン店舗を構える企業が自社の商品ページへ誘導するための広告を対象としています。さらにEC全体でいうと、「Shopify」等のサービスを使ってネットショップを開設し、ソーシャルメディア上で生活者とブランドがコミュニケーションをとり、商品認知から購買までをシームレスにつなげる「ソーシャルコマース」も伸びています。自社ECサイトへの誘導のためのソーシャルメディア広告費も今後増加していくでしょう。

「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」(媒体費に含まれる)は、前年比132.1%の1061億円で、1000億円台に到達しました。中でもテレビメディアデジタルは、前年比146.8%と高い伸びを示していて、この伸びが「インストリーム広告費」の拡大にも寄与しています。

このテレビメディアデジタル成長の立役者といえる「TVer(ティーバー)」は、サービスの認知拡大や、視聴できる番組数の増加、東京2020オリンピック・パラリンピックの視聴により、再生数・ユーザー数ともに順調に伸びています。さらに、2021年10月からは日本テレビが、テレビ放送のリアルタイム配信をスタート。2022年4月、民放キー局全てでリアルタイム配信が開始されました。コンテンツが充実して視聴者が増えると、さらなる伸長が予想されます。

継続的に成長を続けているインターネット広告媒体費ですが、最後に今後の予測と課題を考えてみましょう。まず、2022年の予測ですが、インターネット広告媒体費はさらに伸長し、2兆4811億円(前年比115%)まで拡大する見込みです。

インターネット広告媒体費総額 推移

個人情報保護の潮流を受けて、大手プラットフォームがサードパーティクッキーのマーケティング利用を廃止するなど、いわゆる「Cookieフリー時代」が到来しようとしています。「Cookieフリー」について、2021年のインターネット広告費への影響はそれほど大きくありませんでした。しかし、さまざまなターゲティングができない、コンバージョンが取れないという課題が出始めています。

現在のインターネット広告費の多くを占めるソーシャルメディアの運用型広告も、基本はサードパーティクッキーを活用していました。2022年は、個人情報を保護しながら生活者一人一人に合わせた広告を配信するために、新たな工夫が必要となりそうです。

※Cookieフリーの関連記事はこちら

個人情報保護の他にも、インターネット広告では「信頼性」が常に問題になっています。景品表示法や薬機法について消費者庁が注意喚起をしたり、著作権の問題が起こったり、悪質な広告が配信されたり、さまざまな課題があります。

これらの問題に対して、広告業界はアフェリエイト広告の規制を進めています。また、日本アドバタイザーズ協会、日本広告業協会、日本インタラクティブ広告協会の広告関係3団体が、JICDAQ(一般社団法人デジタル広告品質認証機構)を設立。「アドフラウドを含む無効配信の除外」と「広告掲載先品質に伴うブランドセーフティの確保」の品質認証に取り組んでいます。

JICDAQ(一般社団法人デジタル広告品質認証機構)
https://www.jicdaq.or.jp/about.html

今後、インターネット広告が健全に成長していくために、信頼性の問題は避けて通れません。広告業界全体として、さらに力を入れて取り組むべき領域だと考えています。

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