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為末大の「緩急自在」No.21

アスリートブレーンズ為末大の「緩急自在」vol.21

2022/06/22

為末大さんに「いま、気になっていること」について、フリーに語っていただく連載インタビューコラム。唯一、設定したテーマは「自律とは何か、寛容さとは何か」。謎の「聞き手」からのムチャ振りに為末さんが、あれこれ「気になること」を語ってくれます。さてさて。今回は、どんな話が飛び出すことやら……。乞う、ご期待。

為末大氏

──「自律と寛容」というお題の下で、今回は「透明感とは、何だ?」という、これまで以上に奇天烈(きてれつ)なテーマを設定しました。毎回、へんてこなテーマにお付き合いいただいて恐縮です。

為末:よろしくお願いいたします。「自由に、なんでも語ってください」みたいな取材は、僕は苦手なんです。なにがしかのテーマを与えてもらえると、インスピレーションが湧いてくるというか……。

──ありがとうございます。きっかけは、やはりオリンピックだったんです。「透明感のある演技」「透明感のあるパフォーマンス」みたいな表現って、よくありますよね?でも、透明感って一体、なんだろう?これは為末さんに、ぜひ伺ってみたいテーマだな、と思ったんです。

為末:まだ、ご質問の意図がつかめていないのですが(笑) 。

──後ほどお伺いしようと思っているのですが、政治や企業経営における「透明性」「透明度」というものは、定量的なものですよね?数値で表せる。株主総会で、きちんとした売り上げを、包み隠さずオープンにする、みたいな。それに対して「透明感」というのは、定性的なものです。数値で表すことはできない。

為末:なるほど。

──四国に、四万十川ってありますよね?「日本最後の清流」といわれている美しい川です。「最後の清流」というイメージからすると、当然、透明度を示す数値のようなものは、他を寄せ付けないのだろう?と、勝手に想像してしまう。でも、数値だけで言ったら、四万十川よりも「透明度の高い」川は他にもあるんじゃないか、と思うんです。

為末:おもしろい話ですね。なんとなく、インタビューの狙いが見えてきました。

──たとえば、女性の魅力を語るとき。たとえば、料理を褒めるとき。ファッションや宝石、政治や経営……。私たちは「透明感」を求めますよね?もちろん、アスリートのパフォーマンスにしても、です。おいおい、個々のテーマについてお伺いしたいと思っているのですが、まずはいつも通りのむちゃぶりで恐縮なのですが、「透明感」の正体とは一体、なんなのでしょう?

為末:きましたね(笑)。スポーツの世界では、「無邪気さ」を持っている人が強い、といわれています。野球でも、サッカーでも、伝説的なスーパースターって、どこか「無邪気」じゃないですか?邪気がないというか、邪念がないというか。相手を打ちのめしてやろうとか、手柄を立ててやろうとか、そういうことではなく「自分がそうしたいから、そうしているだけ」といったような。「透明感」の説明になっているのかどうかは分かりませんが。

──いや、すごく分かります。

為末:「料理」の話でいうと、たとえばスープでいうなら「雑みのなさ」みたいなものが「透明感」として認識されるんだと思います。

為末大さん

──キラキラ輝くコンソメスープ、みたいなことですね。テレビ番組の食リポとかでも「なに?この塩ラーメン。おいしいー!あっさりしてるのに、コクがあるー!」みたいなの、よくありますものね。

為末:わははっ。

──鶏と豚の余計な部分をすべて取り除いて、3日、煮込みつづけて、その間、丁寧にアクを取り除きました、みたいな。

為末:「透明感」とは、引き算の美学だと思いますね。余分なものを取り去った末にたどり着けるもの、というか。子どもや、赤ちゃんに感じる「透明感」というものは、余計なものが混じっていない、つまり、引き算をする必要がない、ということなのかも。なんだか、探り探り、のコメントですが(笑)。

──それが、この連載の狙いです(笑)。

為末:スープの話に関係するのかもしれませんが、アスリートが求める「透明感」というのは、端的にいうと「カクカクした動きではなく、なめらかな動きをする」ということなんです。 

──うわっ。いきなり本題に入ってきましたね。

為末:たとえば……。

──待って、待って。それは深い話になりそうなので、次回、じっくりお伺いします(笑)。(#22へつづく)

(聞き手:ウェブ電通報編集部)


アスリートブレーンズ プロデュースチーム 日比より

今回のテーマは「透明感」でした。為末さんは、どんな問いにも、示唆に富んだ答えをくださる 。その示唆を生み出せるのは、アスリート時代の経験を、確かな言葉にできるからだと感じる。透明感という問いに対しては「無邪気=邪気がない」、つまり、自分がやりたいからそうしているだけ、という回答でした。ここから、少しビジネスにつなげて考えてみると、「透明感のあるブランド」とは「邪気がないブランド」とも考えられる。パーパスを決める、そのためのアクションを考えるという行為を、「何か余分な動きをしていないか?」「邪気のあるアクションをしていないか?」と捉えてみると、非常に分かりやすい。アスリートの言葉には、そうした発想のヒントが、必ずあると思う。

アスリートブレーンズ プロデュースチーム 電通/日比昭道(3CRP)・荒堀源太(ラテ局)

為末大さんを中心に展開している「アスリートブレーンズ」。
アスリートが培ったナレッジで、世の中(企業・社会)の課題解決につなげるチームの詳細については、こちら

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