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“DX先進国”中国で日系企業はいかにDXを進めるべきか?No.2

知っちゃいな!“中国キーワードカルテ”で今の中国を俯瞰する

2022/06/15

電通グローバル・ビジネス・センターでは、この目まぐるしい中国の変化を捉え、2022年の中国ビジネスを俯瞰(ふかん)するために、「中国キーワードカルテ2022」というレポートを開発。クライアントに提供しています。

本記事では、われわれが中国のトレンド・流行語・検索ワードランキングなどからピックアップした100を超えるキーワードの中から、いくつかを紹介。中国市場でのマーケティングを考えるヒントに迫っていきます。

中国キーワードカルテ

<目次>

1:大きな節目、2049年に向けて変化が加速。中国が目指す「次の100周年」
中国独自の文化に合った商品開発を行うローカルブランドの隆盛

2:「中国版ゆとり教育」が象徴する、ゆとり・癒やしを求める社会の機運
「まったり・のんびり生きたい」一部の消費者の空気感
「3人子政策」の推進で、今後さらに注目される子供関連産業

3:コロナ禍からのリベンジ消費、新しい旅行のカタチ
多様化する、リベンジ消費としてのレジャー産業

4:政府・民間が共に“最優先”で進めるカーボンニュートラルへの取り組み
EC業界でも最重視される、カーボンニュートラルの取り組み
 

1:大きな節目、2049年に向けて変化が加速。中国が目指す「次の100周年」

中国経済

2021年に中国共産党結成100周年を迎え、22年に「北京2022 冬季オリンピック」も開催した中国が見据えるのは、「两个一百年(リャンガイーバイニエン)」(二つの100年)目標である。最初の100年は中国共産党創立100周年(2021年)に小康社会建設を達成し、国内総生産(GDP)と都市・農村部住民の所得を2010年比で倍増する計画であり、既に達成と党大会で宣告されています。

次の100年は、2049年の「中華人民共和国建国100周年」をマイルストーンとして、富強・民主・文明・調和をかなえた社会主義現代国家という新たな中国の姿を目指すというもので、中国社会の成長への意志や一体感を醸成する愛国教育につながっています。

中国のマーケティングを考える際に、「中国政府の今後の政策や方針」を見ていくことは、非常に重要です。

中国独自の文化に合った商品開発を行うローカルブランドの隆盛

2049年に向けて政権への求心力が強化される中で、人々の消費スタイルも新しいトレンドを形成しています。

Z世代の間では「国潮(グオチャオ)」、すなわち中国ローカルブランドが空前の大ブームになっています。その背景には、中国経済が急速に発展したことで、「中国製造(Made in China)から中国創造(Created by China)」に変わり、中国ブランドが「コスパ重視から品質重視」に変わったことが挙げられます。

ファッションでは、中国色を前面に出したスポーツウエアブランドの「安踏体育用品(アンタスポーツ)」や「李寧(リーニン)」。化粧品では中国伝統の彫りや模様、少数民族の柄を巧みに取り入れている「花西子 Florasis(フローラシス)」など、中国風のテイストやデザインを取り入れた“国産品”が、Z世代の強い支持を得ています。

トレンドに敏感で愛国心が強いZ世代向けのブランディングでは、商業性(ターゲットニーズに刺さるプロダクト)と、愛国心(自国に対する文化的な自信をくすぐる要素)、両方を満たすことが成功のポイントになってきているのです。

2:「中国版ゆとり教育」が象徴する、ゆとり・癒やしを求める社会の機運

中国教育

2021年に「双减政策(シュアンジエン)」という、政府の意見書が発表されました。義務教育段階での学生に対する過度の宿題や、学外研修の負担を効果的に軽減することが盛り込まれた、中国版「ゆとり教育」ともいえる政策です。学習塾などの教育産業が規制されるなど、大きな影響をもたらしました。

この「ゆとりを求める」という機運は、政府方針のみならず、急激な成長を遂げた社会の裏側で、疲弊感や閉塞感を感じ始めていた市民の気分も反映されていたように思います。

「みんな頑張っているから自分も頑張らないと追いつけない」という考えの下、限られた資源のなかで頑張れば頑張るほど競争がますます激しくなる不毛状態を表す「内巻(ネェイジュエン)」という言葉が、世相を最も表す流行語の一つに選ばれたのもその象徴でした。

「まったり・のんびり生きたい」一部の消費者の空気感

社会の負の側面として、「躺平族(タンピンズー)」、日本語に訳すと「寝そべり族」(頑張らない、競争しない、欲張らない、最低限の消費水準の生活に満足し、心静かに暮らす若者たち)現象に代表される、急激な成長や社会の変化に置いていかれてしまった市民が大きな話題となりました。在宅時間が増えた彼らが愛する「螺狮粉(ルォースーフン)」(タニシのビーフン麺。自宅で調理できるインスタント食品で、ECやSNSで大ブームとなって爆売れした)や、“巣ごもりおやつ”も人気となりました。

また、ECサイトでも「癒やし」をテーマにした商品が人気となるなど、市民たちが求める「ゆとり・癒やし」は、ビジネスを考える上でも大きなポイントとなるでしょう。

「3人子政策」の推進で、今後さらに注目される子供関連産業

「三孩政策(サンハイジェンツー)」、つまり3人子政策が発表されました。長らく一人っ子政策が継続されていましたが、二人っ子政策からのさらなる緩和ということで注目を集めました。双减政策(ゆとり政策)は、子供のいる家庭の家計を圧迫する、教育費のプレッシャーから解放する、という側面もうかがえます。

中国ではおむつやミルクといった子供向け消費財について、より信頼できる外国製品・外国ブランドが選ばれる傾向がありましたが、この3人子政策の導入によって、さらに日本ブランドへの注目も高まっていくのではないでしょうか。

3:コロナ禍からのリベンジ消費、新しい旅行のカタチ

中国旅行

コロナ禍での行動制限への反動である“リベンジ消費”も、今後のマーケティングの大きなヒントとなっていくと思われます。

コロナ禍以前、日本では中国人観光客による「爆買い」が話題になりましたが、海外渡航が難しい昨今においては、「海外渡航できないことのストレスをいかに中国国内で発散させるか」がポイントになっています。

多様化する、リベンジ消費としてのレジャー産業

レジャー産業では、「红色旅游(ホンスーリューヨウ)」がトレンドになりました。これは、中国の歴史や伝統にかかわる名所を回る国内ツアーのことです。「两个一百年」に向けた政府の愛国教育とも関連して、ヒットとなりました。

また、海外旅行に行けないストレスを発散するために、「外国にいるつもり」を意味する「假装在国外(ジャージュアンザイゴーワイ)」が流行語となりました。これは、SNSなどで中国の街中や西北部の国内旅で海外旅行に行ったようなシーンを撮影してシェアするというものです。

また、年数回のセールスで格安購入できる日付指定のない旅行福袋、「囤旅游(トンリューユー)」も人気を集めました。EC商戦で日常品の買いだめ=「囤」という行為は、かつてぜいたくだと思われた旅行にも使われるようになりました。これは、豊かになった人々のレジャー志向が、いつか来るアフターコロナに備えるリベンジ消費という形で表れています。

旅行以外では、これまで中国ではあまり注目されてこなかったスキー、キャンプ、釣りが、「3大焼銭スポーツ」(お金がかかるレジャー)として高い人気を集めています。ブームの背景には、コロナ禍で自然志向と健康志向の高まり、北京冬季オリンピックの影響等が挙げられます。経済的に豊かになった人々のアウトドア消費は、キャンプ用品、スキーウエア、釣り具等カテゴリーの市場の成長を加速させています。

4:政府・民間が共に“最優先”で進めるカーボンニュートラルへの取り組み

中国 カーボンニュートラル

北京オリンピックの点火式が、世界に驚きを与えました。「トーチから聖火台に火を移すと大きく聖火が燃えさかる」というのが定番でしたが、トーチがそのまま聖火台に置かれるという異例の演出だったのです。炭素排出削減と環境保護を重んじる“グリーンオリンピック”の理念を、国家的な大イベントで世界中に伝える象徴となりました。

碳达峰(タンダーファン)碳中和(タンジョンフー)は、それぞれカーボンピークアウトとカーボンニュートラルのこと。中国政府・民間企業共に、最優先課題として進めています。

中国政府は、国連総会で宣言した2030年に碳达峰,2060年に碳中和を定める「ダブルカーボン(双碳)目標」を2021年の政府活動報告に正式に盛り込みました。2021年は中国の「ダブルカーボン元年」と呼ばれるほど、中国がSDGsを推進する上で重要な一年だったのです。

EC業界でも最重視される、カーボンニュートラルの取り組み

産業の発展が温暖化ガス排出量削減の方向に切り替わるに伴い、2021年には消費者意識にも大きな影響がもたらされました。
例えば、中国最大のEC商戦である11月11日の「W11(シュァン シー イー)」(ダブルイレブン)は、これまでの消費力を押し出す「爆買いの祭典」から、政府の「共同富裕」や「環境保護」政策や社会情勢を色濃く反映した社会イベントとなっていました。

グリーンと低炭素というコンセプトを掲げた2021年のW11では、オンライン上に「緑色会場」が設けられました。緑色会場では、エコ家電、インテリア、乳幼児用品、オーガニック商品という、国家認証を獲得した4大カテゴリーの50万種類の商品をラインアップ。購入額に応じてクーポンの発行や、リアルの植林活動に換算される「螞蟻森林(アントフォレスト)」キャンペーンのポイントが獲得できる仕組みになっています。

アリババグループ傘下の物流プラットフォーム企業である菜鳥網絡(ツァイニャオネットワーク)ではW11期間中、6万カ所の宅配ステーション(宅配物の受け取りサービス拠点)で消費者に対してリサイクル奨励キャンペーンを行いました。また、ロジスティックテクノロジーの活用で中国全土で電子伝票、段ボールサイズの最適化、配送ルートのスマート化・最適化、エコ包装、リサイクルボックス、電気自動車(EV)活用、太陽エネルギーの活用で、注文関連の二酸化炭素排出量を30%削減し、パッケージの70%でリサイクルを実現しました。

また、アリババグループが運営するBtoCのECプラットフォームである天猫(Tmall)は、14の大手企業と「緑色商家連盟」を結び、消費者へグリーンな消費習慣の啓発、企業として持続可能な生産・サプライチェーンの普及、植物・土壌・海洋保全活動など社会的取り組みを表明しました。

似た取り組みは、EC大手の京東集団(ジンドン)でも行われています。

これらハイテク巨頭の取り組みの共通点として、商品売上高の一部を公益活動団体などに寄付することが挙げられます。アリババであれば購入額の1.6%が寄付されます。共同富裕(貧富の差の解消)と独占禁止関連の罰金を念頭に置いているとも思われます。

中国におけるSDGsの取り組みは、まだまだ今後も持続していきます。
 

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