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リテールメディアがマーケティングを変えるNo.1

今注目のリテールメディアとは

2022/12/02

最近、「リテールメディア」という言葉を耳にする機会が増えてきました。アメリカのWalmartなどの成功事例で注目されるリテールメディア、その波が日本にも到来しようとしています。そもそもリテールメディアとは何なのか?リテールメディアの登場でマーケティングはどう変わるのか?電通でクライアントのリテールメディア立ち上げ事業に関わるデータ・テクノロジーセンターの濱口さん、山崎さんが解説します。

<目次>
リテールメディアってそもそも何?
なぜ今リテールメディアが注目されるのか?
リテールメディアがマーケティングを高度化する
セブン-イレブン・ジャパン×電通グループの挑戦

 

リテールメディアってそもそも何?

リテールメディアの定義にはさまざまありますが、ごく一般的にいえば、リテールメディアとは小売店が運営するECサイト上の各種オンライン広告や小売店の店舗に設置されたサイネージ広告などに見られる、「小売店が媒体社として提供している広告媒体」です。その特徴として、小売店のお客さまである生活者の購買データや、小売店アプリの利用ログなどの行動データなど、小売店が独自に収集・所有するデータ、いわゆる「1stPartyデータ」を活用して、精緻なターゲティングを行い、広告やクーポン(販促のための割引券)を配信できることが挙げられます。また、店舗にあるサイネージ広告や看板は来店客が購入する直前に目にするものであり、リセンシー効果が高い顧客接点としても注目されています。こういった特徴を持つリテールメディアは「購買につながる」メディアとして期待されています。

アメリカでは、Amazonはもちろん、リアル店舗を持っているWalmartのリテールメディアも急拡大しています。Walmartの決算によると2021年のWalmartのリテールメディアの売上は1.55B$(日本円で約2,248億円、1$=145円換算)となっています。日本においても、CARTA HOLDINGSが先日発表したリテールメディア広告市場の市場規模推計予測によると、26年には800億円を超える市場になると予測されています。

リテールメディア広告市場の市場規模推計予測
出典:2022年9月 株式会社CARTA HOLDINGS

 

なぜ今リテールメディアが注目されるのか?

デジタル広告の発展とともに、広告効果の可視化は飛躍的に進歩してきました。特にデジタル上で起こるコンバージョン(=CV)を取得できるようになった企業は、最終的な効果を計測しながらPDCAを実施し、ROIを向上させることが当たり前になっています。

一方で、消費財領域について考えてみると、多くの消費財メーカーはCVデータ、つまり自社の商品が消費者に買われたか否かという購買データを自社で持つことができていません。もちろんDX領域の進展により、D2Cなどの施策を多くの消費財メーカーが導入していますが、いまだに大部分の売上げは、小売店で発生しているため、消費財メーカーにとってPDCAの基盤となる購買データはリテール(小売業者)に蓄積されています。

また、たとえ購買データを保有していても、実際に消費者に対して施策が打てなければPDCAを実施することはできません。最近では多くのリテールが、店頭はもちろんのこと、自社アプリやLINE、メールなどさまざまな消費者との直接的な接点を構築し、消費者一人一人の購買行動に基づいた適切な顧客体験の提供を可能にしてきています。

つまり、消費財メーカーはリテールと組むことで、これまでとは違う新しいマーケティングを実現できる環境が整えられつつあるということです。このようなリテールが提供する新たな取り組みはリテールメディアと呼ばれ、さまざまなリテールが参入を始めています。

リテールメディアのしくみ
 

リテールメディアがマーケティングを高度化する

もちろん、これまでも消費財メーカーとリテールが組んでマーケティングを実施することはありました。ただし、「特定流通でどのように売り上げを上げていくか」という販促を中心に考える消費財メーカーの広域営業やリテールの商品担当(バイヤー)と、「短期的ではなく長期的な視点も踏まえて全体の売り上げをどのように最大化していくか」という広告を中心に考える消費財メーカーのマーケティング部/宣伝部や広告会社は、これまで連携をすることは多くありませんでした。

リテールメディアの登場をきっかけに、この販促と広告の統合を行い、すべての関係者がパートナーとして、マーケティングを高度化していく仕組みの実現が可能になりつつあります

リテールメディアによるマーケティングの高度化

 

セブン‐イレブン・ジャパン×電通グループの挑戦

アメリカにおいて発展を遂げているリテールメディアですが、アメリカと日本では小売り事情が大きく異なります。まとめ買いが一般的なアメリカと比べて、日本では多くの人が週に何回も買い物に行きます。こういった生活習慣の違いをきちんと考慮した上で、日本にローカライズされたリテールメディアが求められています。

リテールメディアの波が日本にも到来するなか、セブン‐イレブン・ジャパンは9月にリテールメディア推進部を立ち上げ、本格的にリテールメディアビジネスを推進しています。電通グループはリテールメディア推進部発足前から、リテールメディアに関する事業構想やセブン‐イレブンアプリ内での広告PoCなど、セブン‐イレブン・ジャパン独自のリテールメディアの推進をサポートしています。

そこで目指しているのは、「一人一人のお客さまの嗜好を理解した上で、1to1アプローチを実現し、より良い顧客体験を通じて、継続的に購買していただく環境をつくっていき、消費財メーカーにとっての優良なお客さまをリテールと一緒に育成していく」こと。

本連載では、日本における独自のリテールメディアが実現する新しいマーケティングについて、セブン‐イレブン・ジャパンの杉浦克樹氏や大石健司氏、電通コンサルティングの八木克全社長、IBAカンパニーの射場瞬社長を交え、探求していきます。ご期待ください。

 

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