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ウェルネス1万人調査からひもとく最新のヘルスケア・インサイトNo.2

健康意識が高くても、運動だけはしないタイプも!?7つのヘルスケア・クラスター

2023/10/04

「健康意識の低い人も興味を持つ企画にしたい!」
「このサービスは、まずは健康意識の高い人を優先して設計したい」

ヘルスケア領域のマーケティングの現場で、ターゲットイメージを持つために頻繁にされる会話だと思います。しかし、健康意識が高い、低いといってもどう高いのか、低いのか、なかなかインサイトをつかみづらいという課題感はないでしょうか?

電通ヘルスケアチームが実施している「ウェルネス1万人調査」では、約130個の健康意識・健康行動の項目を因子に、生活者を7タイプに分類するクラスター分析を行っており、健康意識が高いor低いの二分にとどまらない、より具体的な特性を明らかにしています。今回は「第17回ウェルネス1万人調査2023」(調査概要はこちら)の分析結果を紹介。皆さんのヘルスケアビジネスがターゲットにしたいのは、どんな特性を持つ生活者でしょうか?

<目次>
ヘルスケア・クラスターの全体像と出現率

健康意識が高くても、運動だけはしないタイプも!?

同じ健康意識が低いクラスターでも、その理由が正反対!?


 

ヘルスケア・クラスターの全体像と出現率

まず7タイプの全体像を見てみましょう。下記は、健康意識/健康行動についての平均反応数を横軸、縦軸に設定してプロットした図です。つまり、右上にいるクラスターほど、いわゆる「健康意識が高い人」に当たります。

世の中のイメージとして「健康意識が高い」と認識されるのは、①デジタルヘルスケア層、②心身ともに健康志向層、③クラシック健康生活層の3層だと想定されます。逆に、それ以外の4層が「健康意識が低い」と認識されると考えられます。

7タイプの全体像

それぞれのクラスターは以下の割合で出現します。

クラスターの割合

健康意識が高くても、運動だけはしないタイプも!?

では、ここから各クラスターの特性をご紹介します。まずは、「健康意識が高い」とされる3層についてです。

デジタルヘルスケア層

デジタルヘルスケア層は、日本市場での認知も上がりつつある「ヘルステック」に最も反応する層です。健康管理をデータで行い、遺伝子検査などの最新テクノロジーに大きな関心を示します。

体調管理に取り組むこと自体を楽しみ、ライフスタイルの一部になっている人々です。左脳(論理的思考をつかさどる)でも理解したいタイプなので、イメージ訴求だけでは納得しづらいという特徴があります。アカデミックな背景やエビデンスも行動変容を後押しするストーリーに必要な要素になります。また、情報を受けるだけではなく、SNSに自分の健康行動を載せるなど、情報発信も行う層です。

心身ともに健康志向層

心身ともに健康志向層は、「ウェルビーイング」の実感も大事にし、精神的にも安定した状態でいられるようコントロールしたい意向が特に強い層です。サプリメントなどの健康のための商品にかけている金額が全クラスターの中で最も高く、全方位的に健康意識・行動が高い優等生タイプにもかかわらず、実は「運動」だけは積極的にしないのが最大の特徴です。女性が多いクラスターなので、美容文脈や丁寧な暮らしなどの切り口との親和性も高い層です。

クラシック健康生活層

クラシック健康生活層は、60代の含有率が高く、身近な健康行動を積極的に行う層です。直近1年間の幸せ度が全クラスターの中で1番高く、健康な生活を送れているという自己評価も高いです。年代構成の視点では、生活習慣病やエイジングへの対策が最も身近にある層ではありますが、実際に悩んでいる症状は少なく、トクホやサプリメントには頼りたくないタイプです。日常生活に取り入れやすい身近な健康行動を設計する方が、反応が良さそうな層です。

同じ健康意識が低いクラスターでも、その理由が正反対!?

次に、健康意識が低いとされる3つのクラスターの特性です。
※「何もかも無関心層」はあらゆる項目に興味を示さない層のため、今回は省きます。

メンタル不安層

メンタル不安層は、頭では「健康のために〇〇するべき/〇〇したい」と思っているが、実際は行動が伴わない点が最も大きな特徴です。健康情報へのリテラシーも、あまり高くありません。自己肯定感が低く、自身が思うあるべき理想像と実際の乖離が大きい層のため、ストレス解消、メンタルケアの文脈を好みそうです。

気持ちくらいは前向き層

気持ちくらいは前向き層は、④メンタル不安層とは対照的に「こうあるべき」という健康に関する志自体が低いので、今できている行動やその結果に満足している傾向があります。健康生活度が平均以下の割には、幸せ度や自分満足度が高い層です。

どの性年代にも一定数存在するのが特徴で、健康行動の目的は、“負の解消”ではなく、“心地良く・リラックス”など、日々の生活が前向きになることに設定するのが良さそうです。

健康低関心層

健康低関心層は、とりあえず3食を食べることだけは心がけているが、健康への関心は低い層です。基本的に自分から健康的な商品には手を出さないのですが、「どうせならこっちを買っておこう」といった言い訳/ついで型の消費を、普段の行動動線上(ex. 職場周り)で作るなどの工夫でアプローチの可能性がある層です。また、テーマによっては本人よりも家族など周囲の人からの後押しが効果的な可能性もあります。


以上のように、市場をクラスター分析で把握してみると、健康意識が高い/低いといっても、実はタイプがそれぞれ異なっていることが分かります。

例えば、「心身ともに健康志向層」は健康意識が高いターゲットですが、「健康のために運動を!」といくら訴求しても、行動変容は起きにくいのです。この層の9割以上が「運動も大事」と理解しています。それでもやらない理由は、情報が不十分だから、ターゲットの理解度が低いから、お金がないから、といったことではなく、ターゲットが大事にする価値観、ライフスタイル、好みなどに合わないからなのです。

健康意識の高い人でも、「健康」のことはさておき、同僚や友人と飲むことが好きだったり、映画を夜中に見るのが好きだったりする一面もあるはずで、その方が人間らしく楽しい生活にも思えます。

そもそも「健康」のことだけを優先して生活している人は、おそらく少数です。ヘルスケアマーケットで働く私たちは、そんな「人々の本音」を見て見ぬふりをしないことが重要です。ターゲットAさんの健康意識の高低の背景にどんな価値観、ライフスタイルがありそうか?と、もう少し俯瞰で生活全体・生き方全体に想像を広げることが、健康行動を起こし、継続してもらう秘訣と言えそうです。


【調査概要】
調査名:第17回「ウェルネス1万人調査」
実施時期:2023年6月
調査手法:インターネット調査
調査対象:全国20~60代の男女(10000サンプル)
調査会社:電通マクロミルインサイト

 

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