ブランディングから販促まで!中国市場、短尺動画のクリエイティブ七箇条
2024/01/10
日本から中国への「越境EC」は、すでに1兆9000億円規模の市場となっています。この連載では、日本企業が中国という巨大市場でECを展開するためのヒントを探っています。
前回に引き続き、1日6億人を超えるユーザーが利用する、短尺動画の国民的プラットフォーム「抖音(Douyin、どういん)」で越境ECを行うノウハウを紹介します。
Douyinは、外部サイトに遷移せずにその場で直接商品を購入できる「ソーシャルコマース」のチャネルとしても注目を集めており、世界の名だたる企業・ブランドが販売チャネルを展開しています。
Douyin ECにおいては、企業は「短尺動画コンテンツ」「ライブコマース」「広告」といったさまざまな手段で生活者にアプローチ可能です。短尺動画プラットフォームで効果的な動画コンテンツとはどんなものなのでしょうか?
同プラットフォームを運営する中国のIT企業、抖音電商全球購(Douyin EC Global)の黄氏と、同社と協業するDentsu CXCのクリエイター、王一伊氏が語り合いました。
<目次>
▼Douyinではまず「種まき」のための短尺動画が重要
▼中国の生活者の心をつかむクリエイティブ7つの極意とは
▼「動画の冒頭3秒」で生活者をつかめるかどうかが決まる
Douyinではまず「種まき」のための短尺動画が重要
王:Douyinでは、個人のものだけでなく、企業が作ったものも含め、毎日多くの短尺動画コンテンツが投稿・閲覧されています。日本企業がDouyin ECに出店する場合も、ショップへの導線として「商品やブランドをアピールする動画」を作って発信するのが常道だと思いますが、動画制作のポイントを教えてください。
黄:Douyin ECで自社ショップへ誘導するには、次の4種類の動画を使い分ける必要があります。
①ブランドのフォロワーを蓄積するための動画
②商品やサービスのブランド認知やエンゲージメントを高めるための動画
③ショップや商品へのトラフィックを誘導する動画
④コンバージョン獲得のための動画
黄:このうち、③と④は、短期的に売り上げを上げる、販促のための動画です。商品やサービスの特徴を端的に伝えて、そのままライブ配信や商品カード(※)に誘導し、購入を促します。
※商品カード=Douyin ECではもっとも重要な、商品のサムネイル画像。広告でもライブコマースでも店頭でも、生活者が最初に目にする商品情報なので、デザインやコピーに趣向を凝らす必要がある。
例えば、「肉団子」の商品を売りたいのであれば、肉をひいているところや揚げているところなど、シズル感のあるライブ動画を投稿します。
王:なるほど、ユーザーが動画に触れたら、すぐ商品購入まで導くようなコンテンツということですね。①と②はどのような性質の動画ですか?
黄:「種まき」(Seeding)のための動画です。種まきは、特に新規のブランドや商品をECで展開する上で、とても重要です。種まきの動画では、商品の使用シーンなどを見せながら、長期的に得られるベネフィットを伝えるなどして、ブランディングを行います。そうやってコアなユーザーを増やすことで、長期的な売り上げ向上を図るのです。
種まき動画のメリットを大きく三つに分けてみましょう。
一つ目は、ブランドやショップのドライバーになることです。動画に興味を持ったユーザーは、その企業のアカウントあるいは店舗の資産となり、出店初期の立ち上がりを早めてくれます。
二つ目は、オーガニックトラフィック(自然流入)の増加です。広告配信ではなく、企業が普通に投稿した動画は、継続的なユーザーの流入トラフィックを生み出します。その結果、店舗運営の効率が高まります。
三つ目は、ターゲット層の拡大です。例えばインフルエンサーを起用した場合、そのインフルエンサーのフォロワーにアクセスできて、新たなターゲット層を取り込めます。
王:そうした種まきのための動画は、すぐに売り上げを生む販促のためというよりも、ユーザーとのエンゲージメントを高める意味合いが強いのですね。こうした動画施策を行いつつ、GMV(Gross merchandise volume=流通取引総額)も「中長期的な変化」を見ていくことが求められると思います。
中国の生活者の心をつかむクリエイティブ7つの極意とは
王:先ほど黄さんは、ブランディングとおっしゃいました。私は、黄さんをはじめとするByteDanceのスタッフと協業して動画の内容を考えることがありますが、日本でいうブランディング動画とは少し違うと感じています。Douyinでは中国人のインサイトをきちんと押さえないと共感が得にくいんです。そこでDentsu CXCでは、Douyin ECにおける種まき動画のクリエイティブのTipsをつくりました。
黄:逆に、私たちは中国人のインサイトはよく知っていますが、日本企業の認識とどのあたりに違いがあるのかが分からない部分があります。いくつか解説していただけますか?
王:はい。これは、中国越境ECに取り組む日本企業の方にはぜひ覚えてほしいTipsになります。日本とは違う、中国文化を理解した上での動画制作が必要です。
●「手の届かない憧れ」より「手の届く憧れ」
グローバルを意識した動画よりも、やはり中国文化に合った動画の方が受け入れられやすいです。外国人を出すよりも中国人を起用することで共感を得ることができます。
私たちの研究によれば、きれいなイメージ画像よりも、ローカルな生活シーンを映し出すといったように、身近に感じられる内容の方がエンゲージメントが高くなる傾向があります。
●「気取った広告表現」より「ベタな寸劇」
中国人は、多少美化された物語でもポジティブに捉える傾向があります。例えば、「都会に出てきた女の子が夢のためにけなげに頑張る姿を描いた動画」や、「雨にぬれて困っている子どもを店員が介抱する動画」などです。
日本人から見れば少し“やらせ”っぽく見えるかもしれませんが、中国は「人間味」を重視する文化があるので、脚色が少し大げさだったりしても違和感なく受け入れられて、高い評価を得ることがあります。
●昔から変わらぬ「家族愛文化」
伝統的に、中国人は「家族」をとても大切にする文化があります。そのため、「家族愛」をテーマにした動画が評価される傾向が他の国より強いのです。
黄:なるほど、ありがとうございます!近い国ではありますが、それだけに文化の違いをよく理解しないと、魅力的な動画コンテンツは作れないのですね。
Douyinでは数え切れないほどの短尺動画が毎日アップされています。その中で埋もれないためには、こうした中国人のインサイトをしっかり捉えて動画制作に反映する必要がありますね。
その上で、一過性の販促だけではなくて、ブランド価値をしっかり伝える動画も発信することで好感度を高め、長期的な視点で「コミュニティ」を作りながらファンを増やすことが非常に大事だと思います。
「動画の冒頭3秒」で生活者をつかめるかどうかが決まる
王:どんなに良い内容の動画を作っても、ユーザーに見てもらえなければ意味がないですよね。黄さんは、「見てもらう」ためにはどういったところに気を付ける必要があると考えていますか?
黄:Douyinのような短尺動画プラットフォームでは、ユーザーは興味がない動画はどんどんスワイプして飛ばしてしまいます。その中でもユーザーの指を止めて、意識をひき付ける方法はいくつかあります。一つ例を挙げると、動画の「冒頭」でユーザーの心をきちんとつかむことです。
私たちがDouyinでの視聴データを分析した結果によると、動画の冒頭の5秒間が視聴者の重要な意思決定時間だと分かっています。特に冒頭の3秒で興味を持たせられるかが、動画から離脱されない鍵になります。この3秒のハードルを乗り越えてしまえば、その後の5~10秒間の間に、視聴者から「いいね」やコメントなどのアクションを受けることが非常に多くなるのです。
そのため、動画制作に当たっては、冒頭3秒で「重要な情報」をうまく伝えるための構成を考える必要があります。また、どんな内容の動画であっても、「ペルソナ」「シーン」「セールスポイント」の3要素を踏まえて構成するといいでしょう。
王:ユーザーが感情移入できるキャラクター設定としての「ペルソナ」をしっかりと設定した上で、どういった「シーン」を描くのか、そのことによってどのようなメッセージを伝えたいのかを整理し、動画の冒頭で印象深く、かつ分かりやすく伝えることが大事なわけですね。本日はありがとうございました!
抖音電商全球購(Douyin EC Global)と電通グループの取り組み
電通グループは、Douyin ECを運営する「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」のサービスを活用し、日本企業に向けて中国越境ECのオリジナルソリューションとセールスパッケージを開発しました。
- 越境ECを展開しているが、売り上げの伸びや広告の費用対効果に不満があり、新しいアプローチや突破口を探したい。
- 初期投資を抑えつつ、ショートムービープラットフォームで海外ビジネスをスモールスタートしたい。
- 海外ビジネスにおいて、単なる業務委託だけではなく、共に成長するビジネスパートナーを探したい。
- 最先端の「インタレストコマース」をいち早く実践し、今後の国内ビジネスにも活用できるノウハウや知見をためたい。
その他、中国向け越境ECにご興味を持った方は、ぜひお気軽に電通CXCまでお問い合わせください!
トランスフォーメーション・プロデュース局 電通China Xover Center
<dentsucxc@dentsu.co.jp>