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まだ間に合う!中国インバウンド&越境EC入門No.7

巨大市場、中国越境ECのすすめ。Douyin企業アカウントの運用術とは?

2023/12/20

中国越境EC

人口、約14億人。小売のEC化率44%。

そんな巨大な中国市場に、ネットを通じてアクセスするのが「中国越境EC」です。

日本の中国への越境ECは、すでに1兆9000億円規模の市場となっています。本連載では、日本企業が中国でEC展開するためのヒントを探っています。

今回取り上げるのは、短尺動画を投稿・閲覧でき、1日6億人を超えるユーザーが利用する国民的なプラットフォーム「抖音(Douyin、どういん)」。

外部サイトに遷移することなく、その場で直接商品を購入できる「ソーシャルコマース」のチャネルとしても国内外から注目を集めており、世界の名だたる企業・ブランドが販売チャネルを展開しています。

このDouyin ECで、日本企業がどうやってビジネスを伸ばしていけるのか?その成長戦略について、同プラットフォームを運営する中国のIT企業、抖音電商全球購(Douyin EC Global)の黄益氏に、同社と協業するDentsu CXCのプランナー、水野潤二氏が話を聞きました。

<目次>
Douyin ECの最重要キーワード「全域インタレストコマース」

ブランドを成長させるための鍵、「FACT+S」とは何か?

レコメンドと広告の「相乗効果」で競争力アップ!


Douyin ECの最重要キーワード「全域インタレストコマース」

水野:日本企業がDouyin ECに参入したとき、どのようにビジネスを伸ばしていけるのか、黄さんに詳しく伺えればと思います。短尺動画プラットフォームDouyinおよびそのECサービスであるDouyin ECは、短尺動画とライブコマースのコンテンツが強いことで知られています。加えて、非常に優れたレコメンドシステムがあるのも特徴ですね。

黄:はい。Douyin ECは、ユーザー一人一人の興味関心に合わせてさまざまな動画コンテンツが提供される「インタレストコマース」が大きな特徴です。それぞれのユーザーの潜在ニーズにマッチした商品と出合えるようにレコメンド機能を強化した結果、一度買い物をしたユーザーが、Douyin EC内で繰り返し買い物をする習慣が身についてきました。

インタレストコマースとは?
参考記事:毎日6億人が使う動画ソーシャルプラットフォームで中国越境EC!

 

その一方で、自分が欲しい商品を自主的に検索する人も増えています。また、マーチャント(出店企業)に合わせた多様なアカウント運用の手段も提供していく必要があると考えています。そこで、2022年からは、「インタレストコマース」を「全域インタレストコマース」にアップグレードして、新たな経営方針として打ち出しました。
 
水野:「全域」というのは、ユーザーのカスタマージャーニー全域をカバーするということですよね。
 
黄:そうです。「購買」はもちろんのこと、「探索」や「共有」など、あらゆる購買行動に対応します。具体的な実装としては、コンテンツのレコメンドだけでなく、ECモールの機能や、ユーザーが欲しい商品にたどり着きやすい「検索機能」も充実させています。ECモールというのは、Douyinモールと呼んでいますが、さまざまな企業の商品をユーザーが一覧できる、ショッピングモール型のECサイトをイメージしてください。

水野:ありがとうございます。電通CXCでも、ユーザー行動の全域を研究して「電通インフィニティ・モデル」としてまとめています。現在のDouyin ECは、こうしたユーザー行動をカバーするプラットフォームですよね。

電通インフィニティ・モデル

黄:全域インタレストコマースを掲げて約1年たちましたが、良い成果が出ています。2022年のDouyin ECの流通取引総額は、前年同期比80%増を達成しました。そのうちモールでの流通取引額は277%増、生活者の自主的な検索による流通取引額は159%増です。

ライブコマースや短尺動画といったEC経路によるコンバージョンも増加しており、56%の店舗で5割を超えました。全域インタレストコマースの効果で、従来のコンバージョン経路も大きく伸びています。

Douyin ECはこれからの1年で、全域インタレストコマースのさらなる拡大に100億人民元(約2000億円)の予算を投下し、マーチャント(出店企業)を支援していく計画です。特にDouyinモールが、Douyin ECの新たな成長をけん引していくと考えています。

ブランドを成長させるための鍵、「FACT+S」とは何か?
 

黄益さん

水野:ここからはいよいよ、日本企業にとってのDouyin ECアカウント運用のポイントを伺っていきます。全域インタレストコマースにおいて、企業やブランド側はどのようなことに注力してアカウントやショップを運営するべきでしょうか?

黄:この点についてわれわれは、「FACT+S」という方法論を提唱しています。この図は、左側がライブコマースや短尺動画といった「コンテンツ」に関する要素で、「FACT」というくくり方をしています。右側はDouyinモールなど、マーチャントが持つ「店舗」に関する要素で、「+S」と呼んでいます。そしてコンテンツと店舗を横断する要素として「マーケティング加速」という概念を置いています。

マーケティング加速

水野:まず、FACTと+Sそれぞれについて教えてください。

黄:FACTは「Field」「Alliance」「Campaign」「TopKOL」の頭文字をとったものです。そして+Sは、「Search」「Shopping Center」「Shop」の頭文字です。

Field(フィールド)は、マーチャントが自社で実施するライブコマース、いわゆる「自社ライブ」のことです。ライブコマースとは、リアルタイムで動画のライブ配信をしながら、商品を販売することです。中国のEC市場ではライブコマースの比率が非常に高く、Douyin ECにおいても欠かせない販売手法となっています。

自社ライブでは、ブランドイメージや商品の魅力などをアピールできます。同時に、自社のアカウントにフォロワーやチームの経験を蓄積でき、安定的かつ長期なビジネス経営フィールドを築くことができます。

Alliance(アライアンス)は、多くのインフルエンサーとの協業を意味しています。中国ではインフルエンサーのことをKOL(Key Opinion Leader)や、KOC(Key Opinion Consumer)と呼びます。この協業には、2つの目的があります。1つは“種まき”です。インフルエンサーと組むことで、ブランドの知名度を拡大できます。もう1つは拡販です。訴求力または価格競争力の高い商品を選び、インフルエンサーの協力を得て商品を拡販します。

参考記事:トップKOLのリンピンさんに聞く!中国インフルエンサーマーケティング

 

Campaign(キャンペーン)は、文字通りキャンペーンや特別なセールのことです。Douyin ECは、日々さまざまなテーマのキャンペーンを展開しています。ブランディング、新製品のリリース、または大型販促など、いろいろな目的に合わせた販促が可能です。

TopKOL(トップKOL)は、ユーザーの購買行動に非常に大きな影響力を与える一握りのインフルエンサーです。TopKOLと協力して大きなプロモーションや販売を行うことで、ユーザーとの間に強固な信頼関係を築くことができます。また、TopKOLの起用というホットトピックを作ることで、ブランドの勢いをつけ、知名度を大きく上げて売り上げにつなげられます。TopKOLと組むことで、一度のライブで数千万人民元の売り上げを実現した事例もあります。

水野:この4つの要素が、Douyin EC上でのブランド成長の鍵を握る「FACT」なんですね。ライブコマースは日本のテレビショッピングのようなものですが、ライブなので、ユーザーと直接やりとりしながらどんどん商品の説明をしたり、その場での購入を発生させるのが特徴的です。FACTの最適な組み合わせというのはありますか?

黄:FACTの組み合わせ方は自由です。売りたい商品の知名度や、ブランドの現在の状況に合わせて考える必要があり、例えばField(自社ライブ)とAlliance(インフルエンサーとの協業)だけに注力しているブランドもあれば、AllianceとTopKOLの組み合わせで、ブランドイメージを作り、売り上げを伸ばしているブランドもあります。

水野:なるほど。次に図の右側、「+S」への取り組み方について伺えますか?

黄:3つのSは、Douyin ECとDouyinモール、つまりマーチャントの顧客接点である「店舗」に関する運営手法と考えてください。FACTはユーザーに届けるコンテンツについての手法ですが、コンテンツと店舗のいわば「Wエンジン」の考え方が非常に重要です。

Searchは、商品名やホットキーワードなど、SEO対策です。ユーザーがDouyin内でどんな検索をするのかを理解し、自社ブランドにたどり着きやすいように工夫します。

Shopping Centerは、売り場設計です。売れ筋商品や商品供給の検討、プラットフォームの持つ販促チャンネルへの参加、「商品カード」のブラッシュアップなどです。

Shopは、カスタマーサポートを含めた自社店舗の最適化です。

3つのSはマーチャントにとって、ビジネスのポテンシャル開発、新規ユーザーの獲得、運営コストの低減という3つの価値があります。

実は、Douyin EC全体の売り上げの中で、ライブコマースと短尺動画といったコンテンツを入り口にしない数字が、全体の30%を占めています。つまりデジタルシェルフ、Douyin内の店舗を入り口とした売り上げがそれだけ大きいんですね。コンテンツももちろん重要なんですが、3つのSにより、モールにおける基本的な売り上げのベースを伸ばしていく必要があります。

水野:ちなみに商品カードという言葉は、日本企業にはなじみがうすいと思いますが、どのようなものですか?

黄:要は、商品のサムネイル画像なのですが、Douyin ECにおいては非常に重要で、全ての基本となる要素です。商品写真に加え、コピーや基本情報が記載されています。

その商品について、「ユーザーが最初に見るもの」であり、モールの中に表示されるだけでなく、検索結果、短尺動画、ライブコマースを実際に実施するときにも、常に表示されます。ですから、商品カードをいかに分かりやすく、かつ印象的なものに仕上げられるかが大きなポイントで、その出来が売り上げにも大いに影響します。

レコメンドと広告の「相乗効果」で競争力アップ!

水野潤二さん

水野:Douyin ECでは「マーケティング加速」という概念があり、それをコンテンツとモールの運営と組み合わせるやり方を推奨しているそうですが、マーケティング加速とはどういった概念なのでしょうか?

黄:具体的には、Douyin内の広告と、Douyin自体が企画している販促ツールやイベントを意味しています。われわれはDouyin ECを利用するマーチャントに向けて、広告メニューも用意しています。これらの要素を「巨量千川(きょりょうせんがわ)」というマーケティングソリューションとして提供しています。広告や販促ツールを使うことで、マーチャントが作った優れたコンテンツを、大きく広げることができます。

水野:Douyinは全域インタレストコマースを行っていますが、広告や販促ツールによって、より多くのユーザーに届きやすくなるんですね。

黄:その通りです。Douyinのレコメンドエンジンにより、そのコンテンツと相性の良いユーザーにしっかり届けられます。「巨量千川」は非常に優れたツールで、例えば短尺動画の検索ワードなど、さまざまなトラフィック獲得を目標として設定できます。広告の投下後も、費用対効果など各種のコンバージョン目標を設定可能です。マーチャントが使いやすいように自動入札などの機能もあり、効率よく広告の購入ができます。データ分析と診断の機能も提供しているので、データに基づいた正確な広告投下ができます。

もう1つ重要なのが、ある商品やブランドにおいて、「レコメンド」と「広告」の相乗効果です。具体的な仕組みは割愛しますが、Douyinの大きな特徴であるレコメンドエンジンは、ユーザーにとって最適なコンテンツが届けられる仕組みを持っています。優れたコンテンツは、レコメンドのトラフィックの中で競争力を獲得していきます。そうしたレコメンドに関連する要素をブラッシュアップできれば、「巨量千川」に投下する広告の効率も良くなる仕組みです。逆に、広告で正確なターゲットユーザーを集客できれば、自分の商品とアカウントに対して、レコメンドのパラメータの蓄積が行われていくのです。

水野:なるほど、まさに「レコメンド」と「広告」の相乗効果でブランドが成長していけると。だからこそ、「FACT+S」というブランド成長のための方法論を提唱しつつ、効果的に広告を投下するシステムも用意しているのですね。

電通CXCでも、日本企業がDouyin内でどうやって良いコンテンツを作るのか(FACT)、良い店舗を作れるのか(+S)、良い広告や販促キャンペーンを実施できるのか(マーケティング加速)といったことをサポートしています。

黄:Douyin ECは、中国のマーケットにおいて、ブランディングと売り上げの両方を狙える最適なプラットフォームとして、世界各国の企業に利用していただきたいと考えています。すでに日本のブランドでも成功例がいくつもあります。今後も多方面から機能を充実させていきますので、ぜひ参入を検討してほしいです。

左から、電通の水野潤二氏、抖音電商全球購(Douyin EC Global)の林涛氏、黄益氏
左から、電通の水野潤二氏、抖音電商全球購(Douyin EC Global)の林涛氏、黄益氏

抖音電商全球購(Douyin EC Global)と電通グループの取り組み

ByteDanceメンバーと電通CXCメンバー
2023年1月某日、Douyin EC Globalメンバーと電通CXCメンバー。中国市場を知り尽くしたクリエイティビティで、中小企業から大企業まで、貴社の中国越境EC、支援します!

電通グループは、Douyin ECを運営する「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」のサービスを活用し、日本企業に向けて中国越境ECのオリジナルソリューションとセールスパッケージを開発しました。

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  • 初期投資を抑えつつ、ショートムービープラットフォームで海外ビジネスをスモールスタートしたい。
  • 海外ビジネスにおいて、単なる業務委託だけではなく、共に成長するビジネスパートナーを探したい。
  • 最先端の「インタレストコマース」をいち早く実践し、今後の国内ビジネスにも活用できるノウハウや知見をためたい。

その他、中国向け越境ECにご興味を持った方は、ぜひお気軽に電通CXCまでお問い合わせください!

電通China Xover Center
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