中国で越境ECするなら「購買行動の無限ループ」に乗れ!
2023/03/14
人口、約14億人。
中国のEC(e-commerce=ネット通販)市場に、今、世界中の企業が注目しています。
中国への「越境EC」は、日本からでも比較的容易に参入できます。2021年度には、日本から中国への越境ECだけで1兆9000億円規模(※1)に達しています。日本の大企業のみならず、中小企業にとっても見逃せない巨大市場なのです。
※1 経済産業省「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」より
今回取り上げるのは、中国でデイリーアクティブユーザー数6億人以上(※2)を有するショートムービー(短尺動画)プラットフォーム、「抖音(以下、Douyin)」。
※2 https://jp.reuters.com/article/china-bytedance-idJPKBN2661HU
Douyin内では、動画コンテンツを使った販促やブランディングができる上に、EC機能を使って直接商品を販売できることから、日本をはじめ中国国外の多くの企業が公式アカウントを持ち、活動しています。
そんな「抖音電商(以下、Douyin EC)」を使った中国越境ECの魅力について、中国ビジネスを専門とするDentsu CXCの水野潤二が紹介します。
<目次>
▼中国では老若男女が短尺動画に夢中!
▼中国人の消費行動における“徹底確認主義”とは?
▼Douyin ECが誇るレコメンドシステム
▼中国人の購買行動は「無限ループ」でできている?
▼インフィニティ・モデルを構成する6つのフェーズ
▼抖音電商全球購(Douyin EC Global)と電通グループの取り組み
中国では老若男女が短尺動画に夢中!
中国ではあらゆる領域で、驚くほどデジタル化が進んでいます。特にモバイルデバイス普及の影響は大きく、誰もがさまざまな情報を入手できるようになりました。
その結果、マスメディアよりもモバイルデバイスに触れている時間の方が長くなった中国人ですが、中でも短尺動画プラットフォームの利用時間は圧倒的です。
Douyinは各種ニュースから、中国ではおなじみの家族愛を描いた寸劇まで、コンテンツのバリエーションが多く、いわば総合情報メディアのような存在なのです。
その多彩なコンテンツを、ユーザーの趣味嗜好に合わせてレコメンドしてくれるシステムがあり、子供から年配者まで、まさに老若男女に視聴されています。
そんなDouyinが、動画投稿を楽しむプラットフォームであると同時に、ECプラットフォームとしても巨大市場となっているのです。
中国人の消費行動における“徹底確認主義”とは?
Douyin ECについてお話しする前に、まず昨今の中国人生活者の消費行動の傾向を見ていきましょう。
近年、中国人は物の品質や安全性に厳しく、買い物する際にはメーカーの「信頼感」を重視する傾向にあります。その結果、従来型広告の効果が薄れており、「企業がただ広告を出しても、なかなか購入につながらない」という傾向が日本以上に顕著です。
企業発の情報をなかなか信頼しない中国人の消費行動の根幹にあるのは、いわば“徹底確認主義”です。どんなに魅力的な商品でも、“信頼”がなければ購入に至りません。
そんな中国における商品コミュニケーションの一つのポイントは、生活者から“信頼”されている人の情報発信を活用することです。例えば「KOL」(Key Opinion Leader)と呼ばれるクリエイターの協力を得たコンテンツマーケティングが盛んです。
中国の生活者たちは、自分が信頼するKOL等から得られた情報を、さらに口コミを吟味した上で取捨選択し、ある程度“確信”が得られた時にようやく購入にたどりつきます。これは特にECを頻繁に利用する層である20~40代で顕著な傾向です。
Douyin ECが誇るレコメンドシステム
ここ数年、中国では従来のようなモノ起点のECから、人・コンテンツ起点の新しいコマース、名付けて「インタレストコマース(興味EC)」の時代が到来しています。その中でDouyinは、いち早くコンテンツを中心としたDouyin ECを開始しました。
インタレストコマースでは、「人がモノを探すのではなく、モノが人を探す」といわれています。
中でもDouyin ECのレコメンドシステムは優れており、コンテンツに興味関心のあるユーザーに効果的にリーチできます。このレコメンドシステムこそが、インタレストコマースを実現している心臓部です。
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さて、従来のECと、Douyin ECでのインタレストコマースの違いはどこにあるのでしょうか。
従来のECでは、はじめに広告を打ち、大量の人を集めます。そこから「興味関心を持つ人」「購入する人」「愛用する人」と、いわゆるマーケティングファネルの形で人数が減っていきます。この方法だと、新規獲得のためにかなりのマーケティング投資が必要です。
しかしインタレストコマースは違います。
レコメンドシステムで広告や動画コンテンツが拡散され、それを見たユーザーが商品を購入し、口コミや動画といったUGC(ユーザー生成コンテンツ)をDouyin上に投稿。それらコンテンツをまたレコメンドシステムが拡散する……というループができるため、ビジネスが一定の軌道に乗れば、新規獲得の費用を抑えても、雪だるま式でどんどん自走し、大きくなっていきます。
このレコメンドシステムは非常に優秀で、かなりの精度で適切なユーザーに「良いコンテンツ」を届けます。
このため、企業は広告の出稿数を増やさなくても、「良いコンテンツ」を作って投稿すればファンや愛用者を獲得できるという、新しい流れが生まれたわけです。
さらに、Douyin ECは、外部サイトに遷移せずにその場で直接商品を購入できる「抖音商城(Douyin Mall)」機能が実装されており(※)、従来のモールECの持つ検索機能、モール機能も充実しています。
※Douyin Mall=Douyin内のECサービスの総称が「Douyin EC」。2022年に新しく追加された従来型ECモールと同じ「棚型EC機能」をDouyn Mallと呼ぶ。
また、ライブ配信をしながら直接ユーザーにモノを売る「ライブコマース」にも対応しています。「インタレストコマース」にとどまらず、すべてのレイヤーのEC形態に対応できるプラットフォームに進化しています。
このようにEC機能が充実していることもあって、今や世界の名だたる企業・ブランドが、Douyin ECに販売チャネルを展開しています。
中国人の購買行動は「無限ループ」でできている?
中国市場におけるマーケティングは、Seeding(信頼形成)とHarvesting(販売誘引)の往来が基本です。
前述の通り、中国人ユーザーは「信頼感」をとても重視しており、商品やサービスの購入に慎重です。
そこで、まずは「明らかな広告」だけでなく、日々の面白い動画コンテンツ制作やライブコマースといった施策を行い、口コミやKOLの投稿のような「真実のUGC(ユーザー生成コンテンツ)」が生まれやすい状態をつくります。
そうしてプラットフォーム上で消費者の信頼を得ていき、潜在顧客を増やすのです。
「信頼の基盤」を十分に築いたら、広告やキャンペーンなどの販売誘引施策を行い、潜在顧客を購入に至らせます。これが、Douyin EC上でのマーケティングの基本的な流れです。
ポイントは、SeedingとHarvestingで「購入してもらったら終わり」ではない、ということです。
Douyin ECの真骨頂は、購入がきっかけで新たなコンテンツが生成され、そのコンテンツによって新規顧客を得るという、いわば“無限ループ”にあります。
ユーザーによって「共有」された動画がきっかけで、多くの「探索」が誘発され、「共感」「確認」を経て、「購入」に至ります。そして実際に使用したユーザーが良い商品だと「確信」すると、また「共有」され、新たな流れが生まれます。
私たちdentsu CXCは、この無限かつシームレスに循環するインタレストコマースの購買行動を抽象化し、「電通インフィニティ・モデル」と名付けました。
私たちdentsu CXCは、この無限かつシームレスに循環するインタレストコマースの購買行動を抽象化し、「電通インフィニティ・モデル」と名付けました。
「インフィニティ・モデル」を構成する6つのフェーズ
最後に、Douyin ECにおけるインフィニティ・モデルの各フェーズを解説します。
【探索】
高精度のレコメンドシステムにより、何気なく見ている人にも自分の趣味嗜好に合わせて興味のありそうなブランド・商品が表示され、興味を持つきっかけが生まれる。また、強力な検索機能により、探索時に商品理解も深められる。
【共感】
「あ、これいいな。自分に合うかも」とコメントや「いいね」を付けたユーザーに、関連するコンテンツがレコメンドされる。レコメンドの精度は高く、同系統の商品に数多く触れることで、関心を高めることができる。
【確認】
ほかの人の投稿やレビュー動画を見て、本当に信頼できる商品であるかどうかをじっくり吟味できる。Douyin ECの検索機能を使い、商品やレビューを検索し、比較検討ができる。また、「セール価格ではなく定価で買うと損」という意識が強い中国人にとって、Douyin EC内で各ECサイトの価格を比較できるのも重要なポイント。
【購入】
ユーザーが動画コンテンツやライブを見ながら「ちょっといいな」「こんなのが欲しかった!」と購入意欲が最も高まったまさにそのタイミングで、他のECサイトに遷移させることなく、シームレスに商品購入につなげることができる。
【確信】
ユーザーは商品購入後も“徹底確認主義”により、自分と似たユーザーのレビューなどで商品の信頼性や使い方を確認する。最終的には「この商品を買った自分は間違っていない」という確信とともに、良い商品を手に入れたことに対する承認欲求が生まれる。
【共有】
「確認」のフェーズで生じた承認欲求により、ユーザー自らが動画コンテンツや口コミを投稿。Douyin ECは誰でも簡単に動画コンテンツの編集と投稿ができるので、共有や拡散しやすい。そのコンテンツがレコメンドシステムにより広く届けられ、新たなユーザーへとサイクルが続いていく。
このように、一つのプラットフォームでシームレスに全てのフェーズが行われ、グルグル回って、無限に拡大して行くのがインフィニティ・モデルです。
Douyin ECでモノを売るためには、インフィニティ・モデルに沿って戦略を構築し、それぞれのフェーズで適切に「広告コンテンツ」「非広告コンテンツ」「ライブコマース」などを組み合わせる必要があります。
次回以降、「より効果的な動画の作り方」「KOLの活用方法」「ライブコマース」「アカウントの運用方法」など、具体的なDouyin EC活用方法をテーマ別にご紹介します。
抖音電商全球購(Douyin EC Global)と電通グループの取り組み
電通グループは、Douyin ECを運営する「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」のサービスを活用し、日本企業に向けて中国越境ECのオリジナルソリューションとセールスパッケージを開発しました。
- 越境ECを展開しているが、売り上げの伸びや広告の費用対効果に不満があり、新しいアプローチや突破口を探したい。
- 初期投資を抑えつつ、ショートムービープラットフォームで海外ビジネスをスモールスタートしたい。
- 海外ビジネスにおいて、単なる業務委託だけではなく、共に成長するビジネスパートナーを探したい。
- 最先端の「インタレストコマース」をいち早く実践し、今後の国内ビジネスにも活用できるノウハウや知見をためたい。
その他、中国向け越境ECにご興味を持った方は、ぜひお気軽に電通CXCまでお問い合わせください!
トランスフォーメーション・プロデュース局 電通China Xover Center
<dentsucxc@dentsu.co.jp>