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まだ間に合う!中国インバウンド&越境EC入門No.9

【電通独自調査】「コロナ後」のインバウンドは、量から質へシフト!

2024/07/29

中国越境EC

インバウンド産業はコロナ禍で大きな打撃を受けましたが、今や“コロナ前”を上回る勢いで回復しつつあります。

コロナ禍以前には圧倒的に多かった中国人訪日客は、まだ戻りきっておらず、2024年5月時点では、人数だけで見ると韓国からの訪日客数を下回っています。それでも訪日中国人の旅行中の消費額はどの国よりも高く、韓国の約1.5倍となっており、そのポテンシャルは無視できません。

本稿では、コロナ禍真っただ中の2021年と、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した2023年に行われた「電通インバウンド調査」をもとに、これからのインバウンド、特に中国人訪日客への取り組みへのヒントを探ります。

キーワードは、

  • 「量から質へ」
  • 「インバウンドからクロスバウンドへ」
  • 「販促からファンづくりへ」

中国市場に詳しいDentsu CXCの桜庭真紀と馬亦農が語り合います!

※調査概要はこちら
<目次>
訪日客は「一見(いちげん)さん」から「ハードリピーター」の時代へ!

日本のエンタメコンテンツの強さは圧倒的!?

インバウンドは海外に自社ファンを増やすチャンスである

訪日客は「一見(いちげん)さん」から「ハードリピーター」の時代へ!

訪日回数
※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります。

桜庭:コロナ5類移行後に日本を訪れた中国人のうち、約半数は4回以上の訪日経験があり、日本が好きで日本観光にも慣れている“リピーター”です。また、これから訪日を予定している人も、約75%が2回以上訪日経験あり、となっています。

つまり、コロナ禍収束後にすぐに訪日を希望するのは、日本に慣れ親しんだリピーターであることが分かりました。どうして、何度も日本に来るのでしょうか?

馬:現在、日本を訪れる中国人のほとんどは、いわゆる「マルチビザ(多次査証)」というものを取れる人たちです。その人たちはいつでも日本に来たいし、来れる人たちであり、今は円安なので、さらに追い風となっています。

そしてこの人たちにとって日本は、「身近でかつ高品質な日常を体験できる国」です。日本は事前情報が豊富に入手できることに加えて、来やすいインフラが整っている。そのため、体験重視の消費意欲が高い人たちにとっては、他にはない魅力があると言えます。特別な非日常体験ではなく、日常の延長線上にある適度なサプライズや刺激を求めて日本に来ている人が多いのです。

桜庭:ということは、訪日中国人の大半を占めるリピーターは、一般の観光客とは、行動も評価のポイントも違うということですね。調査結果から、彼らの行動を見てみましょう。

訪日リピーター調査

馬:日本でのお金の使い道は、モノ消費からコト消費にシフトしている傾向はありますが、お買い物の金額が増えた人が7割と、まだまだ買い物にはお金を使っているようです。

リピーターにとっては、もはや買い物も単なるお土産ではありません。自分のために、「日本でしか買えないもの」や「自分のこだわりや要求を満たすもの」を購入しています。ですから、事前の情報収集で見つけられやすく、購入までのプロセスが明確になっていればいるほど、購入されやすいと思われます。

桜庭:コト消費へのシフトも、調査で明らかになったトレンドですよね。

馬:なぜ日本を渡航先に選んだのかを聞くと、

  • 「日本のグルメを楽しみたい」
  • 「もっと日本の歴史や文化を知りたい」
  • 「観光地以外の街並みを歩いてみたい」

という理由が多く、日本への興味が原動力となっています。それも日本人と同じような体験、日本で生活しているような「観光客ではない体験」を望んでいる人が多く見られます。

桜庭:体験という意味では、食事についてはいかがでしょうか。

馬:訪日中の食事については、

  • 「観光客向けの飲食店ではなく、日本人に人気のある飲食店に行く機会が増えた/増えそう」(51.5%) 
  • 「地方の特産品や郷土料理を食べる機会が増えた/増えそう」(45.9%)
  • 「イタリアンやフレンチなど、日本料理以外の店に行く機会が増えた/増えそう」(42.6%)

がTOP3となっており、和食に限らず、日本人に人気の飲食店を利用する人が増えています。また、

  • 「日本の旬のものを食べる機会が増えた/増えそう」(40.0%)

という回答も多く、日本食をより深く理解する機会が増えていることが分かります。

訪日中の食事

桜庭:初めて日本に来たときは、いかにも観光客向けのお店で食事したり、買い物していた中国人が、リピーターとして何度も来日するにつれて、より「観光客向けではない、リアルな日本」への興味を深めているのですね。

馬:そう思います。訪日後に訪れる場所についても、同じような傾向が見られ、

  • 「日本人がよく行く人気の観光スポットを選んだ」(48.5%) 
  • 「日本人の日常生活を体験できる場所を選んだ」(47.5%)
  • 「伝統行事や地元のイベントがある場所を選んだ」(47.2%)

がTOP3となっています。リピーターは、中国人観光客がよく行くような定番スポットは経験済みなので、より日本らしい体験が好まれていることが分かります。

しかし、「知る人ぞ知る穴場スポット」までは行かず、中国人はまだ知らなくても、日本人に人気があり、「日本でのメジャー感」があることが必要であることも分かりました。

桜庭:先ほどのお買い物の話ですが、どのような変化がありますか?

馬:カテゴリーで見ると、「化粧品」は相変わらず人気ですが、「衣服」「食品」「日用品」「医薬品」が増えています。商品の選択理由にも変化が見られ、

  • 「日本人の間で人気の商品、話題になった商品を買うようになった」(41.6%)
  • 「日本デザイン・スタイルの宝石、アクセサリー、美術品を買うようになった」(36.7%)
  • 「日本のファッション誌、トレンド誌で紹介された商品を買うようになった」(36.1%)

が、TOP3。日本人が買っているものや日本で流行している商品の人気が高い傾向が見られました。

桜庭:コロナ前に比べて、かなり「通」な感じになっていますね。

馬:リピーターにとっては、購入体験に「ストーリーがあること」「自分の知識になること」が重要です。モノの消費ではなく、「自分は、日本の良いものを知っている」という優越感を刺激することが大事だと思います。本質を追求する質の高いインバウンド客に、自社ブランドのファンになってもらうためには、ブランドの歴史やフィロソフィーを理解してもらうことが重要です。

日本のエンタメコンテンツの強さは圧倒的!?

桜庭:もうひとつ、コロナ前との比較で特に注目したいのは、観光の要素が多様化していて、特に日本のサブカルチャー、エンターテインメントに対する関心が高まっていることです。

特に関心の高くなったもの

桜庭:調査では、「あなたは日本に行ったらどんなことをしたいですか。特に関心があるものを5つまでお知らせください」という問いに対して、増加が大きかったのは以下のようになっています。

  • 「テーマパークで遊びたい」(17.8→36.1%
  • 「新しいファッション・ライフスタイルのトレンドについて体験したい」(20.5→29.8%
  • 「映画、アニメ、ゲーム、キャラクターなどサブカルチャーを体験したい」(25.3→33.1%
  • 「ショー、ライブ、コンサートなどエンターテインメントを楽しみたい」(19.3→26.9%

別の調査でも、日本のアニメやキャラクターの影響力が強いことが分かっています。それも、若者だけではなく、80年代生まれの40代でも、好きな日本のアニメやキャラクターへの愛着が強いことが分かりました。

馬:彼らが子供のころに見たアニメに、特に思い入れがあるようですね。Z世代にとって日本のサブカルチャーはトレンドとしての楽しみであり、そして70年代生まれや80年代生まれの中国人にとっては「青春の思い出消費」である。今後のインバウンドを考える上で、日本のIPの活用は重要だと思います。

桜庭:リピーターが多い訪日中国人ですが、コロナ前に比べて、日本旅行での満足度がどう変化したかも調査で聞いてみました。結果として、「コロナ前よりも満足度が高まった」人は47.5%、「コロナ前と変わらず満足」という人が43.0%ということで、9割が日本旅行には満足していることが分かりました。

ただし、来日頻度が高い人、高収入な人の満足度がやや低い傾向も見られ、さらに満足度を高める努力も忘れてはならないですね。

馬:そうですね。訪日経験が増えれば増えるほど、期待値も高くなります。リピーターに対して、常に驚きや新しい発見を提供することは大事です。特に日本が好きな訪日中国人は、「真」の日本、リアルの日本を旅を通して味わい、楽しみたい傾向が強い。そこに向けて魅力的な体験コンテンツをどんどんつくっていければ、より満足度、好感度の向上につながります。

インバウンドは海外に自社ファンを増やすチャンスである

桜庭:ここまでで、現在の訪日中国人客はリピーターが多く、日本が好きで、日本をさらに深く理解、体験したいと思っているということが分かりました。

しかし、インバウンド需要というものを調べる上で、「日本で観光をしている最中の購買行動」を聞くだけでは不完全であると考えたため、今回の調査では、いわゆる旅マエ・旅アトに、その人たちが中国で日本企業のブランドとどのように接しているかということも聞いています。

馬:はい。中国で日本製品を購入するチャネルは、やはりECが中心になります。そしてコロナ禍以前に比べると、「化粧品」「食品」「衣服」「日用品」については、「中国国内のEC旗艦店」よりも、「日本からの越境ECの旗艦店」で購入する機会が増えていることが分かりました。

中国に拠点や販売代理店を持っていなくても「日本から直接中国消費者に販売する機会」が増えているのは、日本企業にとってはチャンスだと思います。なぜなら、インバウンドで出会ったお客さんが、「一見さん」ではなく、その後も継続的な顧客としてつながり続けることが可能だからです。

「EC国内旗艦店」は、日本の化粧品ブランドが、中国国内のECプラットフォーム内に出店して中国国内にある商品を販売するケースを指す。「越境EC旗艦店」は、日本の化粧品ブランドが国境を越えて日本から商品を販売する公式サイトを指す。
中国のECにおける「旗艦店」とは、自社ブランドの商品のみを販売するオフィシャル店舗のこと。ここでいう「EC国内旗艦店」は、日本ブランドが中国本土に拠点や販売代理店を持ち、中国から商品を販売しているもの。一方、「越境EC旗艦店」は、天猫国際(TMALL GLOBAL)や京東国際(JD Worldwide)など、「越境ECプラットフォーム」内におけるオフィシャル店舗で日本から商品を直接販売しているものを指す。

桜庭:どうしてもインバウンドというと、「観光客向けのプロモーション施策」に偏り、日本旅行中にいかに商品やサービスを消費してもらうかと考えがちです。でも、インバウンドでお金を使ってくれる人たちは、越境ECでの購入意向も高い傾向にあります。

ですので、「観光客」というよりも「ブランドのファン」になってもらうことで、インバウンドだけでもアウトバウンドだけでもない、いわば「クロスバウンド」の顧客としてつながり続けることが重要だと思います。

馬:Dentsu CXCでは、インバウンドは単なる国内での海外旅行者向けのプロモーション施策ではなく、海外消費者獲得のチャンスとして捉え、インバウンドと越境ECを統合して戦略を立てることを日本企業にご提案しています。中には、インバウンドの戦略を考えているうちに、国内の戦略も併せて再検討するべきという結論に至るケースもあります。

これから、訪日中国人の数がコロナ禍以前のレベルに復活した時に、インバウンド消費は日本企業にとって、無視できない市場になると思われます。その時にあわてることなく、今からインバウンドを事業として戦略的に考えることが大事だと思います。


【調査概要】
・調査名:電通インバウンド調査2023
・手法:オンライン調査
・対象者条件    
  地域:北京、上海、広州
  年齢・性別:20~39歳男女
  世帯月収:1万元以上
  条件:過去に訪日経験があり、2023年1月以降日本旅行経験者および今後1年以内に日本への旅行を予定している人
・サンプル数:400ss(男女20代、30代で均等割り付け)
・実施期間:2023年12月8日(金)~18日(月)   

【調査概要】
・調査名:電通インバウンド調査(日本ブランド調査)2021
・調査手法:オンライン調査
・対象者条件
  地域:北京、上海、広州
  年齢・性別:20~39歳男女
  世帯月収:1万元以上
  条件:過去3年以内に訪日旅行経験(出張、視察を除く)があり、今後また日本への旅行を検討
・サンプル数:400ss
・実施期間:2021年9月17日(金)~22日(水)   
 

その他、中国向け越境ECにご興味を持った方は、ぜひお気軽に電通CXCまでお問い合わせください!

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