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Dentsu Design TalkNo.21

電子書籍 『ソーシャルデザインの広め方』(2)

2014/03/07

ミニッツブック「ソーシャルデザインの広め方」永井一史×福島治×並河進

株式会社ブックウォーカーが展開するコンパクトな電子書籍専用レーベル【カドカワ・ミニッツブック】か ら、「DENTSU DESIGN TALK」シリーズの第三弾が配信されました。
第三弾は、HAKUHODO DESIGNを設立した永井一史さん、ADKを経て福島デザインを設立した福島治さん、電通ソーシャル・デザイン・エンジンの並河進さんによる『ソーシャ ルデザインの広め方』です。社会との関係を模索し、ユニセフ「祈りのツリープロジェクト」でつながった3人のトークを少しずつご紹介致します。

<社会を良くするために広告会社ができること>

 

並河:次に、「社会を良くすることと広告会社の関係」について議論をしたいです。以前、永井さんに『宣伝会議』(のWEBサイトの連載でインタビューさせていただいた時に、復興支援のこともそうですし、途上国の問題を解決するということもそうですが、社会を良くするということと広告会社がどういう風に関係していけるのかということを、すごくわかりやすく整理して話していらっしゃったのが印象的でした。

 

1つ目が、企業とともに社会を良くするサービスを行っていくもの。

2つ目はこれからの社会にとって重要で価値のある、新しく芽吹いた何かを見つけて、自分たちのクリエイティブスキルを使って、それが少しでも広がっていくお手伝いをする道。これには社会活動のコミュニケーション部分を応援するということも入るだろうと。

3つ目が、クリエイティブの力で社会的な問題を解決するということをもう少し事業主体としてやっていくということ。

 

大きく分けてこの3つがあるとお話しされていて、なるほどな、と僕はすごく頭の中が整理されました。

僕は3がやりたいなとか、永井さんは1なんだろうなとか、福島さんは2も3も全部やっているかなとか。それぞれ「社会貢献」とか「社会のために」というと何か漠然としがちで、「お金じゃなくて気持ちでやるんだ」というような雑な議論になりがちなところを頭のなかで整理できたなと思うんです。この3つの分類についてもう少し詳しく永井さんからお話ししていただけますか?

 

永井:1番目に関しては、そもそも企業は顧客からお金という対価をもらっているので、そこには顧客にとって対価を払うだけの価値があるということ。個人の集合が社会と考えると、つまり企業の存在というのは社会のためになっている。基本的にはそうだと思うんですね。どうしても社会貢献という議論だと、企業は利益主義でお金儲けに走っているという風になってしまいますが、僕自身も企業の方と話していて、個人個人にはすごく想いがある気がしていて、そこをあんまり分けるのは基本的に良くないなと思っているんです。最近だとさらに、CSVにしろ、ちょっと前のCSRにしろ、企業がこの社会の中で事業を続けていくなかに、そういう社会的視点というのは絶対に含まれています。既に欧米は一気にそちらの方向に動いています。これからの時代は事業を続けていくうえで何らかの社会課題を利益の原泉にしていくような事業形式になっていくという時に、今まではソーシャル=NPOの支援ということでしたが、事業そのものを我々クリエイティブに関わる人間がサポートしながら広めていく。そういう太い道が広がるというのが大きく分けて1番目かなと思います。

2つ目に関しては、僕自身もいくつかお手伝いをしているのですが、今までは思いはあっても、コミュニケーションがうまくいかなくて社会に広がっていかなかったことを、我々が企業との付き合いのなかで見つけたスキルを転用しながら広めていくお手伝いのことです。

新しい公共という言葉がありましたが、行政では担いきれない大切なことを社会に根付かせていくのも重要だと思います。

3番目はあまり具体的ではないのですが、例えば「TAP PROJECT」というのも誰かから要求されたわけでなく、有志が集まってやったことですし、「祈りのツリー」もそうですが、事業という規模ではないんだけど、自分たちのクリエイティブのあり方として、頼まれたからやるのではなく、自らが担い手としてやってみようという活動。今までだとどうしても会社の業務とそれ以外の業務が分かれていてやりづらかったんだけど、そこの垣根も社会全体的に崩れつつあって、主体的な自分たち固有の活動もきっと増えていくだろうという気がしています。

 

並河:特に1番は、いわゆる広告というよりも、企業と世の中があったときに、企業と世の中の人々が共通の価値を作っていく、それ自体がコミュニケーションにもなっていくという発想ですね。つまり商品やサービスを広めることよりもう少し前の段階の話になるので、広告のフェーズで依頼がきてしまうと提案しにくい面があると思うんです。永井さんは、広告会社というもの自体が広告を請け負う形は続きつつも、サービスや事業、商品開発を企業と共につくっていく、それが広告になるという風に変わっていくのではないかと思いますか?

 

永井:両方あると思います。我々がクライアントと関わる局面が川上にどんどん行っているというのは、ここ10年の流れで確かにあるんです。商品開発レベルだと広告会社はどこでも手がけているし、事業戦略のところにも広告会社の知見があったりします。企業も自分たちを変えていかなくてはならないとか、イノベーションを、とこれだけ言われているときに、特にそこをサポートする業務も求められていて、その部分でこれから新しい価値をどうつくっていくかというときに1番の視点が求められていくんじゃないかという気はしますし、実際に、もうそういう動きになってきています。

 

並河:そうですね。でも僕はもっと大きく変化が訪れるのではないかと思っていました。日本も震災をきっかけに大きくシフトするんじゃないかと感じていたんです。僕自身、企業の事業開発やCSRの事業にコンサルティングから入って、企業のシフトを促していくケースが少しずつ増えてはいるのですが、永井さんはそのスピード感や変化をどう捉えていますか?

 

永井:僕もちょうどこの前、ソーシャル・ベンチャー・キャピタルの人たちと話したときに、世代間の問題があるという話になりました。今の30代以下のメンタリティというのは、今ここで話しているような価値観やものの考え方になっているんですが、それより上の世代、50代、60代が組織の上にいるので、まだドラスティックな変化は起こっていない。だから、その人たちが一段落したあとには多分ガラッと変わるんじゃないかなと。

 

並河:世代交代を待つということでしょうかね。

 

永井:徐々に、それからがらっと変わっていくんじゃないかと思います。

 

(つづく)

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