日本の競争力とアジャイル開発の隠れた関係
2024/08/23
GNUS代表取締役CEOの文分邦彦です。
「日本の企業のDXには、デジタルプロダクト力が必要」。私が日米でDXコンサルタントとして働く中で感じたのは、米国企業がデジタルプロダクトを積極的に取り入れた変革を進めている一方で、日本企業の多くは業務基盤のデジタル化を中心とした変革にとどまっている、ということです。
今後、日本企業がデジタルプロダクトを中心にした変革を実現するためには、従来のIT部門や情報システム部門主導のシステム導入ではなく、事業部主導でのデジタル活用と運用が不可欠になってきます。
この連載では、「知っておきたい、デジタルプロダクトの今」という形で、DXやデジタルプロダクトに関することを中心に、あまり堅苦しくならない程度の内容と長さでお届けしたいと思っております。読者の皆さまも、このテーマについて聞きたい、などのご要望がありましたら、ぜひ、お知らせください。
GNUS:デジタルプロダクトを通じた事業成長や事業変革のパートナーとして、2019年に電通グループ内に設立。新規事業や既存事業のDXの鍵となるデジタルプロダクトの企画やPoCから開発・運用、さらにはグロースまでを、国内外600人以上のネットワークメンバーから最適なチームを組成し、アジャイルなプロジェクトマネジメントを通じて支援している。
日本の競争力のボトルネックとは
早速ではありますが、日本の競争力とアジャイル開発の隠れた関係について考えたことはありますか?
IMD(国際経営開発研究所)が発表する「世界競争力ランキング」で、バブル崩壊まで世界1位であった日本が30年たった2024年には38位と、過去最低まで順位を下げている、というニュースを見かけるようになりました。
この競争力ランキングは「経済状況」「政府の効率性」「ビジネス効率性」「インフラ」といった4つの大項目から総合順位が算出される仕組みになっているのですが、日本の場合「ビジネス効率性」が51位と、4項目の中で足を引っ張っていて、さらに「政府の効率性」が42位と、この2つの領域、特に「ビジネス効率性」が日本の競争力のボトルネックであると言っても過言ではないようです。
23年の結果もあわせてもう少し掘り下げてみると、「ビジネス効率性」の中でも、「企業の意思決定の迅速性(64位)」「変化する市場への認識(58位)」「機会と脅威への素早い対応(62位)」「変化に対する柔軟性と適応性(63位)」「企業におけるデジタルトランスフォーメーション(50位)」「ビッグデータ分析の意思決定への活用(64位)」といった項目の順位が低くなっていることがわかります。
※参考:三菱総合研究所 https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20231030.html
あえて、強引にまとめますと、「変化に対応した組織の意思決定能力」と、「デジタルの活用」という2つの項目の順位の低さが日本の競争力のボトルネックである、と言えると思います。
見えてくるアジャイル開発との関係性
話は変わりますが、私たちGNUSが提供するプロダクト開発サービスでは、アジャイル開発という手法を用いることが多くなっています。アジャイル開発とは、従来のソフトウェア開発とは異なり、小規模な実装とテストを繰り返しながら、チーム間の対話だけでなくユーザーとの対話を通じて改善しながらソフトウェアを開発していく手法なのですが、この手法の確立に関わった専門家たちが、以下のような開発宣言※を公開しています。
※ソフトウェア開発の分野で活躍していた17人の専門家が、それぞれの主義や手法についての議論を行い、 2001年 に公開された文書
これを改めて読んでいると、日本の競争力ランキングに見られる課題との共通点が見えてくるような気がします。
そうです。日本の競争力のボトルネックは、アジャイル開発で重要とされている価値観そのものなのです。つまり、日本企業の多くはアジャイル開発の基本となる価値観やアプローチが苦手であり、それによって世界での競争力を失っている、とも言うことができます。
私たちGNUSは、「ビジネスを動かすプロダクトを。」というミッションを掲げていますが、ここでいっている「ビジネスを動かす」には大きく2つの意味があって、1つはデジタルプロダクトによってクライアントのビジネスが成長することです。もう1つの意味は、クライアントがデジタルプロダクトを推進するためのケイパビリティをつけていくことが、日本全体の競争力につながっていく、という意味です。
私たちが提供しているサービスの価値は、デジタルプロダクトはもちろんのこと、それ以上に、それを生み出し、改善し続けるケイパビリティにあります。よく使われる例えですが、デジタルプロダクトにおいて「魚を提供するパートナーではなく、釣りの方法をお伝えするパートナー」でありたい、と常に考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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