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欧州最大級の家電見本市「IFA 2024」レポートNo.1

最新家電・テクノロジーから見えてきた、未来のヒント(前編)

2024/10/18

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Dentsu Lab Tokyoの なかのかな です。ラボのR&D活動の一環として、毎年9月にベルリンで開催される欧州最大級の家電見本市「IFA(イーファ)2024」で、最新の家電やテクノロジーの動向を視察してきました。前半は出展企業のプレスカンファレンスを中心にご報告します。

IFAとは?

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毎年9月初旬にドイツのベルリンで開催される欧州最大規模のテクノロジーの展示会「IFA」は、今年で100周年を迎えます。名前の由来はドイツ語の「Internationale Funkausstellung(英語だとInternational Radio Exhibition)」で、ラジオの展示会としてスタートした後に家電が加わり、現在ではライフスタイルに影響を与えるテクノロジー全般を取り扱っています。今年の開催からロゴが新しくなり、IFAの意味も「Innovation For All」となりました。カラフルな色調はヨーロッパ初のカラーテレビのお披露目になった展示会であることを記念して、カラーパターンを踏襲したそうです。

今年のテーマは“Celebrating culture's greatest tech innovations (文化が生み出したすばらしい技術革新をたたえる)”
。9月6〜10日にかけて、会場となるMesse Berlinでは1800社以上が展示を行い、138カ国から21万5000人以上が来場しました。 

「AI」「サステナビリティ」「デジタル・ヘルス」 

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プレスデーの初日に開催された運営団体IFA Management GmbHによるキーノートでは、CEOのLeif Lindner氏が、今年の注目すべきトピックとして「AI」「サステナビリティ」「デジタル・ヘルス」を挙げました。スマートフォンの写真編集、スパムメールの排除、洗濯の効率化などAIはすでに生活の中で身近な存在となっています。

展示会としては来場者の若返りを狙っているということで、セレクトショップとコラボしての記念グッズやコンサートなど若者向けの施策を打ち出していました。

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続いて登壇したgfu(Consumer & Home Electronics GmbH)マネージングディレクターのSara Warneke 博士は、コンシューマー・テック市場について、インフレなどの世界的な経済課題にもかかわらず2023年は約1.2兆ドルで安定しているとし、特に中国でのeコマースが伸びている点を指摘。製品トレンドとしては手頃なプレミアム製品、デジタル・ヘルスやAI、サステナビリティ分野への期待感があると話しました。

AIで調理も掃除も節約も

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各企業のプレス発表会でもAIを活用した家電が数多く発表されました。
「Welcome home(おかえりなさい)」をテーマにしたBOSCHは家の形をしたステージから、内部のカメラで80種類の料理を見分けて調理するAIオーブンなどを紹介していました。

「Say hi to intelligence(知性にようこそ)」を掲げたSIEMENSは、現代の複雑化する世界に対し生活者の70%が日常をもっとシンプルにしたいと考えているという調査結果を発表。AIとデザインとコネクティビティでこれを解決するとし、ボタンを押すとクリーニングまでできる全自動コーヒーメーカー「Siemens EQ900 plus」などを発表していました。

CES2024に引き続き「AI for ALL」をビジョンとするSAMSUNGは、各家電がAIと連携することで、エネルギーのピークシフトやカットを行ったり、最適な保冷方法や洗浄方法を選択したりできるようになってきており、今後はリワードプログラムと統合することで、節電すると製品購入に使用できるエネルギースタンプを獲得できる仕組みに取り組んでいくとしています。

家電は「買わない」未来がくる?

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Mieleがコンセプト・スタディとして発表したのは、再生可能素材でできたスティック型のクリーナー「Vooper」です。これまでリペアやリサイクルの妨げになってきた接着剤を使わずに組み立てられており、製品寿命が終わった後も企業が回収してまた素材に戻すことができます。元々同社の製品は耐用年数20年をうたっており、7万2000点以上のパーツを保管して修理サービスを行っているそうです。また、7月からEUの5カ国で30%ほど安い価格での再生電子部品の販売をスタートし、洗濯機などの家電を修理して再販しているなどのサステナビリティに関する実績をアピールしていました。

BOSCHグループのBlueMovementは2017年からスタートした事業で、BOSCHとSIEMENSの家電を貸し出すサブスクリプションサービスです。消エネ効率の高い家電を最長6年、修理無償で貸し出すことで、サステナビリティに寄与しながら家電の寿命を伸ばし、利益を得られるモデルです。耐用年数を過ぎた家電は全てリサイクルされるとのこと。

2025年からCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive:企業サステナビリティ報告指令)の段階的な運用がはじまるEUでは、各メーカーの具体的なサステナビリティ施策が求められています。商品開発の段階から、リペアや回収などの “その後”を描く必要が出てきているのです。

将来的には家庭では電化製品を「買わない」未来が訪れるのかもしれません。

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