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ビッグデータは、広告会社にとって敵なのか?味方なのか?No.5

ビッグデータ(センサーデータ)と心理学!?

2014/03/25

#2の記事で「センサーデータこそがビッグデータ時代の象徴となるデータだ」と書きましたが、実際にセンサー技術を搭載したウェアラブルデバイスによるマーケティング活動に、活発化の兆しが見えてきています。そんな中、電通と富士通株式会社(以下、富士通)と株式会社ビデオリサーチ(以下、ビデオリサーチ)は、センサーデータのマーケティング価値を見いだすべく調査を実施しましたので、その結果の一部を紹介します。

調査結果は、ビデオリサーチのサイト(http://www.videor.co.jp/casestudies/research/custom/2013/01.htm)でも紹介しているので、ぜひご覧ください。

 

肌に関する意識と実測値および生活態度との関係性を分析

この調査はビデオリサーチ監修のもと、肌状態を測定する富士通のセンサーを搭載したスマートフォンアプリを調査対象者(以下、パネル)に配布し、センサー測定による毎日の「実測値」と、パネルが自分の肌状態に対して抱く「意識」の差、および生活態度との関係性を分析しました。

【調査概要】
■調査期間 2013年11月13日(水)~12月9日(月)
■調査対象 関東地区(1都6県)在住の女性20~49歳
■調査方法 26日間毎日、以下2種類を調査。
・その日の生活行動についてアンケート(インターネット調査)
・肌状態測定センサー搭載アプリによる撮影・測定
■有効回収数 145サンプル

 

まず、日々の肌状態に関してパネルが抱く「意識」と、センサーによる「実測値平均」は関係性が高いということが分かりました。

調査期間26日間、毎日の肌状態を「自己評価が良い、まあ良い(Top2)」「自己評価が悪い、まあ悪い(Bottom2)」と回答したパネルの「意識」と、センサーによる「実測値」を比較すると、その高低は、ほぼ毎日相関しています(※1)。

この結果は、本来見えることのない消費者の肌状態に対する「意識」が、センサーを用いて「見える化」できる可能性があることを示しています。

(※1)肌評価意識回答別の肌評価実測値平均

さらに、日々の生活習慣と肌状態の関連性も、見える化できました。

一般的に、日々のスキンケアは長期的に肌状況を改善し、また日々の生活環境、例えば睡眠時間が翌日の肌状態に影響を与えるといわれています。

その中で、パネルの生活態度に関するアンケート結果とセンサーによる肌状態の「実測値」を分析すると、毎日欠かさずスキンケアをしているパネルの「実測値」平均は、緩やかに右肩上がりに上昇する傾向(※2)にありました。

(※2)毎日欠かさずスキンケアしているパネルの肌評価実測値平均

また睡眠時間別の調査では、前日の睡眠時間が少ないパネルほど肌状態の「実測値」平均が低い傾向(※3)であることを見える化できました。

(※3)前日の睡眠時間と肌評価実測値平均

この結果と、先ほど述べた意識と実測の相関性を考え合わせるならば、日々のスキンケアや生活環境は日々の肌意識に影響を与えることが推察でき、肌状態が良いと実感しながら明るく生活するたには、やはり日々の良い習慣が重要なのではないかと考えられます。

ビッグデータを心理学で読み解く

今回の分析結果からも、センサーデータが広告会社にとって、「日々の消費者意識をリアルタイムで見える化したコミュニケーション」を可能にするデータとして価値を感じます。以下は、心理学で用いられる「ジョハリの窓」の、「他人が見た自分」を「センサーが見た自分」に置き換えた図です(筆者作)。心理学に基づいたコミュニケーションを設計することで、各領域におけるターゲットに対して効果的に訴求できるのではないでしょうか。

例えば本調査テーマの「肌状態」ならば、「自分もセンサーも知っている自分」である「開放」領域上では、「気心知れた」「素直で楽」「安心」などをキーワードとしたメッセージ設計が有効かもしれません。逆に「自分が知らないのにセンサーは知っている自分」という「盲点」領域上では、消費者自身のギャップをついたメッセージ設計によって浸透効果を高めることが可能かもしれません。

最近「ビッグデータと観察」というテーマが散見されるように、「ビッグデータと心理学」といった一見かけ離れた概念の掛け合わせで、広告会社にとって新しいビッグデータの活用方法が生み出せるのではないかと考えています。ぜひ引き続き、心理学の有識者と議論をしていきたいと考えています。

もちろん本調査結果のみで、センサーデータの有用性を全て語るのは難しいでしょうが、マーケティングの大局がリアルタイム&パーソナライズ化にシフトしていく中、ウェアラブル系センサーデータは広告会社として大いに向き合う価値のあるデータではないかと考えています。