loading...

ビッグデータは、広告会社にとって敵なのか?味方なのか?No.4

O2OからOAOからオムニチャネルへ

2014/02/25

今回は、O2Oについてお話をしていきたいと思います。今やO2Oも様々なプレイヤーが誕生してきています。これまでO2Oとは無関係な事業を展開してきた企業も、スマートフォンとビッグデータを活用することによってO2O企業の仲間入りをしています。そのような企業の中でも、電通では昨年6月にO2Oアプリ“スマポ”を事業展開する株式会社スポットライト(以下スポットライト社)と業務提携(http://www.dentsu.co.jp/news/release/2013/pdf/2013080-0627.pdf)をしました。“スマポ”は、すでに1,000を超える店舗に導入されるまでに急成長したO2Oの草分け的存在のアプリです。

業務提携の背景は、以前取材いただいた「東洋経済ONLINE」の記事(http://toyokeizai.net/articles/-/18812)、もしくは書籍「O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!ネットとリアル店舗連携の最前線」(松浦由美子著:平凡社新書)をご覧いただければと思います。

 

いかに衝動買いを誘発するか

消費者が指名買いをする場合、購入店舗は価格要因から決定されます。そこでO2Oの価値は、いかに衝動買い意欲を喚起できるかにあると思っています。更には実店舗に誘引できれば特売やPOP・デジタルサイネージや試食などで衝動買いを誘発できることを考えれば、実店舗に来てもらう衝動を喚起することの方が重要なのだと思います。

先日、あるドラッグストアで行った調査結果からもその重要性がお分かりいただけるかと思います。

ドラッグストアにスマポでチェックインしたユーザー2,100人に来店動機と購買経験についてアンケートをしたところ、「Q:本日はスマポがなくてもドラッグストアへご来店の予定がありましたか?」という質問には、77.5%もの人が「スマポをきっかけに来店した」と回答しました。更には、例えば健康飲料・食品だけでも来店者の約20%が購入しており、そのうちの57.6%が店頭で購入する商品を決定する「店頭買い」であったと回答しました。

ドラッグストアの品ぞろえゆえのことでもありますが、この結果は、来店さえしてもらえれば何かしら商品を手にとって購入してもらえる衝動買い率が高い、という非常に分かりやすい結果を示していると思います。

 

O2Oによるビジネスエコシステム構築へ

この結果を受け、電通とスポットライト社では、来店したユーザーの購買前のコンタクトポイントでいかに衝動買いを誘発する刺激をあたえることができるかについて議論を重ね、商品を開発しています。

その名も「プロダクトチェックイン」です。

スマポの特徴として、店内に超音波を発するビーコン(発信器)を設置することで、店舗側が望む特定スポットにユーザーが訪れないとチェックインできない仕組みになっています。その特徴を活かし、例えば「飲料コーナー」をチェックイン場所として、そのスポット上でチェックインしたユーザーに対し、特定飲料メーカーの情報を提供するといった仕組みを開発いたしました。まさに商品にチェックインするイメージです。

この仕組みにより、メーカー・店舗・消費者に以下のメリットがあり、エコシステムが成立します。
・店舗は、メーカーの販促費で来店数の増加が見込める。
・メーカーは、自社商品の陳列棚前という絶好のコンタクトポイントで自社商品の訴求が可能。
・消費者は、ポイントがよりたまるスポットが増える。

 

O2OからOAOからオムニチャネルへ

近い将来、今のO2Oの概念から、実店舗内における店内販促や顧客体験までがオンライン化するOAO(Online-at-Offline)といった概念に進化していくと考えています。最近も大手流通が開業した大型旗艦店で、店舗内でのスマホアプリやEC連動による様々な新しい取り組みを行っているように、実店舗内で来店客に「おっ!」と思わせるような顧客体験を提供し購買に結び付けることが、現在流通各社が構想する「オムニチャネル(実店舗やオンラインストアなど、あらゆる販売チャネルを統合すること)」の役割の一端なのかもしれません。

スポットライト社の柴田社長は日ごろ「スマポによって店内接客革命を起こしたい」とおっしゃっています。確かにお客様が来店した直後に立ち上がるチャネルとして絶好のポジションを獲得しつつある「スマポ」のようなアプリケーションがあれば、店舗側もお客様がレジで購入するより前の来店時点で存在を感知し顧客情報を活用した接客が可能です。更には、前回ご紹介した「おもてなさない、おもてなし」のように、従業員による接客ではなくアプリケーションを通じた接客を行う、新たな店内経験価値を提供することが可能なのかもしれません。

電通スマポチーム(左:佐藤巡http://dentsu-ho.com/people/8、右:筆者)とスポットライト柴田社長