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ビッグデータは、広告会社にとって敵なのか?味方なのか?No.6

広告会社がビッグデータに向き合うフレームワーク

2014/04/08

本タイトルのコラムも今回でひとまず最終回となります。最終コラムは、広告会社にとってのビッグデータビジネスの可能性と、そこから見えてくるビッグデータを味方にするために必要な視点をご紹介していきたいと思います。

データ流通市場の可能性

今後、企業・団体が所有する各種データを第三者が活用することで、これまで企業が創造できなかった「売り物」や「売り方」の高度化を可能にします。特に、これまでのコラムでもご紹介してきたマーケティング施策としての「売り方」の高度化と同じく、企業の「売り物」の高度化はビッグデータがもたらすイノベーションだと思います。

ある「保険会社A社」では、「自動車メーカーB社」が提供する特定自動車の走行ログを活用する事で、実際の走行内容に応じて料率を算出する合理的な保険という、高度化した「売り物」を提供しています。

このような企業や部署間でのデータ流通によって形成された市場「データ流通市場」において、広告会社は優位かつ独自なポジションを築けるのではないかと思います。これまでの知見を活かすことで、ある企業や部署が所有するデータを解釈し、別の第三者企業や部署にとっての価値ある活用方法の仮説を立て、マッチングをプロデュースできるのではないかと考えています。

保険会社と自動車メーカーとユーザーのエコシステム
保険会社と自動車メーカーとユーザーのエコシステム

 

広告会社がビッグデータを味方にするために

上記のエコシステム成立のポイントは、自動車メーカーから保険会社へのデータ提供に際し、パーミッションを「サービス享受者」からとることにあります。消費者の個人情報に対する意識が非常に高い中、事業社間でのデータ流通が許されるのは、ユーザーが自身のデータ提供により期待を上回るサービスを享受できる場合に限られるのではないかと考えます。広告会社がビッグデータを味方にするためには、まさにこの視点が必要であると思っています。

市民権を得たバズワード「ビッグデータ」。データ発生機会の増加とデータの蓄積・処理コスト低減を背景に、「高解像」「高頻度」「多様性」といった特徴を持つデータをいかにビジネス活用するかが様々な業界で議論され、多くの成功事例が生まれてきました。ただしその裏では、例えばプライバシーの観点から大きな社会問題となってしまった事例も出ています。

そのような中で、広告会社がビッグデータを味方につけ、広告会社の事業に付加価値を生む具体的な出口を、これまでの記事でご紹介いたしました。これらの活動を抽象化すると、広告会社がビッグデータに向き合うためのフレームワークは以下であると考えます。

世の中の「事象」がデータとして“変換”され蓄積された「(ビッグ)データ」は、そのものが売り物になるわけではありません。その「データ」を役立てるために“解釈”を加えることで「情報」に昇華し、その「情報」を用いて顧客の「売り物」「売り方」を“高度化”する仮説を立て、高度化された「売り方」や「売り物」によって顧客はどのようにマネタイズを行うのかというビジネスモデルまで設計できた段階で、ビッグデータは顧客にとって価値あるものになります。そして、そこまでの設計をサポートできて、ようやくビッグデータは広告会社にとってのビジネスになるのだと思います。

ビッグデータ活用のフレームワーク
ビッグデータ活用のフレームワーク

ご紹介した事例でいえば、例えば、センサーから発生する信号データにどのような“解釈”を加えるのか。O2OからOAOさらにはオムニチャネルへと、「情報」を活用して消費者に提供する購買体験(売り方)をどのように“高度化”するのか。ITとマーケティングの融合が加速化する中、ITベンダーと協業し、顧客にとっての“ビジネスモデル”をバリューチェーン全体でどのように描くか、など。広告会社が付加価値として提供できることはとても多く、うまくフレームワークとして機能すればビッグデータは広告会社にとっての味方になるのだと思います。

そして、このフレームワークは広告会社だけで完結するよりは、ご紹介した通りITベンダーからリサーチ会社、ベンチャー企業、更には別の事業体の顧客まで、業界や業種や会社規模の枠を超えて協力して顧客をサポートする方が、より顧客にとっての価値を生み出せると考えています。何よりも私自身、業界や職種を超えて様々な方と出会う機会を得られたことが、ビッグデータから享受した財産であったと実感しております。

今後も様々な方との出会いや議論を求めて、この場などを通じて引き続き情報発信をしていきますので、その際はよろしくお願いいたします。ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。