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「地方発のクールジャパンを世界に発信」第1回

FROGMAN氏

2014/03/17

東京から移り住んだ島根からAdobe Flashで作った「菅井君と家族石」を配信し、大きな注目を浴びたFROGMAN氏。そして、「秘密結社 鷹の爪」で大ブレーク。地方発のクリエーティブ、自身の作品や発想法などについて語っていただきました。


第1回
地方から世界への配信に大きな可能性を感じていた


映画監督になる夢を抱き、映画やドラマの製作スタッフをやっていたのが20世紀も終わりの頃。当時は在京のキー局、大手の映画配給会社など、放送でも配給でも、大都市のフィルターを通さないと全国に発信できない状況にありました。20世紀から21世紀への境目の前後に、ようやくブロードバンドという言葉が登場して、「インターネットを使った動画配信が誰にでもできる時代がやって来る」と言われ始めます。

テレビ局も配給会社も通さず、全国、いや世界中に自分の作品を配信できる。そう考えてわくわくすると同時に、インターネットの普及によって、在京キー局や大都市からの情報発信だけではなく、地方からの情報発信がどんどん活発になってくるだろうとも思いました。コンテンツとは無縁だった田舎から面白いコンテンツが生まれ、それが大都市を介さず、北海道から沖縄までダイレクトに届く時代がくるだろう、と。

その頃、島根県出身の錦織良成監督の作品「白い船」の製作に参加していました。島根の塩津という漁港を舞台にした映画で、東京生まれの僕にとっては、見るもの聞くもの食べるもの、そして地元の人たちの存在も全てが新鮮。島根県は日本の中のド田舎ですが、そこには他県の人は知らない魅力がたくさんあります。

そうした情報をコンテンツに落とし込み、配信したらどうだろう。島根で面白い映像作品をつくり、配信したら、きっと話題になる。撮影中、妻と運命的な出会いをしたこともあり、東京に戻って別の映画のスタッフをやるのではなく、島根に残って映像をつくり、配信する活動をやろうと。そう思ったのが、現在につながるそもそものきっかけでした。

最初は実写でやろうと思いましたが、一人ではなかなか難しい。そんなとき、青池良輔さんの「CATMAN」というアニメーションを見て、映画的な表現に興味を待ちます。どうやってつくるのかと調べると、Flashアニメーションだと分かり、自分でもやってみようと教則本を買い、勉強・練習のつもりでつくったのが「菅井君と家族石」という作品。島根の出雲地方に在住する菅井家を描いた作品ですが、「秘密結社 鷹の爪」(「鷹の爪」)の吉田くんとフィリップも登場しています。

「鷹の爪」のキャラクターで、島根の全市町村を勝手に応援

「鷹の爪」はテレビアニメとして放送され、映画版第1弾は「世界初の全編Flashによる映画」として話題なりました。テレビ版、劇場版でも一貫しているのは、僕の中にある「島根愛」。島根で暮らしたことで僕の人生は大きく変わったと思うし、感謝もしています。アニメで表現するときは、そのまま「ありがとう」ではつまらないので、ほとんどが小馬鹿にするような自虐ネタ。自分の中では愛を込めているつもりですが、それがウケて、吉田くんは島根県知事から「しまねSuper大使」に任命されています。

ずっと県とはつながりがありましたが、昨年の春から雲南市の「雲南吉田くん」という新キャラクターをつくり、それを行政、地元の企業に使ってもらっています。私自身が松江観光大使を委嘱されたこともあり、「松江の吉田くん」というキャラもつくりました。そして、島根県には19の市町村があるのですが、二つやったんだから他も全てやってみたらどうかとなり、「SMNY19」というプロジェクトを始めています。

19人のシマネヨシダ(SHIMANE YOSHIDA)だから「SMNY21」。ちょっと「AKB48」を意識していますが、島根の全市町村の吉田くんをつくり、勝手に応援しようと。全部吉田くんのキャラクターですが、色で市町村の特徴を出し、雲南市は桜が有名なので雲南吉田くんには桜色。松江の吉田くんはオレンジですが、これは有名な宍道湖の夕日の色。決まっているのはこの2つだけですが、19個の吉田くんをつくって、島根県と、それぞれの市町村がアピールするきっかけにしたいですね。

僕が島根で映像づくりを始めて10年たちますが、以前の大都市集中から、地方拠点で製作・発信を行うケースは間違いなく増えています。映像だけでなく、「ゆるキャラ」も地方発全国へという流れのコンテンツの一つ。地方発のクリエーティブの形、方法とも多様化しているので、これからもっと面白いことが起こると期待しているし、僕もいろんなことにチャレンジしていくつもりです。

第2回へ続く)