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「地方発のクールジャパンを世界に発信」第3回

FROGMAN氏

2014/03/19

東京から移り住んだ島根からAdobe Flashで作った「菅井君と家族石」を配信し、大きな注目を浴びたFROGMAN氏。そして、「秘密結社 鷹の爪」で大ブレーク。地方発のクリエーティブ、自身の作品や発想法などについて語っていただきました。


第3回
低予算だから生きた、フラッシュアニメーションの機動性

 
 低予算は映像製作の足かせになると考えることが多いようですが、僕の場合は全く逆で、低予算はメリットの一つだと考えます。まず、コストが低ければ気楽にできる。誰に気がねすることなく、思い立ったらすぐにつくれるわけです。
 
「秘密結社 鷹の爪」(「鷹の爪」)はシナリオ、作画、声優、監督、全て一人でやるところから始まりましたが、普通はいろんなスタッフを確保し、予定を調整しなければいけないし、スタジオも押さえなければいけない。一人でやれば、そういう作業から解放され、クリエイティブなことだけに集中できます。思い立ったらすぐ、ものづくりができる。この瞬発力がFlashアニメーションの強みだと思います。
 
この瞬発力、スピード感を最大限に生かせたのは、映画版を製作するとき、取り入れた「プロダクトプレースメント」です。映画やドラマの映像に、特定の商品をからませる広告手法ですが、例えば映画の場合、撮影してから、完パケ、公開まで、下手すると1年ぐらい寝かさなきゃいけない。ある企業の新商品を取り上げようとしても、1年後の商品をプロモーションするのは不可能です。映画という大きな舞台での、新商品のプロダクトプレースメントは難しいのが現実でした。
 
その点、Flashアニメなら機動的に対応できます。クライアントチェックで、多少の方向修正や仕様変更が出てきますが、実写なら再撮という大変な事態でも、Flashアニメならちょっとつくり変えたり、貼り換えたりするだけ。これはクライアントにも大きなメリットで、映画の公開は3月でしたが、1月の時点でも広告の話をしていた記憶があります。

Flashアニメの広告メディアとしての可能性は以前から考えていました。インターネットでFlashアニメを配信すると、予想以上の反響があり、「FROGMANって面白い」と話題になりました。でも、ネットの掲示板でいくら褒められても1円にもならない。「そうか、回収エンジンが必要なんだ」と思い、つくったのがDVDです。そこそこ売れましたが、DVDを出すには新しい作品をつくり続けなくてはいけない。それもなかなかしんどいとなったとき、「キャラクターを使ってインフォマーシャルをつくろう」という発想が浮かびました。
 
テレビCMの場合、15秒、30秒と決められた尺がありますが、ネットならそれは関係ない。極端な話、クライアントが「これだけ載せてくれ」という情報量に対して、「じゃあ全部載っけましょう」とできるのがインターネットの強みです。15秒、30秒の世界だと、具体的な情報というのはある程度そぎ落とし、イメージをいかに伝えるかということに主眼を置きますが、インターネットは時間の制約を受けない媒体だと思っていたので、インフォマーシャルをつくり始めたわけです。

 

広告を「ネタにする」発想の裏に、社会に対するシニカルな視点も

 

自分のアニメブランドの「蛙男商会」が始まったころから、コンテンツの中に広告を載せ、それを楽しみながら見てもらう仕掛けはやっていました。ただ、プロダクトプレースメントという形で、しかも映画を使ってやるのは初めての経験だったし、配給元には「人様からお金を取って広告見せるってどういうことなんだ」と、抵抗もあったようです。
 
要は整合性の問題で、作品の世界にどれだけ違和感なく、広告を載せる意味を持たせられるか。普通、映画製作の現場では、プロダクトプレースメントは手かせ足かせであり、条件をつけると映画がつまらなくなると考えがちです。僕は逆で、条件があるほど「どうおもしろくしようか」と燃えるタイプ。
 
そこで、プロダクトプレースメントで広告を載せることをネタにしようと考え、広告が決まると予算が増え、画像がきれいでいられるけど、広告が決まらないと予算が減って、「ほれ見たことか」とキャラクターの作画が雑になる。「バジェット・ゲージ」という方法に至ったわけです。だから、プロダクトプレースメントのところでお客さんが笑ったときは、「ヨシッ」と思いましたね。広告が出てきて喜んでくれるというのは、今までの映画では絶対にない光景でしたから。
 
予算を前面に出した大きな理由として、僕は映画の製作部で、現場の予算を管理する仕事をしていたのですが、お金の使い方がうまくいかない監督が結構いた。自分の中にフラストレーションがあり、お金と映画がいかに密接に絡んでいるかを表現したかった、という部分もあります。
 
僕らの普段の生活でも、予算の使い方を間違っているケースはたくさんあります。趣味に夢中になって食生活が極端に貧しいとか、公共事業をばんばんやる一方で、待機児童がたくさんいるとか。見回してみると、予算、お金の使い方が間違っているものは結構あり、そういうものに対する皮肉も、実は少しだけ込めてあるんです。

第4回へ続く)