人を全人格的存在として認めるということ
2013/06/20
野良袋:今日は、コトラーの「マーケティング3.0」について話そう。
並河:はい。コトラーは、CSRという言葉をつくったすごい人ですよね。
野良袋:「マーケティング1.0」は、消費者をただ消費する存在として見ていたとすると、「マーケティング2.0」は、消費者を年齢や嗜好でカテゴライズされた分類として見てきた。
ここ最近までのマーケティングが、この「マーケティング2.0」だとしたら、これからのマーケティング「マーケティング3.0」では、人を「全人格的存在」として見るという。
並河:全人格的存在…。
野良袋:そう。つまり、人を、人として見ろ、ってことだな。ターゲットセグメンテーションでは、人は分類される存在だったけれど、そうじゃない。まあ、人が人を分類するって、よくよく考えると気持ちいいもんじゃないよな。
並河:でも、あなたは何タイプ、とか言われるの、けっこうみんな好きじゃないですか?
野良袋:それは、あくまで、「なんちゃって」というレベルでの話だろ。本当の人間というものは、まあ、俺が本当の人間というものについて語るのもおかしいんだけど、本当の人間とは、もっと複雑なものなんだ。
並河:複雑なもの…。そうですね。僕も、社会貢献的な活動をしながら、ギャルラボというプランニングチームをつくっている。
野良袋:それが人間なわけさ!シャルル・フーリエという哲学者は、こう言っている。
人間の欲望には3つのレベルがある、と。
レベル1の欲望は、食欲、性欲だ。動物としての欲望だな。
レベル2の欲望は、「やりとげよう」「一途に愛したい」という欲望。このへんになると、動物ではなく、人間としての欲望になってくる。
そして、レベル3の欲望が、「コンポジット」「パピオネ」「カバラ」の3つだ。これこそが、人間として上位のレベルの欲望なんだ、とフーリエは言っているんだな。
並河:「コンポジット」「パピオネ」「カバラ」!どういうことですか?
野良袋:「コンポジット」は、シンプルなものよりも、複雑な混乱しているものを愛する欲望。日本語でいえば、「ごちゃごちゃ」だな。「パピオネ」は、じっとしていられず、蝶のように飛び回り、いろいろなものに絶えず変化しつづけたいという欲望。日本語でいえば、「ひらひら」だな。「カバラ」は、順当に行けばこうなる、というところで、それを裏切りたくなる欲望。日本語でいえば、「逆に」だな。
並河:人間としての欲望の上位は、「ごちゃごちゃ」「ひらひら」「逆に」ですか!コトラーの「マーケティング1.0」「マーケティング2.0」「マーケティング3.0」と、フーリエの人間の欲望のレベル1、レベル2、レベル3は不思議と似ていますね。
野良袋:最初の話に戻ると、人は、「複雑」で「つかみきれない」存在。こうかと思ったら、「逆に」別のことをしたくなる。そういう存在だと認めることが、これからのマーケティングのスタート地点になる、というのが「マーケティング3.0」なんだ。
人には、社会的にいいことをしたいという欲望もあれば、おしゃれをしたいという欲望もある。そうした複雑な人間に対して、企業も、のっぺりとした単一キャラクターの企業としてではなく、さまざまな要素を持つ複雑な「人として」向き合っていく。企業だって、構成しているのは「人」なんだから。
並河:なるほど。シフトのかたちでまとめてみると、「人を分類で見る」→「人を全人格的存在として見る」ということですね。
次回、最終回です!