広報オクトパスモデル
その6「関係構築力」
2014/10/06
「第1回企業の広報活動に関する調査」の連載10回目は、企業の広報活動を「8つの広報力」に分解して考える「広報オクトパスモデル分析」の6つ目、「関係構築力」を取り上げる。
8つの広報力
「こちらの意図が思い通りに伝わらない」「時には誤解されたり曲解すら招くことがある」…多くの人が経験する、コミュニケーションの難しさ。広報活動におけるコミュニケーションではなおさらのこと、慎重かつ戦略的な対応が求められる。
「第1回企業の広報活動に関する調査」の結果、図表1の「8つの広報力」の中でも「関係構築力」は最もスコアが低く、関係構築を苦手としている企業が多いことがうかがえた。主要な設問に対するスコアは下の通りである。
回答項目の中でダントツは「IR広報」で、約67%の企業がIR部門と連携した広報活動を行っている。ただし調査対象が上場企業であることからこのことは想定内で、むしろIR広報以外の項目がいずれも低スコアにとどまっている点に注目したい。
中でも象徴的なのは、今も昔も広報部門の最重要ターゲットであるはずのメディアとの対話活動が活発に行われているとは言い難い点だ。伝統メディアとの従来型の関係構築の定番といえる「トップとメディアの定期的な懇談」(25.3%)、「記者クラブとの交流」(18.6%)などのスコアは低い。
スコアの低さの一因として、メディアの新興勢力が台頭し、ソーシャルリスニングなどIT技術を駆使した情報収集に追われる中で「関係構築」に割かれる時間も少なくなっているのかもしれない。
また一方で、ソーシャルメディアの普及は、企業とステークホルダーとの間に直接のコミュニケーション機会を生んでいる。とりわけ消費者・生活者との直接対話が多くないB to B企業であっても、新たなコミュニケーションの機会に遭遇しているはずだ。これまで以上に生活者を意識した情報発信が必要になっていることに加えて、新たなコミュニケーション対象としての関係づくりにも注力しなければならない。
関係構築に早道はないが、基本はやはり「双方向コミュニケーションが大切」という原点に立ち返ること。社会構造が複雑化し、メディア環境が日々変化する中で、コミュニケーションを取るべき対象も拡大し変質してきている。対象をどのようにとらえ、関係づくりをどのように行っていくべきか、今まさに広報力が問われている。
企業広報戦略研究所について
企業広報戦略研究所(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称CSI)とは、企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制等について調査・分析・研究を行う電通パブリックリレーションズ内の研究組織です。