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ICT×教育No.1

立命館守山中学高等学校とイノラボがアダプティブラーニング開始

2014/10/06

電通国際情報サービス(ISID)のオープンイノベーション研究所(イノラボ)シニアコンサルタントの関島です。以前イノラボの連載で、自分自身の子育て経験から「子どもたちに自発的に学ぶ楽しさを知ってほしい」「知識や学力は学校で身に付けて放課後は趣味や興味のあることに没頭してほしい」「子どもと教師と保護者の距離を縮めたい」という課題があり、それらはアダプティブラーニング(適応学習)×ICTで解決できるというお話をしました。どんな子どもにも強みと弱みがあって、興味の対象も、適した学習スタイルも違います。良いところはさらに伸ばし、頑張る必要のあるところはしっかり学ぶ。そんな仕組みを、学校と一緒に作り上げていければいいなぁと思ってきましたが、遂に第一歩を踏み出しました。

今回から3回にわたり、立命館守山中学高等学校とイノラボが2014年7月にスタートした「SNSを活用したアダプティブラーニング」の実践プロジェクトについて紹介していきます。

知識伝授型の一斉授業から、生徒が主体的に取り組む学習スタイルへ

滋賀県守山市にある立命館大学系列の立命館守山中学高等学校は、約1500人の生徒が在籍する男女共学校。「未来を担うグローバル人材の育成」「確かな学力を育てる学び」「体験を通じた学び」に取り組んでいます。

立命館守山中学高等学校は、これまでの知識伝授型の一斉授業から、生徒が主体的に取り組む学習スタイルへの転換を進めようとしていました。生徒達の知識と学力を高め、主体的に学ぶ習慣と、仲間と学ぶことで協働の力を身に付けるには、ICTの活用が有効なのではないかと、2013年の秋にイノラボにご相談くださいました。

イノラボは2011年4月に設立した組織で、先端技術を異なる業種の方々とコラボレーションしながら実証実験や共同実験を行いながら、サービス化や事業化を行う部署です。設立当時よりSNSをベースとしたアダプティブラーニング・プラットフォーム「edumame(エデュマメ)」の研究開発を進めており、以前ご紹介しました島根県隠岐諸島の公営塾で実証実験を行ってきた実績がありました。

しかしながら、今回は規模も期間も大違い。4月に入学してくる中学・高校新入生約500人に、1人1台タブレットを持たせ、授業や家庭学習で活用したいとのことでした。

そのためには、校内のLAN整備、タブレット選定やキッティング・MDM(端末管理)・保険保証交渉、教材出版社との交渉・教材の細分化&デジタル化、そしてプラットフォームの構築を同時に進めなければなりません。時間はたった3ヶ月…(当時は、考えるだけで冷や汗ものでした)。

そこで、イノラボと協働する異業種のスペシャリストの方々の力をお借りし、学校現場での実践を通じてアダプティブラーニングに求められる環境や機能を、検証・実装していく共同実践プロジェクト「RICS(Ritsumeikan Intelligent Cyber Space)」をスタートさせました。

RICSプロジェクト「SNSを活用したアダプティブラーニング」とは?

RICSには3つの特徴があります。

1つめは、コンテンツのアダプティブ機能です。問題単位でクラウド上に蓄積されたデジタル教材を生徒の学力や理解度、学習の進捗状況に合わせて最適な学習コンテンツを提示し、教師や生徒自身が選択して、授業や家庭での学習に取り入れることができます。教師は自作した資料や教材もクラウドにアップして配布でき、生徒は教師からの配布物を受け取る以外にも、教材データベースにアクセスして自由に学習していきます。

2つめは、SNS機能による協同学習です。教師と生徒、あるいは生徒同士が学習コンテンツを介してつながることができます。「友達がすでに課題を提出している」ことを知ったり、生徒同士が問題や解き方を教え合ったり、分からない問題を教師に質問するなど、生徒が能動的に学習できる環境を実現します。

3つめは、学習記録データとして蓄積された学習結果や行動履歴の可視化です。生徒・保護者・教師・学校それぞれが欲する情報をそれぞれのUIで表現します。生徒は、自らの強みや弱みを客観的に把握したり、友達と比較することにより「もっと頑張らないと」とやる気になったり、「こんなに頑張ったのに勉強の仕方を変えたほうがいい?」という、点数にはあらわれない部分に気づくことができます。また、大事なのは学校と家庭の情報共有です。点数には表れなくても努力したことを褒め、それぞれの視点で気づき共有し、それぞれが適したタイミングで声がけや学習支援を行うことにより、生徒の自発的な学習につなげていくことを可能とします。

立命館守山では、将来的にこれらのデータをポートフォリオ化して、中高大一貫教育の中での学習指導に役立てるなど、データ解析技術を用いた多様な学びの形成に発展させていくことを検討しています。

イノラボでは、学校現場での実践を通じ、アダプティブラーニングに求められる環境や機能を検証・実装し、学校におけるICT導入および運用に必要となる物と費用、その負担者などを明らかにしていきます。

立命館守山中学高等学校のRICS導入計画とは?

2014年度(初年度)は、中学校・高等学校1年生全員と担当教師、合わせて約500名が1人1台タブレットを持ち、英語と数学の2教科からスタートします。次年度以降、各年度の新入生と担当教師にも順次展開し、2016年4月には全校1500人の生徒が利活用することになります。教科や教材提供者は段階的に拡充していきます(マルチOS、マルチデバイスを想定)。

以下が、RICSスタートまでのスケジュールです。
5月 環境設定、教員向け研修(iPad基本操作や事例紹介)、生徒への情報モラル研修。
6月 生徒へiPad配布、iPad機能や操作方法についての学習、教員へRICS研修。
7月 活用スタート。授業内での活用、自宅での宿題や復習、自発的な発展学習、夏休みの課題など。

生徒の歓声、笑顔に先生は!!

6月中旬 生徒1人ずつのタブレットに、RICSアプリがインストールされました。
「やったRICSアプリが入ったぞ〜!」
という生徒の声に、
「喜ぶのはいまだけや。たくさん課題だしたるぅ」
という関西独特の先生と生徒のやりとりを目の前に大笑いするとともに、大きな一歩を踏み出したことを実感しました。

次回は、先生方の様子をお伝えします。