企画者は3度たくらむNo.4
たくらむの本質は「そうきたか!」
2015/03/26
人は常に何かを予想しながら生きています。
前々回のコラム中で例に挙げましたが、誕生日パーティを開いてもらえるとわかれば、プレゼントやケーキが用意されているかもしれないと予想します。同様に、仕事においても、業務をお願いする側は「おそらくこういうことなのではないだろうか」という予想を立てていると言えます。
商品の売り上げが悪いので解決方法を提案して欲しい、という依頼をしたのであれば、近年の傾向から言えば、フェイスブックやツイッターをはじめとしたSNSを活用することで、生活者と直接つながってはどうか、と考えているでしょう。
新製品の開発を依頼するのであれば、著名なデザイナーとコラボレーションしたデザインに特化した製品や、活況を見せているインターネット通販のみでの製品展開なども予想するのに難しくありません。
企画の提案は、こうした予想を超えたものでなければならない、と個人的に思っています。ありとあらゆる選択肢を検討し導き出した結果、予想通りだったという可能性も十分あり得ますが、プロフェッショナルの企画者であるならば、予想を超える企画を発想することを第一のゴールとしたいところです。
そこで大切になってくるのは、予想の超え方です。
予想の範疇であれば「そうだよね」「私もそう思っていたんだよ」で終わってしまいますが、予想と全く違っているものでも「そうではない」「課題を理解していますか?」という反応が返ってきてしまいます。
目指すべきは「そうきたか!」です。
単に人を驚かせる、びっくりさせるだけでは意味がありません。ただ、当たり前でもビジネスは前に進みません。納得させながらも意表をついた「そうきたか!」が物事を前進させる力になっていきます。
この「そうきたか!」には二つの意味が含まれています。それは「なるほど!」「確かに!」という納得性と、「まさか!」「びっくり!」の意外性です。もっと正確に言えば、納得性が前提にある意外性です。この掛け合わせによって、ほぼ全てのたくらみは生まれていると言っても過言ではありません。
この「そうきたか!」への飛躍はジャンプと呼ばれ、主にクリエーティブ領域において求められることが多いように思います。確かに「そうきたか!」を体現することが多いのは、表現を司るクリエーティブであることに間違いありませんが、課題設定や戦略にもマーケティング・ジャンプが必要ですし、表現に落とし込む前にはコンセプト・ジャンプが存在しなければなりません。
その意味では、企画立案にかかわる全ての人が、たくらまなければならないのだと考えます。もう誰も「なるほど!」「確かに!」といった、誰からも否定される余地のない納得性だけの領域に安住することはできないのです。
企画とは課題を解決するものです。そして、その課題は一回目のコラムで挙げたように、現状とあるべき理想のギャップによって規定され、その全てのプロセスにおいて、たくらむ必要があります。
その一連のなかで、誰もがうっすらと感じていたけれども言葉にできていなかった、潜在化していたのに顕在化できていなかった、課題が発見されます。そして、その課題に基づいて生まれた企画(プロダクトやコミュニケーション、仕組みなど)は、生活者のニーズを解消するという範疇を越えて、人々に新しい価値観や感情を提供することにつながり、コモディティ化が進む市場に、新たな風穴を開けていきます。
皆さんがいま抱えている案件においても「そうきたか!」を生み出す視点で企画をすると、いままでとは全く違う切り口での企画が生まれる可能性が広がるはずです。
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