企画者は3度たくらむNo.5
課題は日々アップデートされている
2015/04/09
世の中は、刻一刻と変化しています。
人間の本質は数年という単位でそこまで大きく変わるものではありませんが、生活パターンやライフスタイルは、一つの画期的な商品やサービスの登場によって激変することがあります。
過去にさかのぼれば、ポータブル・オーディオが発売されてからは、音楽は自分の好きな場所で聞くものになり、音楽と人の関わり方が大きく変わりました。そして、音楽は店舗で買うものから、データでダウンロードするものへと変化しています。
近年では、SNSや無料通信アプリケーションが台頭することで、電話やメールといった、いままでお金を払わなければできなかったコミュニケーションが無料になり、より手軽なものになっています。
そのなかで、製品やサービスが抱える課題や果たすべき存在価値は、変化して然るべきであり、それらを再定義する力が課題解決の鍵になりつつあると言えます。理由は非常にシンプルです。仮に、製品やサービスといった物性が変わらないとしても、世の中が変化すれば、その役割や立ち位置は変わらざるを得ないからです。
今回のコラムでは、課題の再設定についてお話しできればと思います。
第1回のコラムで書いたように、課題はあるべき理想と現状のギャップと定義することができます。ここで注目すべきは、以前掲げられた理想やビジョンは、時間が経過とともに少しずつ叶えられ、現状として更新されていくことです。当然のことながら、それに伴って課題もアップデートされていきます。
近年、テクノロジーの進化によって現状は目まぐるしく変化しています。そのため、現状の把握だけでも苦労することが多く、ビジョンを描くことが疎かになってしまいがちです。課題の整理として挙げていたものが、現在起きている問題の羅列になってしまっていた、なんていうことも見受けられます。
自戒の念も込めてですが……。
やはり企画者が行うべきは、本質的な課題を発見し、解決することです。時代に応じた新しいビジョンを再設定しなければ、正しい課題発見も、解決もできません。
例えば「製品の売り上げが落ちている」という問題を取っても、根底に潜んでいる課題は複雑になっています。
市場が生まれたばかりの製品ならば、競合社が増えた、他社が自社の性能を上回る製品を出した、という明確な理由があるでしょう。しかし、現代では、生活者がネット販売を多用するようになり、実店舗での売り上げが減少したという理由もあれば、市場そのものが別の製品に取って代わられたという理由も考えられます。
自動車に積んでいた地図がカーナビに置き替えられ、さらに、スマートフォンで事足りるようになってきた、という流れを思い浮かべていただければ理解しやすいかもしれません。
しかし、決して地図自体の価値がなくなった訳でないことは明らかです。むしろ、いまやカーナビなしでは運転できない人がいるほど、形は違えど、地図の需要は高まっていると言えます。その根底にはテクノロジーの進化があるのですが、より正確に言い表すならば、テクノロジーの進化によってもたらされた人々の行動変化によるものです。やはり『人』を中心に考えなければ、課題を発見することはできないのです。
地図という例を使って話を進めてみると、課題の推移が見て取れます。
まだ印刷された地図が主であった時代には「裏道や混雑状況などが載っている付加価値のある地図をいかに開発するか」という課題がありました。
一方、現代では、様々な地図サービスが乱立していますが、サービス提供社が地図そのものを作れる訳ではありません。そこで導かれるのが「いかに正確で最新の地図情報を提供する側になるか」という新たな課題です。
このように考えれば、地図メーカーはBtoC(ビジネス・トゥ・カスタマー)戦略から、BtoB(ビジネス・トゥ・ビジネス)に舵を切ることができるようになります。
例として、大きな動きのあった市場を挙げましたが、みなさんが抱えている案件においても、状況は日々変化しているはずです。その変化に目を向けることが、正確にたくらむ上で大事になってきます。
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