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広告業界人が語る、バズるWeb動画とは

業界人のためのYouTube論 №2

  • 長谷川 泰
  • 日本エレキテル連合
  • はじめしゃちょー
  • 東畑 幸多
  • 池上 直人

2015/07/30

広告業界人が語る、バズるWeb動画とは

7月某日、都内にあるYouTube Space Tokyoで、様々な立場でYouTubeと向き合う人々がディスカッションを行いました。

第1回では昨今注目のYouTuber・はじめしゃちょーと日本エレキテル連合の2組のお話を中心に、GoogleでYouTubeのプロダクトマーケティングマネージャーを務める長谷川泰氏、電通のCMプランナー・東畑幸多氏、電通でGoogleとのアライアンス業務を担当する池上直人氏の6人がオンライン動画における作品づくりについて考えていきました。ここからは、YouTubeに代表されるオンライン動画のエッセンスをどのようにマーケティング活動に織り込んでいくべきかをテーマに話を進めていきます。

広告でもバズは起きるか

池上:YouTuberだけでなく、企業もYouTube上で自分たちのメッセージを伝えるためのコンテンツを作っています。その視点でYouTubeをどう活用したらいいと思いますか。

長谷川:ケースバイケースではありますが、発信頻度が高いYouTuberはトライアンドエラーを繰り返しているため、視聴者からも一定の評価を得られるようになる可能性が高いです。企業の場合、2組のような毎日動画をアップするYouTuberと同じ頻度でコンテンツや広告を発信することは難しいでしょうが、試行錯誤をしていくうちに、これが視聴者の求めているものであるとつかめてくるようになります。

動画づくりでは、とにかくコンテンツを世に出しながら解決法を見つけていくのが最適な方法です。その意味ではこれまで蓄積してきているノウハウも含めて、YouTuberの取り組みは企業のマーケティング活動でのコンテンツ作りに参考になることが多いと思います。

池上:テレビCMを主戦場にしている東畑さんとしては、いかがですか?

東畑:テレビCMでは、トライアンドエラーという方法がまだ根付いていないのが実情です。でも、お2組の話を聞いている中で、大事なことを言っているな、ということを痛感します。企業発のテレビCMや動画は大きな制作費をかけて作られますが、例えばそれをYouTube上にアップしてもそれほど再生回数が伸びないこともある。そこで踏ん張ってトライアンドエラーをする必要があるわけですね。もしかしたら、トライアンドエラーを前提にした制作予算やスケジュールの設定があってもいいかもしれない。

ゲーム業界でも、スマホでは映像やストーリーが凝った大作ゲームより、映像やルールをシンプルにしたソーシャルゲームの方がヒットする、という現象がありますが、映像コンテンツにも似たようなことが起こっている。YouTuberが作る動画が驚くような再生回数になるのは、視聴環境の変化によって求められるコンテンツが変わっていることを、彼らがトライアンドエラーを通して肌感覚で理解しているからだと思います。

あと、YouTubeでは、それが広告であっても1つのコンテンツとして認識される。そんな中で、あまたあるコンテンツの中から好きなものを見るという状況が、強引にでもアテンションを獲得しにいくテレビCMとは大きく違う。その意味ではクライアントも「見に行きたくなるもの」を作る感覚を持たないといけないことを、ひしひしと感じているようです。

長谷川:「コンテンツ」と「広告」の垣根が低くなってきているという意味で事例を挙げると、米国内のYouTube動画で昨年最もトレンドになったもの10本のうち4本は「広告」でした。

広告という制約がある状態でつくられた動画の中にも、驚くような再生回数を稼ぎ出して話題になる企業も増えてきています。その4本に共通していることは、ここにいる2組の作品と同じで意外性や良い意味で視聴者の期待を裏切るものがあるなどソーシャルで拡散する要素があり、なおかつ企業のコミュニケーションとしての役割もしっかり果たしている。そうした広告が今後増えることをYouTubeとしては期待しています。

東畑:先ほども言いましたが、私も日々クライアントと接する中で意識の変化を感じています。例えば、ある企業ではYouTubeに定期的にアップする動画を「ギフトムービー」と位置付けていて、単純に笑えるだとか感動するだとか、消費者が見たくなることを主眼にしたものを作ってほしいというご依頼をいただいています。予算配分も今までとは異なり、YouTubeなどウェブのクリエーティブにもしっかりと予算をかけて、視聴者が見に来てくれるものを作り、その結果としてブランドへの絆を強めてもらおうという動きが活発になり始めています。

YouTuberはクリエーターでなくメディアだ

池上:配信頻度もふくめてトライアンドエラーをするというのが一つのキーになりそうですが、そのほかに作品を作る際、YouTubeだからこそ意識していることはありますか?

日本エレキテル連合:たくさん見てくれるのはうれしいんですが、それは一人一人の集まりなので、私たちはスマホやパソコンの画面の前にいる一人を意識しています。政治家の選挙活動のようですが「YouTubeを見ているあなた」に対して、再生回数の数字の一人は私なんだと思ってもらえるようにすることは意識しています。

池上:まさにYouTubeの名前の由来である、あなたのための番組ですね。はじめさんは企業とのコラボレーションで動画を作ったりされていますが、何か意識していることはありますか?

はじめしゃちょー(以下はじめ):タイアップの案件としてお話をいただいた時でも、ちゃんと商品を使って自分の視点で良さを見つけることでしょうか。あと、僕はすごく文房具が好きなのでシャープペンの案件がきた時などはめちゃくちゃうれしくて。好きなものだとやはりそれが画面を通じて視聴者にも伝播するんですよね。結果として「私も買いました!」「私もです!」となって…。

長谷川:企業が商品紹介の動画をYouTuberとタイアップして作る時のポイントの1つは、そのYouTuberが支持を得ている層と自社がリーチしたい顧客の層が合っているかどうかを意識することです。はじめさんのケースは、学生など自分で文房具を選んで購入している層とマッチしているということ、視聴者にとって身近な製品のレビューなのでおもしろくて役立つ動画であったというのもポイントだったと思います。

はじめ:あとこれは別に比較をするわけではありませんが、例えば企業がコーラ風呂に入った動画を作った時と、僕がコーラ風呂に入った動画を作った時では、僕のほうが再生されると思うんです。それは予算をたくさん使っても、なんかテレビ感が出ちゃうというか、固まった感じになっちゃう。同じことでも僕がやると、企業とは違った、近い距離感を感じられるからなのかもしれません。

長谷川:はじめしゃちょーさんの動画は、1カ月で多い月は1億回くらい動画が再生されるんです。それがどれくらいの規模かというと、国内トップレベルのレコード会社のチャンネルと同じくらいです。ただし、レコード会社のチャンネルは複数のトップアーティストのミュージックビデオの再生回数を合算した数字となります。その意味では、企業が束になって作った動画でも、はじめさんが一人で自宅のアパートで作った動画のほうが見られている。

東畑:そこの感覚はわかりますね。そこって何なんでしょう。私も知りたい。

池上:そうした現実というか事実を、まずは知る必要がありますよね。そうとはいえ、前述の通りランキングの10本のうち4本は企業が発信した動画であるという米国の実態もあります。日本においても、今後は変わりうるということですね。

長谷川:はい。今日お越しいただいた2組は、その意味で企業やマーケターたちの意識を変える存在だと思います。

東畑:私たちは、YouTubeというメディアと、“YouTuberというメディア” の役割が違うことを区別して捉える必要があるでしょうね。企業発のブランデッドコンテンツをYouTubeで展開することと、YouTuber自体をメディアとして考えて企業とユーザーの接点にするというのは使い分けて考えたほうがいいかもしれません。

長谷川:おっしゃる通り使い分けることもできますし、YouTuberが作った作品を参考に作ることもできるはずです。


YouTuberをクリエーターとしてだけでなく、ファンとのエンゲージメントが強固なメディアとして捉える、ということもオンライン動画を駆使したマーケティングにおいて重要なのではないでしょうか。

このディスカッションを締めくくる次回も、引き続きYouTuber、CMプランナー、プラットフォーマーと様々な視点からYouTubeを駆使したマーケティング、YouTuber から学ぶことができる消費者とのコミュニケーションの在り方について探っていきます。

※第1回:「YouTuberだけが知っているWeb動画のルール」
※第3回:「YouTuberが明かすファンからの“愛され方”」