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Experience Driven ShowcaseNo.17

ミラノ万博「ジャパンデー」で、東北復興の感謝をアピール!

2015/08/05

ミラノ万博で7月11日に「ジャパンデー」が催され、東日本大震災への世界各国からの支援に謝意を表した「東北復興祭りパレード」では、盛岡「さんさ踊り」、仙台「七夕まつり(すずめ踊り)」、山形「花笠まつり」、福島「わらじまつり」、青森「ねぶた祭」など10の祭りが大通りを行進し、ドラえもんやハローキティも参加して大盛況となりました(パレード詳細についてはこちら)。
イベント終了後、ミラノで経済産業省の堺井啓公さん、仙台市の小山裕行さん、JA全中の野口英生さんと、プロジェクトを担当する電通の木村勝一が語り合いました。

取材・編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局

 

 

通常の役所の進め方では、難しかった

木村:ジャパンデー、お疲れ様でした! まずは終わっての感想をお聞かせいただけますか。

堺井:最初はとても実現するという可能性がない中で始まったという思いがあって、ここまで持ってきたいろいろなシーンが回想されて、昨日のパレードは本当に感動的なものでした。昨年の9月に仙台商工会議所に話をさせていただきましたね。

小山:東北六魂祭自体も、なかなか開催日程などが決まらなかったんで、実際に動き始めたのは12月になってからですね。

木村:結果的にはジャパンデーのイベントの中でもかなり中心というか、大きな旗印になったのかなと思います。

堺井:多くの方の笑顔、イタリアの方を始めとしたお客さんの笑顔と、こちら側のやるほうの笑顔があふれて、達成感があり本当にすばらしいなと思いました。

小山:私は前日泣いちゃったから当日は泣かなかったけど、当日はみんな泣いていたからね。

堺井:僕も、最後、あと20メートルか30メートルぐらいで終わるんだと思ったときに、泣いた。

野口:終わってカンファレンスルームに戻ったときに、福島県の農協事務局の方が涙目で、皆さん、よかった、よかったと言っていただけたのでほっとしました。

出発式を見守る野口氏

小山:イタリア人は日本が好きだと言いますけども、ますます好きになったと言わせました。今回のパレードは、堺井さんと小山という変わり者の公務員2人がいたから実現したね(笑)、なんてことも言われたりして。少なくとも役所の通常の進め方では全然ないから。

それなりに社会的地位もあるおっさんたちが、若者たちみたいに目をキラキラさせて、なにか、見果てぬ夢に向かって突き進んだみたいな観があるね。

いろいろな人との出会いがあって難題をクリア

木村:今回特に大変だったことって何ですか。

堺井:まず、本物の祭りを行うために、本物の道具を持っていかないといけない。針葉樹の材木や和紙などで組み上げたねぶたの山車、わらで作られた大わらじなど、輸出の許可をとるところからの交渉スタートでした。

木村:3月にジェノバの税関に行きましたよね。

堺井:そうですね。そこで出会ったのがフランコ税関長です。ジェノバに到着するねぶたなどの荷物だけでなく、管轄外のミラノ市を含むロンバルディア州の税関にも、太鼓などの祭り道具の通関に支援を呼びかけていただいたときは本当に感激しました。

木村:小山さんの熱い思いもフランコさんを動かしたんじゃないですか。

小山:彼との出会いがなければ、全く違った形になっていたかもしれないね。

堺井:それからねぶたの組み立て場所に倉庫の駐車スペースを提供してくれたミネベアイタリア社にも本当に助けてもらいました。

小山:万博会場に隣接した場所という、これ以上ない立地でだったしね。

木村:万博公社との交渉も苦労しましたね。日本では当然なんですけど、事前に懸案事項をすべて洗い出して調整しようとするんですけどすぐに回答がなかったり、一度了承してもらったことが次回ひっくり返ったり。

堺井:公社から提示された内容でこちらが調整していたら、いつの間にかその案がなくなっていたり大変でしたね。確保していたはずの控室が当日行ってみたら押さえられていないのには相当焦りました。

木村:そんな時に出てくる言葉が「現場合わせ」。

堺井:みんな根性ついたんじゃないですか。

「六魂祭」の6つの祭りにさらに福島の4つの祭りをプラスして開催

木村:いろいろな制約がある中で、特にお客さんをどういうふうに誘導するかとか、安全をどう確保するかというところでいうと、もうやるしかないと思って腹をくくっていましたけども、かなり不安でした。正直なところ。

堺井:日本で六魂祭を実現しているプロの方々が、今回下支えをしてくださったんですよね。それも、秋田開催が5月の末にあって、7月11日のミラノ万博ジャパンデーに向けても準備しなきゃいけない。気合だけではできないなと思いましたね。

野口:六魂祭は毎年やっているので、僕は皆さんの経験から成功を信じるしかないと思いました。そこにJAグループが一緒になることで、がんばってやらないといけない。他の皆さんは毎年毎年の経験があるけれど、われわれはそうではないので足を引っ張ってはいけない。

木村:今 回は10の祭りを一緒にやるということで。六魂祭の6つの祭りは経験しているので段取りが何となくわかっていて、皆さん、同じペースでどういうふうに動く かお互い理解されているのですけれど、福島の4つの祭りが一緒にパレードするのが初めてなので、そこはわれわれも大変だったし参加者も皆不安だったと思い ます。

小山:チーム東北で、日通とか電通、うちで言えばJTB、KNT、自分たちも含めた関係者全員が今回のパフォーマンスを通じて、この何カ月間ですごく成長されたんじゃないかな。野口さんとか堺井さんとも話しているんだけれど、電通の底力を、まざまざと感じました。ノウハウやスキルだけじゃなくて、総合力というか、思いの強さ、力を感じました。

堺井:東日本大震災の復興支援への感謝の気持ちと、今はこれだけ元気ですよということをミラノ万博でメッセージとして伝えようということでパレードが行われたので、恥ずかしくないもの、本物を伝えることができて良かったです。

取材を受ける小山氏

 

「本物」を伝えられたからこそ、日本への関心も高まった

横断幕を持って行進する堺井氏

木村:結構いろんな人から、やるからには絶対中途半端なことにならないようにと言われていたんです。中途半端はかっこ悪いし、参加してくれた祭りの人にも恥かかせるから。

堺井:今回のパレードでは、日本への注目を集めるために、日本を代表するキャラクターであるハローキティとドラえもんなどを、日本を代表する本物の祭りであるねぶた祭、竿燈まつりなどとコラボレーションして、世界の方々に示していくという役割が功を奏したのではないかと思います。

小山:ボランティアで参加したイタリアの人とか沿道で見た人たちには、あれを見て本場に行ってみよう、日本に行こうというモチベーションになったと思うんです。

木村:パレードを見て楽しかった、面白かったじゃなくて、「感動した」という表現を使ってくれている。それって日本の精神性が伝わっているというか、踊っている人の心が伝わっているんだと思います。

小山:テクニックじゃなくて。あと、これはわれわれも想像はしていなかったんだけど、パレードの人たちの控室がなくて、祭り団体はみんな衣装で現場に入れとなったんだけど、ジャパンデーの日に会場の中に祭り衣装の人間がいっぱいいたのが、逆にとても活気がある、臨場感のあるアピールになりましたね。

堺井:パレード開始前から、キャラクターを日本館周辺に配置したり、また、踊りの衣装をまとった演者がハローキティワッペンをつけて万博会場内を歩き回るということをしたりしていましたので。図らずとも相当ジャパンをアピールした大変に目立つ企画になったのではないですかね。

木村:そう! 人間自体が告知になっていますよね。始まる前にあれだけの人が並んで待っていたというのは、そういうことですよね。2時半からやりますよというと、みんなそこで待ってくれていたし、どこからどこを歩くの? といろんな人に聞かれましたからね。

堺井:ドラえもん、ハローキティも、皆さんが衣装につけてくれましたね。

木村:ミラノ在住の方から、日本人である自分に誇りを持った、うれしかった、日本人でよかったというコメントもいただいた。

堺井:全体の450人強のパレード参加者で、スタッフも入れると500人を超えている中で、現地のボランティアの方も160人ぐらい参加してくれました。本当に力になりましたし、すごかったですね。

木村:話はつきないですね。10の祭り、次はどこの国でやりましょうか(笑)。

堺井:やはり海外でやってみたいですね。結果オーライって、一番最後の結果だけがオーライなんじゃない。その都度その都度で結果オーライが積み重なっていって、それをサポートする現場力がしっかりあって、トータルにいい結果が出て。今振り返って、イベントをつくるってそういうことなんだなと強く実感しました。今回経験を積んだので、イタリアで次回やるときはもっとうまく進められそうですね。

木村:1カ所でも結果オーライが崩れたら、多分だめだった、というぐらい綱渡りでしたね。イベント終了後の興奮さめやらぬうちに皆さんと振り返りのお話ができて、本当にうれしかったです。ぜひまた、5年後はドバイの万博で!(笑)。