カンクリ通信No.5
新聞大会×商店街ポスター展【前編】
2015/12/10
新聞界の1年に1度のビッグイベント「新聞大会」が10月15日に29年ぶりに大阪で開催されました。それに合わせて新聞広告の可能性をより感じてもらおうと、商店街ポスター展を仕掛けてきた電通の日下慶太率いる5チームが近畿大学国際学部の15段広告(全面広告)をそれぞれ制作。新聞大会当日の中央5紙朝刊に、各紙異なるクリエーティブの広告が掲載されるという電通独自の企画を実施しました。今回はいつも「攻めの姿勢」で大学広報の先をいく近畿大学広報部長・世耕石弘さんと、この企画の発起人の日下慶太、星原卓史の鼎談を前後編でお送りします。
商店街ポスター展のやり方で新聞広告をする
星原:文の里商店街のポスター展を見たときから、「これは絶対新聞とも相性いい!」と思って、新聞につながる企画を考え続けていたんですけど、いざ実行してみようと思うと難しくて。特に掲載前にクライアントのチェック無しという商店街ポスター展のルールはハードルが高いんですよね。
日下:そうそう、広告内容をすべてお任せしてしまうというポスター展のノリを新聞でやるって、広告主にとってはめっちゃ勇気いると思います。どうして近大さんは今回の企画に乗ってくださったんですか?
世耕:僕も日下さんのポスター展のことはもともと知ってて、毎回めっちゃ笑わしてもらってました。だから、まぁこれは新聞でやっても間違いなく面白いことになるやろうなぁと最初から確信してましたね。
日下:事前チェックも何もありませんでしたが、内心はかなり心配してたんちゃいますか?
世耕:過去に自分たちでもいろいろ冒険的な広告やるたびに、大学のトップたちをハラハラさせてきたんですけど。でもちゃんと世の中が反応してきた実績があるんで、だんだん面白い広告にも寛容な感じになってきてまして。
今回もポスター展の過去の実績がはっきりしてましたから、その日下さんと組むって言えば周りは説得しやすかったです。
日下:今回の広告で、新設される国際学部を題材にしたのは?
世耕:国際学部新設が決まったときから、心に決めていたことがあるんですよ。よその大学がよく言ってる「世界に通用するグローバル人材を育てる」みたいな当たり前のことは言わんぞって。うちは1年目から全員留学という特色があるから、それをどう表現すればインパクトあるかなって悩んでいた時期に新聞大会のお話を頂きまして。まさに渡りに船でした。
日下:実際に掲載をご覧になってどうでしたか?
世耕:任せるとは言ったけどほんまに大丈夫やろかと不安もありましたから、ものすごくスリルがありました。そして掲載を見たときの満足感。このゾクゾクはクセになりますね。
星原:僕も実際掲載されるまでは「これ、みんなが面白いと思えるんかな?」と内心不安でしたね。ポスター展では盛り上がったけど、今回は町の商店街に張るポスターじゃなくて万人が見る新聞に掲載でしょ。新聞のメーンターゲットの50~60歳代にも、この面白さ伝わるんかな?って。
世耕:でも僕は新聞だから面白かったなと思ってますよ。掲載前夜に、「明朝これで掲載します」って報告メールをもらいました。僕は出張だったのでスマホの画面で原稿見たんですよ。初めて見る原稿。その時、正直「え…」って思いまして。これ、面白いの?日下さん、ほんとにこれがやりたかったの?って。
日下:え、それヤバいじゃないですか(笑)。
世耕:でも翌日実際に新聞に掲載された原稿見たら、新幹線の中で声出して笑いましたわ。スマホの小さい画面じゃこの面白さは伝わらんかった。手に取れる広告としては新聞て最大サイズでしょ。15段ならではのサイズ感があるからこそ笑える広告もあるんやなと。ネットでも今回の広告見れると思うけど、これはぜひとも新聞実物を見て笑ってほしい広告ですよ。
批判?うれしくてたまらん。
星原:掲載を見た、周りからの反応とか大丈夫でした?
世耕:「こんな広告やったらアカンやろ」っていうクレームの長文メールが2通来ましたね。それがもううれしくて、うれしくて。過去に広告出してきて、一番つらいのって何の反応もないことやって痛感してますから。わざわざメールで細かくクレームを書くほど反応してくれる人がおるって、すごいことやと思うんですよ。
日下:良い反応しか評価されにくいですけど、どんな反応でもうれしく受け止めてくれるのは、この企画に乗ってくださった世耕さんならではの感覚ですよね。
世耕:僕だってね、シュっとしたかっこいい広告やりたいなと思う時もありますよ。でもバンバン広告出せるわけじゃないから、私たちとしては1発掲載でどれだけインパクト与えられるかが勝負。どれだけ話題になるかの方が大事やなと思ってますんで。
日下:世耕さんはかつて鉄道会社の広報にいらしたんですよね? そちらでの経験から、そういう考えを持たれるようになったんですか?
世耕:それはありますね。鉄道広報の広告って、いわゆるマナー広告メーンなので「車内通話やめましょう」といった表現ばっかりで。なんとか面白くやれんかなと案出してみたけど、やっぱり受け入れてもらえなかったですね。
日下:その状況は、世耕さんには相当ストレスでしょうね(笑)。
世耕:鉄道業界と、私大が抱いてる危機感のレベルが違うから仕方ないことなんですけどね。大学の入学者ってほぼ18歳なんですけど、2032年には40年前より18歳人口が半減するんですよ。他の企業さんなら、ターゲット減少してもターゲットゾーンを少し動かしたりすれば売り上げ保つ方法もあるでしょうけどね。でも大学はターゲット18歳って決まってる。なのに、それがたったの40年そこらで半減ってものすごい危機感ですよ。
日下:その危機感ってどこの大学でも持っていて、近大みたいに何かしてるんですかね?
世耕:なんとなく不安を感じてても、何かしてるところはまだ少ないんちゃいますか。だって、他の大学の広告見てみてください。大学が自分で勝手にシンボルやと思い込んでる建物の写真バーンと出して、まぁその大学ではイケてるんやろうなっていう学生の写真バーンと出してニカっと笑わせて。建物の写真見て「あ、ここ○○大学や~、やっぱステキ~」なんて思うの、その大学関係者くらいですよ。そんな広告してたって、肝心のその大学を知らん人に興味も持ってもらえんでしょ?
<後編へ続きます>