新聞大会×商店街ポスター展【後編】

カンクリ通信 №6

  • 世耕 石弘
  • 日下 慶太
  • 星原 卓史
  • 大槻 祐里

2015/12/11

新聞大会×商店街ポスター展【後編】

新聞界の1年に1度のビッグイベント「新聞大会」が10月15日に29年ぶりに大阪で開催されました。それに合わせて新聞広告の可能性をより感じてもらおうと、商店街ポスター展を仕掛けてきた日下率いる5チームが近畿大学国際学部の15段広告(全面広告)をそれぞれが制作。新聞大会当日の中央5紙朝刊に、各紙異なるクリエーティブの広告が掲載されるという前代未聞の企画を実施しました。

近畿大学広報部長の世耕さんと、商店街ポスター展の日下、星原の鼎談後編では、私大の危機感と近大の試み、そして世耕さんの野望へと話は続きます。
さらに、日本経済新聞版のコピーを担当した大槻祐里さんが、カンクリ通信恒例のあとがきを書いてくれました。

新聞大会×商店街ポスター展【前編】はこちら

(左から)星原卓史、日下慶太、世耕石弘さん
(左から)星原卓史、日下慶太、世耕石弘さん

危機感は、面白さのもと

日下:入学式につんく♂さん、卒業式に堀江貴文さんを呼んだのも、関心持ってもらえるようにですか?

世耕:もちろん、話題になりたくて。あと、なんかやるときって、1つの事象を伝える以上に、「うちの大学はこういうスタンス」っていうのを感じてほしいです。いろんな大学が「自由な校風」を売りに広告してますけど、そんな大学の広告自体がぜんぜん自由と違うじゃないですか。だから近大はビジュアルから自由さが伝わるような広告をする。

あと近大は、「元気」とか「親しみがある」とか「改革力がある」とか、そういうイメージを持ってくれている人が多いですけど、それもまさに僕らが広告で伝えてきたことです。反対に、多くの大学で持たれている「上品」とか「真面目」とかのイメージは全くないみたいですけど、いまどき上品で真面目な人材なんて求められてないと思ってますから。

日下:だけど、つんく♂さんを入学式で呼ぶというのは、それこそ意見も多かったでしょ?

世耕:入学式って卒業式と違って盛り上がらないもんです。だって入学時点ではまだ友達もいない。緊張もしてる。あと、どの大学もですけど新入生の中には一定数「不本意入学者」がいるんですよ。「俺はこの大学に来るはずじゃなかった」って人が。そんな人たちも入学式後には気持ち切り替えて、「よし、ここで頑張っていこう!」って前向きになってほしいじゃないですか。そのために新入生7000人がみんな一緒に感動して、盛り上がれることって何やろうって。それで必要に駆られて卒業生でもあるつんく♂さんを呼びました。最後まで反対する人もいたけど、結果的にめっちゃ盛り上がったし話題にもなったし、大成功です。

日下:いつも必要に駆られてやっているんですか? 面白いことやりたくてやってるんですか?

世耕:もちろん必要に駆られてですよ。2014年に作った、山からマグロの頭出てる広告も、どこよりも先駆けてネット願書のシステムを導入したのも。批判を受けつつも面白いことやってきてるのは、先ほども言った18歳人口問題を直視してるからです。強い危機感があるから、その対策として面白いことをやっているだけです。悪ふざけしてるわけじゃなくて、面白いことを真面目にやれるのって大阪の特権やと思ってるんで。

京都の大学は寺を、神戸の大学は海を出してそれぞれの地域での歴史とか文化をアカデミックな雰囲気でアピールしてますけど、大阪にはそれができない。アピールするのにちょうどいいモンがないんです。通天閣も、ミナミのネオン街もなんか違う。でも、大阪にとって「お笑い」って立派な文化やなって気付いて。だからお笑いをアカデミックにアピールしてやろうと。見た目はふざけてたって、中身は大真面目ですよ。

日下:大阪府外からの志願者が増えてきているっていうのも、そんなアピールの成果ですか?

世耕:素直に面白そうと感じてくれたり、マグロの研究ができるって明確な点で来てくれてる学生は多いみたいです。今の日本は大学を偏差値だけで判断するでしょ。だから入ったもん勝ちみたいな大学ばっかりになってる。これじゃ世界で活躍できる人は育たんと思うんです。大事なのは、そこで何がどんなふうに勉強できるかでしょ。

日下:近大の今後の野望は?

世耕:日本に根付いてる古くさい大学の価値観を壊したいです。今の親世代が言う「あそこはいい大学」ってのは、その親の時代、さらにはその親の時代の「いい大学」だったというだけであって。大学出てから自分の子どもが育つまで、大学のことなんて考えずに生きてる人が、今現時点でのいい大学なんて分かるはずがないんです。逆にその程度の根拠のない価値観なんて、簡単にぶっ壊せるとも思ってます。

炎上したって、ええじゃないか

日下:世耕さんご自身の野望を教えてください。

世耕:YouTubeで1億回再生されるようなバズるもんがやりたいですね。海外のDumb Ways to Die(オーストラリアの鉄道事故防止キャンペーン)みたいな。あれも同じく車内のマナー広告でしょ。それであそこまでできるんやと思って。

日下:うわー、それつくろう思ったら大変ですわ(笑)。カンヌグランプリですよ!

星原:でも、このネット時代に、どれだけ拡散されるかって本当に重要ですよね。

世耕:そうそう。ぶっちゃけ、色んな意味でツッコミどころの多い広告作ると、炎上したりして勝手に広まってくれるでしょ。僕、そういうのアリやと思うんですよ。人権に関わるようなこととかはもちろんダメだけど、結果盛り上がるなら炎上も勝ちやなぁと。限られた予算だけで、良い評価でも悪い評価でもバンバン広がっていくことになれば最高やないですか。

星原:日下さんのこれまでのポスター展もツッコミどころ満載の作品が多くて、それが結果的に拡散される要素になってますもんね。

日下:そう、完成度の低さがね(笑)。ただそれを許してくれるクライアントは少ないですけどね。

星原:今回の新聞大会の企画は特に、これ新聞に載せちゃうの?! みたいなポスター展とは違う意外性もあって、シェアされてたりしますよね。

日下:結局は世耕さんが言ってたように、全部危機感から始まってるんかもしれませんね。ポスター展も、最近の広告ぜんぜん面白くないやんって危機感から始めたし。

星原:今回の新聞大会企画も、新聞社自身にも危機感あるから相当な協力をしてもらえて。18歳人口への危機感持ってる近大さんだから、企画に乗ってもらえて。お互いに抱えている危機感に加えて、信頼関係が築けていたっていう要素も大きくて、それで実施できた企画やったと思ってます。

日下:つまり、大阪は危機にあるということでこの鼎談は終了いたします。

あとがき

新聞を愛し、新聞に忠誠を誓って、電通入社1年目を新聞局で過ごした元新聞局員の大槻です。今回あとがきを書かせていただきます。

クリエーティブ局に異動後も、ことあるごとに私の新聞への愛を表現できる機会をうかがい続けてきました。今回はそんな私に訪れたチャンス、それがこの新聞大会なんです!!!ということで、今回は5チームのうちの日本経済新聞担当として、AD井上くんと共に大はしゃぎで参加させていただきました。

日本経済新聞 CD:日下慶太 C:大槻祐里 AD:井上信也 D:木村亮・林元気 P:大瀧卓也 Pr:久安淳・星原卓史・西原僚
日本経済新聞 CD:日下慶太 C:大槻祐里 AD:井上信也 D:木村亮・林元気 P:大瀧卓也 Pr:久安淳・星原卓史・西原僚

私たちの企画は、「なぜ1年目で全員留学という制度にしたんだろう」を掘り下げるところから始まりました。生の外国語に触れる? 国際感覚を身に付ける?? そんな型通りの答えを右往左往してもんもんとしていたのもつかの間。これまでの近大の広告やオリエン資料から、この制度に向けた近大の姿勢が見えた気がしました。多くの大学が考えている国際教育という枠は、近大の国際学部には窮屈すぎるんではなかろうか。そんな考えで、どっから見ても勉強中じゃないやろ!とツッコミが入りそうなビジュアルに、「近大生、勉強中。」という大真面目なコピーを乗せる企画に決定。

リアル近大生をモデルとして呼び、外国人たちと楽しんでもらいながらの撮影をしたわけですが、私は撮影当日まで不安でした。素人にカメラを向けて本気で楽しんでいるような瞬間が撮れるものだろうか…。でもその不安は、撮影開始5分ほどで崩れ去りました。「僕、こうした方が浮かれポンチに見えませんか? このほうが楽しそうじゃないですか?」と、期待していなかった自主提案までしてくれる協力体勢。まだハタチ前後のイケメン、どうせならカッコ良く写りたいだろうに。というより、大学の顔として新聞広告に出るのにコレでいいのか?! と不安もあっただろうに。こちらの企画意図を的確にくみ取り、全力で「滑稽」を演じ切ってくれた姿に頭が下がりました。

そして今回の鼎談で、世耕さんのお話を聞いていろいろと納得するものがありました。こういう場だから、常識的にはこう振る舞うべき。新聞広告だから、真面目に見えるべき。そういう思い込みにとらわれずに、物事の本質を見抜き自由に発想する力を育てる。近大が言う自由な教育というのは、そういうことなんだろうな、と。そして世耕さんや大学側が率先してそんな果敢な姿を学生たちに示してきているのだな、と。

常識を崩すことには、危機感が伴うと思います。でも常識という名の現状への危機感をいち早く抱き、変える勇気を持った者だけが未知の常識を築くことができる。

「広告」という枠、「代理店」という肩書にとらわれんと仕事を開拓していく電通人にとっても、必要な力だと思いました。(大槻祐里)