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コンテンツマーケティングの現場からNo.21

数字を上げるか 気持ちをアゲるか

2015/11/25

コンテンツマーケティングを半年、1年と続けてみると分かってくることがあります。

それは「いつも見てくれる人がいる」ということ(この連載シリーズにもいらっしゃいます。いつもどうもありがとうございます!)。定期的に情報発信する中でいつも何らかのアクションをしてくれる人がいると、不思議なことになんだか知り合いになったような気持ちになってきます。アクションが無いときは、あー今回のコンテンツはあまり価値が無かったのかな、とか、それとも読む暇がないくらい忙しいのかな、などと気にかかったりもします。

見ている側にも似たような気分があるらしく、初対面なのに以前からの知り合いのようなごあいさつから始まるケースも増えてきました。

コンテンツマーケティングが本来的に醸成するのは、この「なんだか知り合いになった気分」なのだと思います。これが「ロイヤルティー」と呼ばれたり、「エンゲージメント」と呼ばれたりするものの源泉になっていきます。そうして時間をかけて培われた「なんとなく近しさを感じる関係」があるために、ついつい買ってしまう。というところをめざすのが、これからのマーケティングの一つのやり方です。

この「なんだか知り合いになった気分」がコンテンツやサイトから生まれているのかどうか。NPSやサイトの滞在時間、平均PV数、エンゲージメント率といった数字を追いかけているだけでは、なかなか見えてきません。また、運用していく中でこれらの数字を上げていくことばかりに集中してしまうと、その後のアクションがサイトの細かい改善に偏りがちで(もちろんこれもとても重要なのですが)マーケティングの改善、コンテンツの改善には結びつきにくくなる傾向があります。

とはいっても、ビジネスで大事なのは数字です。どんなにすてきなコンテンツがつくれて、いい関係が生まれてもそこで終わっては意味がありませんし、最終的には数字に還元しないといい関係とビジネスの相関を見きわめることができません。

これまでの、サイトのCVRやCPAを研ぎ澄ませていくウェブマーケティングの時代は数字だけを追いかけ、数字を上げることが成果とされるケースが多かったかもしれません。けれど、ブランドロイヤルティーの向上といったブランドへの貢献、エンゲージメントなどブランドとの関係構築といった、マーケティング全体につながる成果が求められていくこれからのデジタルマーケティングの時代には、数字だけでなく気持ちをアゲることも考えていかなければなりません。

たとえば、プレゼントキャンペーンを大量に実施してアクセスや会員登録の数を稼ぐことはできたとしても、そうして来た人たちはプレゼントが無くなったらもう来なくなってしまうのか。それでも相変わらず会いに来てくれるような、よい関係が育まれているのか。

あるいは、メルマガを頻繁に送ればアクセスを稼ぐことはできるかもしれないけれど、もらっている人たちはその頻度をうっとうしいと感じていないかどうか。

そういったことは、これまでもなんとなく懸念はされてきましたが、数字を前に結局は取り上げられないこともあったと思います。けれど、これからの、1人1人に向けて1人1人に合った情報提供、コミュニケーションを行っていくデジタルマーケティングにおいては、数字を見ながら一方で、受け取った人たちの気持ちへのイマジネーションも必要になってきます。

コンテンツは、企画のつくり方次第、タイトルやレイアウトデザインなど最後の定着のさせ方次第で、数字にも気持ちにも寄与していくことができます。そのときどきで、どちらを上げることをめざすのか。コンテンツを企画する人間はその都度精緻に考えていく必要があります。

先週、電通はデジタルマーケティングセンターの設立を発表しました。私も来年1月以降、その一部を担うことになりました。これからの私たちのコンテンツマーケティングでは、マーケティングに貢献するコンテンツ企画とは何なのか、をもっともっと追究していきたいと思っています。