【続】ろーかる・ぐるぐるNo.78
山田メソッドの本ではありません
2016/03/17
発売からまだ10日ほどですが、おかげさまで順調に部数が伸びているそうです。この場を借りて御礼申し上げます。ただ、たまに「これってそーちゃんのやり方をまとめた本でしょ?」なんて声を耳にします(そーちゃんとは、ぼくのこと)。ここでハッキリさせておきたいのですが、『コンセプトのつくり方』は山田メソッドの本ではありません。だいたいぼくみたいなやつの個人的なノウハウなんて、誰も興味ないですもんね(笑)。
以前もお話ししましたが、組織が連続的なイノベーションを起こす仕組みを説明する経営学のモデルに「SECI」があります。①Socialization(共同化)モードで、上司からミッションを伝えられたミドルマネージメントを中心にチーム全員で肩書や資格を問わずに語り合い、思いを共有。続く②Externalization(表出化)でその思いを明確なコンセプトにし、③Combination(連結化)でコンセプトに従って新しい具体策を再構成。
そしてそれを行動や実践に移すことで、新たな経験がメンバーに蓄積されるのが④Internalization(内面化)。この4つのモードを繰り返し機能させることで連続するイノベーションが実現できるという流れです。日本発で世界が認めた経営理論といえるでしょう。
この「組織のための方法論」モデルを「個人のための発想法」に当てはめることはできるだろうか?というのが書籍を執筆したベースにある着想です。
ぼくたちは日頃「アイデア」とか「コンセプト」とか、何とも曖昧な代物で商売しています。でもそれが単なる「思いつき」である限り、売り物としては危なっかしくてしょうがないわけです。コンセプトやアイデアとは何であり、その制作にはどのような方法論があって、どうやって品質管理をするのか。ビジネスの基盤となるような普遍的な議論を、経営学のフレームでしたかったのです。
別の言い方をすると、広告ビジネスはもっとアカデミズムの世界と仲良くなった方がよいのではないかと思います。もちろんいまでも「○○教授のブランド論に従えば…」とか「××大学の開発したフレームワークで分析すると…」のたぐいは山ほどあります。
にもかかわらず、広告会社がコンセプトやアイデアをつくる「知的生産」の価値、といったような本質的な議論は一向に進んでいません。長い間、クリエーティブ能力の正体をブラックボックスにすることで価値を高めてきた歴史もあるのでしょうが、もはやそれでは限界があるのです。
「戦略コンサルタント」は見事にアカデミズムと二人三脚で歩んできました。「戦略」とは「どこで戦うか?」を規定することだと考える学者グループと手を組み、「経営を科学する」という御旗のもと、その方法論として「ロジカル・シンキング」を磨き上げ、MBAという仕組みで品質保証を図ったからです。
たとえば経営学者の中には「戦略」を「どうやって戦うか?」だと考える人々がいます。そういった研究者と連携してコンセプトやアイデアをつくる「知的生産」の価値を明らかにすることができれば、広告産業の強みが明らかになり、その未来はもっと明るいものになるハズです。
これこそが『コンセプトのつくり方』のテーマでした。
ちょっと興奮し過ぎちゃったかな?
えーと。この本はぼくだけのチカラでできたものではありません。そこで編集の喜多さん、装丁の工藤真穂さん、カメラマンの松木さん、ブックデザインの石崎さんなどをお招きして御礼の会を開きました。若い石崎さんが「肉を食べたい!肉、肉っ!!」とおっしゃるので、レバパテ、尾崎牛のサラダ、和牛と新ごぼう&若鶏と青のりのパスタ、幻の豚と雪降り和牛のローストなど「肉尽くし」にしてみました。素材一流、腕前三流ですが遅くまでワイワイ、楽しい会でした。
次回はこのパーティーにも登場した「尾崎牛」のお話を少しだけ。
どうぞ、召し上がれ!