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ワカモンのすべてNo.55

イマドキ若者の恋愛には、“口実”が必要?(前編)

2016/03/16

前回、電通若者研究部(電通ワカモン)ではイマドキ若者の恋愛観について考えてみました。スマートフォンやSNSの普及を背景に、今、若者たちの間では恋愛模様も自己表現のひとつとして消費されるような、“恋愛のコンテンツ化”という現象が起きています。このような恋愛とSNSの関係性をさらに掘り下げるべく、カップルのデートにカメラマンが同行する話題のサービス「ラブグラフ」代表の駒下純兵さん・村田あつみさんに、湊研究員・奈木研究員が話を聞きました。
(左より)湊氏、奈木氏、駒下氏、村田氏
 

友達カップルを撮影した写真が、全国のカップルのニーズを引き出す

湊:前回の記事で、駒下さんに「今の若者は“モテ”よりも“ウケ”が大事だから、ラブグラフのようなSNSウケする写真が求められている」というコメントを頂きました。そこで今回は、「ラブグラフ」のことをさらに深掘りしながら、若者の恋愛とSNSの関係性について考えたいと思います。まず、「ラブグラフ」の具体的なサービス内容を教えていただけますか?

駒下:カメラマンが同行し、カップルや家族の写真を撮影するサービスです。交際記念日や結婚記念日、デート中や旅行中など、写真を残したいタイミングで全国からご依頼いただいています。2015年2月に事業化したので、ちょうど1年くらいたったところですね。

 
写真は「ラブグラフ」からご提供いただきました。

湊:全国にカメラマンがいるんですか? クラウドソーシングみたいな?

駒下:撮影を依頼できるカメラマンが全国各地に150人ほどいて、大体の地域には対応しています。クラウドソーシングというと、誰でも登録できるといったイメージですが、カメラマンなら誰でもよいわけではなく、ポートフォリオ審査と面接で一定のクオリティーを保っています。

湊:なるほど。どんな人にウケているんですか?

駒下:ほとんどが20代で、日頃からSNSを使っている層が多いですね。サービスが広まったきっかけもSNSなので。

奈木:「ラブグラフ」という名称が、シンプルで分かりやすいですよね。どういった経緯で始めたのですか?

駒下:僕はもともとミスコンのカメラマンをしていたのですが、気が付くと人のためではなくて自分が評価されたくて写真を撮るようになっていました。そこで、もっと人に喜んでもらえることをしようと思って、クリスマスの時期に街中のカップルを見て、カップルを撮ったら喜んでもらえるんじゃないかと思い、大学の友達カップルに頼んで撮影させてもらって、Twitterで発信したんです。すると、全国から「私たちも撮ってほしい」という声をたくさん頂いて。

湊:ビジネスとして始めたわけではなかった?

駒下:そうなんです。最初は僕一人で、山梨県や福井県まで撮影に行っていましたね。そうしてカップルの写真を発信し続けているうちに、村田がウェブサイトを作ってくれたんです。

湊:お二人は前から知り合いだったのですか?

村田:もともと学生の時期に同じ会社に勤めていて、私はウェブデザイナーをしていました。駒下がTwitterで写真を発信している様子を見て、写真をストックできる場所が必要だと思ったのと、ニーズが多いので事業化した方がいいと思って、ウェブサイトを立ち上げたんです。

湊:初めに駒下さんの思いがあって、やっているうちにビジネスの可能性を見いだして事業化し、SNSを通して口コミで広まっていったんですね。「ラブグラフ」という名称はどこから?

駒下:カップルだけでなく家族、ゆくゆくは高齢の夫婦の写真も撮りたいと思ったので、“ラブ”と言い切った感じです。今思うと、ちょっと照れくさいですけど(笑)。

奈木:なるほど。正直、学生がラブグラフを利用している際の話やイメージを見ていて、カップル専用の写真を撮っている印象が強かったのですが、背景や思いとしては、もう少し広義の意味での“愛の形”を目指しているんですね。

 

“新しいデートのカタチ”“有名人気分”といった体験価値まで提供する

奈木:「ラブグラフ」の写真を拝見して興味深かったのが、イチャイチャ感が強過ぎず、爽やかに仕上がっているところ(笑)。画角やポージングはある程度ディレクションしているのですか?

駒下:全体的なトーンとして、仲良しっぽく撮ることは意識していますね。それと、「キスの写真は撮らない」といった一線も設けています。もし別れてしまったとしても、「この時は楽しかったよね」と思えるような写真を撮ることが重要なんです。2人にとって付き合っていたことが黒歴史にならないような写真を撮るような気遣いをしています。

奈木:面白いですね。SNSに投稿されたカップルの写真を見て、「別れたときどうするんだろう?」と思う人はけっこういると思うのですが、運営側としては一定のラインを引いていると。ちなみにリピートされる方もいるんですか?

駒下:リピートされる方は、1年ぐらいの間隔でご依頼いただくことが多いですね。あとは、結婚→妊娠→出産みたいに節目ごとに利用していただける方もいます。

湊:利用者自体も、付き合い始めてから1年ぐらいたったカップルが多いんですよね?

駒下:そうですね。1年ぐらいで典型的なデートは大体終えてしまうから、写真を撮りたいという方がけっこういます。

奈木:マンネリを打破するということ?

駒下:それこそ、昔はきちんとした写真を残すのは結婚や七五三などの節目がほとんどでした。僕らのサービスがどうしてカップルの日常に浸透したのかを考えると、撮影自体がデートになっているからだと思うんです。撮影そのものが二人の思い出になって、写真を眺めながら「あの撮影楽しかったよね」と振り返ることができます。そのためには、カメラマンが当日楽しませることも大切。だから、ポートフォリオ審査だけでなく面接も行っているんです。

湊:なるほど、「ラブグラフ」は単なる撮影サービスではなく、新しいデートのカタチまで提供しているんですね。そこが若者の心に突き刺さったと。

村田:あとは、撮影してもらった写真が「ラブグラフ」のTwitterアカウントにアップされるのも、重要なポイントだと思うんです。SNSの普及で誰もがプチ芸能人というか、有名人になった気分を味わえる情報環境がある中で、若者もそういう体験を求めている気がします。

駒下:それは間違いなくあると思います。被写体になった人が撮影のことを発信すると、フォロワー数が200人ぐらいの人でもお気に入りが200〜300件つくこともあって。ファッション雑誌にカップルで掲載される感覚に近いのかもしれません。

奈木:スマホである程度のクオリティーの写真が撮れる時代に、「ラブグラフ」がなぜはやっているのかを考えると、体験価値をしっかりと提供しているからだと思います。写真のクオリティーが素晴らしいだけでなく、公式アカウントで拡散してもらえるメディアっぽさも含めて、若者のニーズに応えている。ある意味、脱出ゲームやリムジン女子会、ラブホ女子会などと競合するサービスですよね。いまの若者の欲求にとてもマッチしていると思うのですが、最初からそこまで考えていたんですか?

駒下:本当に最初はビジネスにするつもりは全くなくて、「なんで会社になってるんやろ」って今でも思うくらい、考えていなかったですね(笑)。

湊:次は、“モテ”と“ウケ”を乗りこなす若者の恋愛事情について更に深く聞かせてください。

 
※後編につづく

「電通若者研究部ワカモン」ロゴ

【ワカモンプロフィール】
電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計19人所属しています。ワカモンFacebookページでも情報発信中。