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『SHARED VISION』のおまけNo.5

どんな本に影響を受けてきたんだっけ?

2013/09/12

廣田:みなさんは、これまでどんな本に影響を受けてきましたか?興味があるのでひとりずつ紹介してもらえればと。僕にとって広告会社を知るきっかけになったのは『広告批評』の1994年の特集「東大ってなに?」です。小沢健二さんと佐藤雅彦さんの対談が載っているんですが、この雑誌をたまたま古本屋で見つけた時に、「電通」という会社をはじめて知った、というか、そもそも世の中に「広告会社」というものがあるのだということを知ったのでした。衝撃でした。純粋な少年がちょっと大人になった瞬間です(笑)。僕らは佐藤雅彦さんの広告を、「子どもとして」一番影響を受けている世代なんじゃないかと思います。もちろん、「佐藤さん」なんて子どもの僕は知らないわけですが、好きな広告は全部この人が作っているんだと知った時、「クラクラ」しました。

あとは、さとなお(佐藤尚之)さんの『明日の広告』と岸勇希さんの『コミュニケーションをデザインするための本』です。僕は2009年入社なのですが、入社する直前に、この2冊の本が出版されました。なので、コミュニケーション・デザイナーという肩書にあこがれて入社してきた最初の世代です。僕も当然影響を受けました。周りの同期もみんな、いつかは俺もコミュニケーション・デザイナーになるんだ!と息巻いていました。ものすごくかっこよく見えたんですね。もちろん、入社してからそれがいかに難しく並大抵の努力じゃなれないものだと痛烈に思い知らされるのですが…。お二人とは会社に入ってからご一緒する機会がありまして、いまでも多くのことを学ばせてもらっています。

八木:私は雑誌『hinism』です。もともとこの雑誌がすごく好きで、調べたら副田高行さんがアートディレクションをされているのがわかりました。なんというすてきな世界観!と感動しました。そこではじめて広告界の巨匠である副田さんの名前を知って、そこからADC年鑑などを見て、いろいろなアートディレクターの方の名前を知っていきました。広告の入り口としてはかなり脇道から入って来た感じです(笑)。

副田さんのデザインは、色が派手とか、特殊な書体を使っているわけではないのに、強くて、メジャー感があってすごいです。いつか自分もそういうデザインをしたいなと思います。

藤本:みんな広告の本とかちゃんと読んでるんですね…。僕はもともと広告会社に入ったのもたまたまで、しかもコピーライターのくせにほとんど本を読まないので紹介するものがあまりないんです。恥ずかしいのですが、たぶん中学生くらいのときがいちばん本を読んでいたんじゃないかと。当時影響を受けた本は司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』ですかね。広告と関係なくてすいません。坂本竜馬なんて世の中を変える偉業を成し遂げて33歳で亡くなっちゃうわけですよ。それに比べて会社で全然うだつが上がらないまま33歳を過ぎたときの「俺どうしたらいいんだろう」感たるや…。

ただ、本の影響なのか、つくる広告が世の中のためになる「公告」でもあってほしいという思いが今でもあります。コピーで世の中に一石を投じたり、何かを少しでも変えることができたら、という気持ちが書く原動力になっているかもしれません。

さすがに広告の本も何か紹介しないと場違いな気がしたので挙げておくと、仲畑貴志さんの『みんなに好かれようとして、みんなに嫌われる。勝つ広告のぜんぶ』、岩崎俊一さんの『幸福を見つめるコピー』とか。僕はコピー講座みたいなものに通った経験もまったくないので、尊敬するコピーライターの方々の考え方に触れられる機会はそういう本しかなかったんです。