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廣田:藤本さんは、(人とは違うアイデアを生み出すために)どんなことに気をつけていますか?

藤本:僕自身は夜型すぎて生活者としてはまともじゃないですが、異端者である自覚は忘れないようにしています(笑)。まあ「普通」ということ自体がひとつの虚構だと思うので、世の中と自分で共有できる部分、接点をちゃんと見極めるということなんですかね。自分の実感にないことをコピーで書いても絶対伝わらないと思うし。

あとは、自分が見て「しっくりくる感じ」にはしないように気をつけています。「いいね」とか「うまいね」とかっていう感じ、危険なんですよ。まとまってて安定感はあるんだけど、それって先人たちによって確立されたスタイルだからであって、すでにどこかで見たことのあるもの。どれだけよくできていても、既視感はすべてを何割引きかにしてしまう。

深夜のファミレスで企画中。
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廣田:「いいね!」って「一応、読みましたよ」って意味で押しちゃってる時もありますからね(笑)。自分の投稿がたくさん「いいね!」されたからって喜んでいてはいけないかもしれない…。


藤本:ああ、確かにそういうものかもしれないですね。
ちなみに広告の反応をソーシャルメディアで見ていると、違和感とか異物感みたいなものがあった方が反応がよかったりします。前はずうっと「これ、なんか気持ち悪いな…」というのを避けてきれいにまとまってる表現を選んでいました。でも収まりがよすぎちゃうと、ダメなんです。「ヘンだな」「気持ち悪いな」っていうものって、単純に目立つし。それに、みんな見たことのないものを見たいんです。見たことないから人とシェアしたくもなるわけで。

八木:それ、すごく参考になります! わたしも、ついつい安定しているレイアウトを選びがちですが、先輩にもっと感覚的にデザインしてみたらってよく言われます。デザインで「ヘンだな」を狙ってみるのもおもしろいですね(笑)。

廣田: 藤本さんが「普通」ということ自体が虚構とおっしゃいましたが、アイデアの出し方もそれぞれ特徴的で、実際に出てくるアイデアもとても個性的ですね。それでいて、とても共感できる。共感って、平均とか普通から生まれるのではなくて、どこまでも個別的で、ちょっとヘンなところから生まれるのかもしれませんね。

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著者

廣田 周作

廣田 周作

Henge Inc.

1980年生まれ。放送局でのディレクター職、電通でのマーケティング、新規事業開発・ブランドコンサルティング業務を経て、2018年8月に独立。企業のブランド開発を専門に行うHenge Inc.を設立。英国ロンドンに拠点をもつイノベーション・リサーチ企業「Stylus Media Group」と、米国ニューヨークに拠点をもつ、大企業とスタートアップの協業を加速させるアクセラレーション企業の「TheCurrent」の日本におけるチーフを担当。独自のブランド開発の手法をもち、様々な企業のブランド戦略の立案サポートやイノベーション・プロジェクトに多数参画。また、WIRED日本版の前編集長の若林恵氏と共同で、イノベーション都市・企業を視察するツアープロジェクトのAnother Real Worldのプロデュースも行なっている。自著に『SHARED VISION』(宣伝会議)、『世界のマーケターは、いま何を考えているのか?』(クロスメディア・パブリッシング)など。

八木 彩

八木 彩

電通では企業や商品のブランディングを、コンセプト構築・商品開発からコミュニケーション設計まで、デザインを軸に、トータルで手掛ける。2023年10月末に電通を退社。

藤本 宗将

藤本 宗将

株式会社電通

1972年生まれ。1997年電通入社。コピーライターとして広告のメッセージ開発を手がける。主な受賞に、TCC最高新人賞・TCC賞・ADCグランプリ・ACCグランプリなど。論文に『拡散するクリエイティブの条件』(JAAA入選)。

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