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Experience Driven ShowcaseNo.65

マンガを広告で生かす!:かっぴー(前編)

2016/05/23

「会いたい人に、会いに行く!」第7弾は、「なつやすみ」のかっぴーさんに、電通イベント&スペース・デザイン局の西牟田悠さんが会いました。「フェイスブックポリス」など、たまたま書いたウェブマンガが次々と話題を生み、大注目されているかっぴーさん。ついに面白法人カヤックから独立し、漫画家として会社「なつやすみ」を立ち上げました。西牟田さんは、自らの空間開発やイベントの企画でも協働したいと思い、今回語り合うことになりました。

取材構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局
(左より)かっぴー氏、西牟田氏

 

マンガの中に、広告を入れる

西牟田:そもそも「フェイスブックポリス」みたいなマンガを、なぜ描くようになったんですか? みるみるヒットしましたね。

フェイスブックポリス
かっぴー:新卒で広告会社の東急エージェンシーでアートディレクターをした後、転職して面白法人カヤックに入りました。ニューフェースは日報メールを社員向けに流すんですけど、なるべく早めに顔と名前を覚えてもらうために何かプラスアルファでつけたいなと思ってマンガを描いたんです。

カヤックはバズをつくる会社なので、社員が「面白いよ」と言ってくれるのが結構信ぴょう性があったというか、「この人たちが面白いと言ってくれるなら、ネットにアップしても面白がってもらえるんじゃないかな」と思えた。去年9月のシルバーウイークのときに、たまたま急に思い出してアップしたらこうなったという(笑)。

西牟田:最初は「フェイスブックポリス」だけ?

かっぴー:「フェイスブックポリス」と、「おしゃれキングビート!」と「めっちゃキレる人伝説」ですね!

おしゃれキングビート!
めっちゃキレる人伝説

西牟田:カヤックの人たちが「あ、いいね」と思った感じは、ライトコンテンツがウケているという時代の空気感があるからなのですかね。自分のことをライトコンテンツメーカー、例えば「ジャンプ」みたいな雑誌に載るマンガがラーメン屋だとしたら、自分はカップ麺メーカーみたいな感じと言っていたじゃないですか?

かっぴー:めちゃくちゃ広告的だなと思っているんですよ、自分のマンガって。ウェブコンテンツから書籍化されると、なかなか売れないんですよね。何で売れないのかについて、みんな安直に「ウェブで無料で見られるからでしょ?」というけど、「ブラックジャックによろしく」は、ネットで全話無料で見られるようになった途端に売り上げが伸びたらしいです。だから「無料で見られる=買わない」ということじゃないと思う。

多分メディアとして、見るテンションが違う。車の中とかトイレとかでツイッターをふわーって見ているときに、「このマンガ、めっちゃウケる!」となって見るテンションと、「ワンピースの新刊出たぞ!」と家へ大事に持って帰って、家に着いてポテチを用意して見るのでは、テンションが違う。だからテンションの差で売れないんじゃないか。コンテンツとしてはどっちもありですけど、手元に置いておきたいかの差はある。

一方、僕のマンガの強みは「あ、なんだ、広告マンガか」と分かった時に好意的に受け入れてもらえる事が多い所だと思います。距離感が広告と相性がいいんだなと思う。だからこそ自分のは「ライトコンテンツ」なんです。ウェブで公開しているマンガが全てライトコンテンツだとは思っていなくて、逆に雑誌でも、ライトコンテンツっぽいマンガは多分あるし、ウェブだからライトっていう訳では無いと思ってます。

西牟田:ユーザー側に依存するのかな、見方のスタンスは。

かっぴー:僕は意識して胸張って「ライトコンテンツです」と割り切ってしまった方が書籍もマンガ自体も、売り方の工夫があるなと思いました。

 

会社「なつやすみ」は、コンテンツメーカーでもあり、広告会社でもある

西牟田:7月には2冊同時に、書籍化もするんですね、すごいスピード感。

かっぴー:今、書籍の中に本当の広告を入れようと考えていて、その営業をかけたいと思ってます。これまだ動いてないので、電通報で初出しできてラッキー(笑)。「SNSポリス」と「おしゃ家ソムリエ!おしゃ子!」の中の広告枠を募集しているので、よろしくお願いします!

「おしゃ子が持っているスマホのカバー、どこかスポンサーつけない?」とか、ポリスのスマホや帽子のメーカーとかに、スポンサーを募集したい。僕のマンガは「広告なのが嫌がられない」のがちょっと珍しい。「なーんだ広告か、でも、お見事!」みたいな感じ。「広告か、ふざけんな」じゃなくて、「お見事」という感想を持ってくれる人がすごく多くてうれしかったから、そのノリを使えるだけ使おうと思っています。映画みたいに、マンガの小道具にスポンサーがついたら書籍として新しいですよね。

SNSポリス
おしゃ家ソムリエ!おしゃ子!

西牟田:その売り方、面白いね。

かっぴー:僕はマンガも広告も抜きんでていないけど、二つそろったら相性よかった。意外と広告マンガを描ける人ってあまりいないんじゃないかな。有名な漫画家を起用したら、それはいい広告になる可能性は高いけど、広告マンガとしてちゃんと企画から考えて、マンガに落とし込める人はあまり見たことないですよね。

西牟田:確かにね。そうすると、なつやすみという会社は、コンテンツメーカーであるだけではなく、広告会社でもあるし、いろんな立ち位置を全部自分ひとりでやっていくのですね。

かっぴー:そうです。だから事業内容はシンプルに、「マンガと広告」としているんです。だから、マンガと広告に関わることは、全て業務領域かなと思っています。

 

「バズる」ことを目標にして、真顔で議論する時代ではない

西牟田:コンテンツの発信の仕方も、結構よく考えていますよね。ソーシャル受けするコンテンツのあり方や、戦略的に取り入れている企画のポイントを聞きたいな。発信するときは、メディアを使い分けていますか。

かっぴー:ちょっと話がずれるかもしれないけれど、今考えているのは、バズるということ自体を茶化すというか、真顔でバズの話をする時代じゃなくなっているんじゃないかということ。「SPA!」で連載を始めたんですが、まさに「バズマン」というタイトルで。バズに対し一生懸命やっているウェブ制作会社のマンガ。そろそろ「バズる」に奔走すること自体が、ギャグになるんじゃないかって。

西牟田:かっぴーの発言としては、ちょっと皮肉だね(笑)。

かっぴー:うん。だって、数字なんてほとんど意味ないよ。これを言われると困る人たちがいっぱいいるから、みんな言わないんだろうけど。バズれば売れるの?それで本当にサービス加入するの?ってこと。

リツイートって、記事タイトルで分かるものとかが、ウケてリツイートする。本当に気になっているコンテンツこそ、読み込んじゃって逆にシェアを忘れていたりする。そう考えるとパパパパパパッとバズってワーっと広まっていくコンテンツって、本当に見てるのかなと疑います。最近は数字に対してうのみにしちゃいけないなと思っています。

広告業界の真面目な部分を切り取った「左ききのエレン」というマンガを、いま描いていますけど、コメントつきのツイッター投稿がこんなに多いかと思うぐらい多くて。ソーシャルカウンターに出ている数字は、「フェイスブックポリス」より低い。でも、読者が一々リアクションしている比率が高い方がうれしい。

何人に褒められたかより、何て褒められたかの方が大事。「うわっ、これちょっと、俺もひとこと言いたい」という、何かの境界線を越える、それが一人でも多いコンテンツが、僕はいいコンテンツだと思っているんです。

バズマン
左ききのエレン

西牟田:僕も同じようなことを思いながら仕事をしている部分がある。数の評価だけが先行しちゃうと、それって体験としては本当にどう届いたのかな?と違和感を覚えるよね。

もちろん数は最大化していくことを目指すけど、もっと別の指標でも見てみたい。

かっぴー:あと、どこでも誰でも平等に見ることのできないコンテンツ、例えば1万人しか見れないマンガとか、深夜しか見られないマンガとか、ちょっとひねったコンテンツが出てくるんじゃないかなと思っていて、時間帯限定版とかも面白いんじゃないかなという気がしています。
純粋に広告マンガとして起用してもらうケースも多いんですが、変化球の仕事も来るようになってきたので、分岐するマンガとか、性格診断が入っているとか、やりようがいろいろあるなと思っています。

※後編につづく