JAXAの持つ資産を企業の課題解決に生かす
2016/07/12
「宇宙」への視線が熱さを増している。そんな中、広告コミュニケーションの世界には、さまざまな企業と宇宙のマッチングをあれこれ模索し推進しているプランナーやチームが存在します。ここでは、現場で活躍中の電通のコミュニケーター3人に、企業と宇宙のコラボレーションの実践事例や可能性を聞いてみました。2人目となる今回は、電通BCC部長の澁江俊一氏がJAXAの持つ資産をどのように企業の課題解決に生かせるかを語ります。
技術や資産を細かく分解すると身近で必要な項目が出てくる
私が在籍している電通の未来創造室は、企業と対話を重ね、さまざまなアイデアを提案して企業の未来をつくっていくチームです。広告に限らずあらゆる領域で企業の課題を解決、新たな打ち手を生み出しています。
その一環として、JAXAの持つ宇宙技術や研究結果を企業の課題解決に生かそうという試みが「未来共創会議」です。どうしても「宇宙の技術は遠過ぎて、うちの企業には関係ない」と思われがちですが、「地上の課題解決、企業の発展のために宇宙は活用できる」というのが、この会議の根底にある発想です。
JAXAは宇宙技術や資産をたくさん持っていますが、それを一つ一つ細かく分解していくと、宇宙と関わりのない企業にとっても、身近で必要な項目が出てきます。例えば1着約10億円ともいわれる宇宙服。分解するとたくさんの技術に分けられます。通信技術や食料補給の技術、放射線から身を守る技術などです。
他にも、衛星や宇宙施設に使われている運用プロセスを分解すると、長期運用や不具合の検知、管制システム、遠隔通信など、多くの企業が使える技術が出てきます。あるいは、宇宙という極限環境で生活する技術からも、騒音対策や予防医学、快適設計に食料保存など、地上でも活用できるものが見つかります。一つ一つ技術を棚卸しすると、地上でもニーズのありそうな技術が出てくるんですね。
技術資産を”多対多”でマッチング
未来共創会議では、こういったJAXAの技術を、資産として企業に提案していきます。さらに、企業の持っている技術資産とJAXAの持っている技術資産を“多対多”でマッチングしていく。そのために、まずはJAXAの技術を細かく分解してマッピングし、同じくマッピングした企業の技術と比べてみる。そして、どことどこを組み合わせるか考えていきます。
宇宙は特殊空間なので、JAXAの研究もやはり特殊です。無重力や宇宙放射線の研究はその典型。そういった特殊空間だからこそ、地上とは全く違う発想やプロダクトが生まれることもあります。それらの特別な技術も、企業の持つ技術と結び付けることで、今までにないイノベーションになるかもしれません。
スタイルとしては、相互の守秘を約束した上で企業とJAXAと電通が3者で向き合い、社会の課題を解決し、企業の未来を良くする方法を見いだしていく。その手段として、JAXAの宇宙技術があるという考え方です。
未来共創会議は、今年3月に正式スタートを切って以来、宇宙と一見関係なさそうなさまざまな分野の企業から声の掛かるケースが増えています。今後、いろいろな企業の課題解決のために、未来共創会議を役立てていきたいです。
JAXAと電通がタッグを組み、ここに各種の多様な企業を個別に組み込んだ三角形でイノベーションを生み出していく新しいビジネス創造プロセス。3者で共に目指す理想の未来やそれぞれが持つ技術やノウハウを、じっくりと語り合っていく。電通からは、ビジネス・クリエーション・センター未来創造室(室長・国見昭仁ECD)が中核となり参加、澁江俊一らを中心に運営を始めている。