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キメゾーの「デジタルソリューションがよく分かっていねえ」No.3

+fooop! (ISID 正木千丈)

2013/11/26

株式会社電通国際情報サービス(ISID)が研究開発した、街と来街者とのコミュニケーション形成を支援するソーシャルシティ・プラットフォーム「+fooop!(プラ フープ)。 その正体に迫るべく、全く何も分かっていないキメゾーが、担当者のISIDコミュニケーションIT事業部・正木千丈さんに話を伺ってきました。

 

──「+fooop!」と書いて「プラフープ」と読むそうだな。

正木:由来はフラフープから来てます。コミュニケーションをつなぐ輪っかにしたいって、チームのブレストで出てきたんです。ただフラフープをそのまま使うと商標的にNGなのとデザイン的に面白くないので、「+fooop!」にしました。

──待て、だとすると「+fooop!」じゃなくて「+foop!」だろう。「o」が一個多いぞ。誤植だな。俺に指摘されて助かっただろうから、お礼に100万円くれ。

正木:ハハハ、そりゃ無理だ!「foop」という言葉はスラングで良くない意味も持っていることが分かったから、あえて「o」を足したんですよ。

──なるほどな。知ってたぜ。

正木:そうですか(笑)。あと、「+」を付けたのは、クリエーティブスタッフとブレストして字面が良かった、極端に言うとかっこ良かったから(笑)。システム屋の製品名は結構コテコテなものが多いんです。それだと面白くないでしょう。BtoCのサービスなんだし、今までのシステム屋の発想で付けるのは面白くないから変えようとみんなで話し合って。一生懸命背伸びしました(笑)。

──かっこいいな。

正木:ありがとうございます(照)。

──俺のほうがかっこいいけどな。で、どういう時にこのシステムは使えるんだい?

正木:商業施設の開発をする時、もしくは今ある商業施設のコミュニケーションツールとして使っていただくことを想定しています。

──今年4月26日にまちびらきした「グランフロント大阪」で大々的に使われたと聞いてるが、そもそもどれくらいの効果があったんだ?

正木:新設の商業施設なので、どれだけ寄与しているかはこれからですね。ただ売上でいうと、開業から約5カ月でテナント売上高が200億円に達し、初年度400億円という目標を上回るペースです。あと、ユーザーは飲食系ばかりじゃなく、商用テナントもしっかり回遊していることが分かっています。今のところ商業施設として成功していることは間違いありません。

──なるほどな。話を聞いた感じだと「+fooop!」とキメゾー、ふたつの大きな存在が成功の要因っぽいな。で、具体的に「+fooop」のシステムは「グランフロント大阪」でどのように使われているんだ?

正木:まずは事前に登録して作っていただく「OSAMPO CARD」というものがあります。商業施設の中に36ヵ所、デジタルサイネージのポールが立っているんですが、このカードでそれにタッチすると、その人のための情報が出るようになっているんです。今はまだ情報を貯める段階ですが、その人がどういう回遊をしたのか、どういうものを買ったのか、それを分析して、例えば10個ある情報のプライオリティを決めて表示できたりします。

──スマホでDLできるアプリもあるそうじゃないか。まあ俺はスマホどころか携帯も使わないがな。なぜだか分かるか?誰にも縛られたくない男だからさ。

正木:あっ、そしたらスマホの話はしないほうがいいですね、やめときましょう。

──大変申し訳ございません、どうかお話ししていただけませんでしょうか。電通さんからギャラもらってほんとは携帯買いたいです。

正木:冗談です(笑)。スマホでアプリをDLすれば、マップを見ながら行きたい場所をルーティングできたり、テナントの情報が分かったり。「まちツイ」というSNS機能もあります。任意でフェイスブックとも繋げられる、お客さん同士が情報を共有拡散できるツール。これを使っていただくことで、街に情報が貯まっていく仕組みです。あとは、スペイン語で「仲間」という意味の「ソシオ」というコミュニティがあります。昔の百貨店でいう「生け花の会」みたいなものだけど、リアルな活動だけじゃなくって、アプリを使ってメンバーと繋がったり、活動の様子を知ることができる。例えば、京都の陶芸について語る会だったり。コミュニケーションの場を街として作りたいんです。

──なんかあれだな、直接「売らんかな」じゃないものもあるんだな。

正木:そうなんです。多くのデパートや商業施設は、入居するテナントの目新しさや話題性で他との差別化を図ろうとする傾向があるけど、それだとすぐに陳腐化してしまう。「グランフロント大阪」はそうじゃなくて、「場」自体に人と人とのコミュニケーションを促す仕掛けを作る、つまり「場」のコンセプトで差別化したかった。昔のデパートは人がそこに来て、マネキンやお店の人、そこに来ているお客さんを見て、流行を感じ取ったり、欲しいものを見つけたりしてた。でも今は、スマホで調べてデパートで見本を見てネットで買っちゃうような時代。そんな時代に、従来のコンセプトで大掛かりな商業施設を作っても世の中の為にならないと考えたんです。

エレクトリックデバイス全盛の時代でもコミュニケーションの取り方はあると思います。「グランフロント大阪」では、この場所を「まち」と呼んでいる。ここに来ればなんらかのコミュニケーションがある、ぶらっと行けばなんか楽しいことがある、それを「+fooop!」でサポートさせていただきました。

──熱いな。ところで「+fooop!」で「いつかこういうことできたらいいな」という究極の理想はあったりするのか?

正木:たとえば、個人認証のパーミッションをとった上での話しですが、いち商業施設にとどまらず、世の中全体で同じプラットフォームがあって、そこに住む人たちの行動履歴を分析してですね。これはちょっと気持ち悪いかもしれないんですけど(笑)、例えばカップルがいて、彼女の嗜好をこっそり彼氏に伝える、なんてこともできるようになるかもしれませんね(笑)。

──それ、俺以上に気持ち悪いぜ。

正木:われわれ的にもこれはキモイので冗談ですが。まあ、気の利かない彼氏がレストランへ来た時に携帯がブルッとなって「ドア開けてあげなよ」みたいな情報が来たり「エレベーター先に降りちゃだめ」とかその辺がいいんじゃないのみたいな(笑)。あとは国際カップルがいっぱいできるんじゃないかとか(笑)。

──国際カップル…あとでさらに詳しく話を聞かせてくれ。国内の女性は俺を見る目がなさすぎるんだ。ていうかもっと夢を聞かせてほしい、なんかワクワクしてきたぞ!

正木:例えば、混雑して暑い夏の日に子供連れのファミリーが来られたとします。そのお子さんがまだちっちゃいとして、このファミリーは3時間も館内をずっとウロウロしてる。そこまで究極、分かっちゃうわけです。で、そのお子さんがかわいそうだから、例えば「この店に行くとアイスクリーム無料でもらえるクーポン」をあげたり、とかやっ ていきたいですね。それはシステムだけではできないと思っています。システムのエゴにならない部分でどう世の中のためになれるか、この微妙な接点をどこに持つかを考えていきたいです。

「グランフロント大阪」でも、すぐにお金にしようという考えではなく、ここに来ると面白いことできるよねという空気を醸成しようとしています。交流のデータはひとりひとり全部残るわけで、将来的にはいま流行りの言葉でビッグデータになるんですけどね。

──ところでこの「+fooop!」、世界初のシステムらしいな。

正木:調べました。クーポン配信やスタンプラリーツールはたくさんあるんですが、そういったものを束ねてコミュニケーションのパッケージツールにしたのは世界初です。
(2013年2月調査時点)

ちなみに去年、スペインでやってるモバイルワールドコングレスに出展したんですが、われわれのやってることは世界基準でも結構差別化できているなと感じました。

──開発秘話ってなんかあるのか?

正木:最初このシステムの名前は「ユビキタスプラットフォーム」通称「UPF」で、思いっきりベタでした(笑)。

──「キメゾー」通称「KMZ」みたいな感じだな(笑)。

正木:(無視して)もともと、ISIDの中に「イノベーションラボ」というチームがあって、グランフロントができる前、「ユビキタスサービス研究会」という産学協同の勉強会に参加してたんです。そこでデベロッパーの方々と「新しい感性をもった街を作りたい」「こんな街を作りたい」という構想が盛り上がってしまい、悪い言い方をするとひっこみがつかなくなった(笑)。

システム屋がシステムを作る時は、リスク無くやる、できることをやる、みたいなことが多いんですけど、今回は妄想が先に膨らんで、そこから「どうやって作るの?」と悩みながらやりました。製作期間も構想から入ると5年。超大作ですよ(笑)。

でもその無謀なチャレンジを乗り越えたからこそ面白いものができて、日本中のいろんな商業施設さんやデベロッパーさんから注目いただけているんだと思います。

──あれだな。かつてのフラフープよろしく、大流行するといいな!

正木:えっ?

──いや、あの、かつてフラフープが大流行したみたいに、この「+fooop!」も大流行するといいなっていう、ふたつをかけてみた感じの…。

正木:えっ?

──今日はありがとな!!