コンテンツマーケティングの現場からNo.33
データから効果を読み取るだけでよいのか
2016/08/18
データの読み解きかたという課題に関して、ここ数年、分析のチームと一緒にコンテンツマーケティングを運用しながら、ずっと何かしっくりこないものを感じていました。
理由は、次のコミュニケーションの戦略、コンテンツの戦略や企画の参考になるような「発見のある」情報がなかなか見えてこないから。なぜそんなふうになってしまうのか。
長い間、もやもやしていたのですが、今月の初めに弊社で行われたフォーラムで、とある事業会社の方が一言、
「結局いまやっていることって、勝ち筋探しでしかないんですよね」
とおっしゃっていて、少しもやもやが晴れた思いがしました。
うっかりやりがちなこと
当たり前ですが、データは主に数字です。数字が出てくると私たちはつい本能的に「多いほうがよいもの」と捉えてしまいがちです。そうすると、少ない数字を改善し、多い数字を増やしていく。数字の多い施策に寄せていくといった対応策をとります。これ自体は間違いではないのですが、ここに終始してしまうといつの間にか数字を改善しているだけになってしまい、大きな目的に向き合いながら本当の意味でコミュニケーションの戦略や企画を改善することにはなかなかつながりにくくなります。
そもそもそれ以前に、多い数字を見たとたん「うまくいった!」と判断してしまって、そこで思考停止になってしまうケースもあります。特に、これまで広告をなりわいとしてきた人間にとっては、PDCAのCは効果検証と混同しがちです。混同に気付かないまま数字を見たときに議論が成功か失敗かばかりに終始してしまい、次になにをやるべきかが話されないまま終わりになってしまうこともしばしばあります。
検証や最適化のためだけではなく、知りたいのは相手のこと
コンテンツの企画すなわち、コミュニケーションを考えていくうえで本当に知りたいのは、自分たちがアプローチしようとしている相手のことです。
いまブランドの傍らにいるのはどんな人たちなのか。自社ブランドを熱狂的に応援してくれているのはどんな人たちなのか。あるいは、まったく無関心のままでいるのはどんな人たちなのか。コンテンツの向こう側にいる人たちを常に意識し、理解し、満足させ続けられるか。コンテンツチームにはいつもそこが問われます。そのためには、ウェブサイトの解析データだけでは不十分なこともあります。一方で、性・年代・趣味嗜好・住んでいる地域などが分かれば企画ができる、とか、あるいはIDで「その人」が特定されれば十分、というほど簡単なものでもありません。
そのうえでコンテンツチームがやるべきこと
コンテンツ制作経験のある人は、データの読み解きが上手だと感じることがあります。コンテンツの向こう側で起きる、ヒトの気持ちの動きや行動を想像しながら仕事することに慣れているからなのでしょう。アプローチしたい相手のことは、データが十二分に集まれば分かる、というものでもありません。数字と想像力。その行き来、かけあわせがいつも必要になります。
そしてさらには、そこで見えてきた相手のインサイトに対して的確に行動喚起できるコンテンツが企画でき、その企画を想定通りの制作物に定着させられることも、コンテンツチームに課された仕事です。
施策の評価、検証は重要です。データから見える小さな課題を一つ一つ改善し続けることも大切です。けれど、そこに注力しているかぎりは、なかなか本質的な改善や進化にはつながっていかないのだと、現場で悩みながらいつも感じています。
コンテンツマーケティングの本当の目的は、コンテンツを使って顧客や潜在顧客に「ビジネスにつながる行動を起こさせる」こと。そこにつながるようなデータはどうあるべきなのか。
海外でよく言われるメインKPI、コンテンツの消費、シェア、リード獲得、売り上げ貢献といった指標を追いかけているだけでは、もしかして足りないのかもしれない、とも思ったりしています。