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待っていても、はじまらない。―潔く前に進めNo.2

層の薄いところを探す、という若手の勝ち方。

2016/09/08

コピーライター阿部広太郎の書籍『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』(弘文堂)が刊行されました。本書では、各業界で活躍する同世代の6人に、「自分の道のつくり方」を聞いています。

四六判、208ページ、定価:1600円+税、ISBN:978-4-335-55181-9
書籍の詳細はこちら

 

今回紹介するのは、その中の一人である脚本家の渡辺雄介さん。渡辺さんはどうやって自分の道を切り開いたのでしょうか―。 仕事で迷ったり、もやもやしたりもする。それでも自分らしく働いていきたいと願う全ての人に、潔く前に進むためのヒントをお伝えします。

脚本家の渡辺雄介さん(右)と著者・阿部広太郎(左)
 

渡辺さんは、映画「20世紀少年」 や映画「進撃の巨人」など、脚本家として数々の作品を世に出されています。渡辺さんから話を伺って見えてきた潔く前に進むための3カ条はこちらです。

※書籍『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』第1章 「夢を動かす×脚本家 渡辺雄介」をもとに作成
 

頼まれてもいないのに前のめりに動く。

チャンスというものには2種類あるように思います。一つ目は、目の前に、これはチャンスですと、明らかな顔つきをして現れるもの。賞レースやコンペのようなもので、勝ち抜くには、それ相応の時間も技術も必要となってきます。

二つ目は、目の前の仕事をチャンスだと捉えること。相手がさほど期待していないときに、想像を上回る熱量で返していく。すると当然、相手は驚きます。その驚きの中には、「ここまでやってくれたのか」という感動が含まれる。そうすると、もっと大きな仕事を任せてみようと相手が動いてくれるようになります。

皆さんにも、想像以上の頑張りで取り組んだ時に、先輩や上司の顔つきが変わったという、そんな経験があるのではないでしょうか。この時の競争相手は誰か、それは他の誰でもなく、「自分」です。

渡辺さんが脚本家デビューをしたのは、テレビ局のプロデューサーの方とつながりができてすぐの時。プロデューサーの方から「とりあえずドラマの脚本を書いてみてほしい。メインの脚本家がいるので、サブとして入って2話だけ書いてくれ」と言われた渡辺さん。そこで渡辺さんは、頼まれてもいないのに、全話の脚本を書いて渡したそうです。僕の方が面白いです、と伝えて。

普通であれば、やっとスタートラインに立った、ここからコツコツ頑張るぞと、依頼された2話をいかに良くするか、完成度を上げるかに注力すると思います。でも、渡辺さんは違った。ここがチャンスだと捉え、最終的には脚本家デビューをつかみ取るに至りました。

想像するに、プロデューサーの方も、その前のめりな姿勢に心を動かされ、そこまでするなら任せてみるかと思ったのかもしれません。人を動かすのは技術ではなく熱量かもしれない。ここぞという時には、120%の力を注ぎ込んでもよいのだと思います。

 

層の薄いところを探し、勝負する。

あの大先輩もいる、あの先輩もいる、あの同期も頑張っている、自分はどうだろう…。今、自分のいる場所やジャンルの、層が分厚く、どうしても突き抜けるのが困難そうな時。
もちろん、決して諦めることなく、力をつけて挑み続けるのもよいとは思います。ただ、働く目的が、自分の中にあるのであれば、いったん俯瞰してみるのも一計かもしれません。

渡辺さんは、コメディーの脚本家を目指している中で、宮藤官九郎さんとの出会いから、「かなわないな…」と思った。負けを認めた上で、勝てる場所だと考えたのが層の薄かった漫画原作というジャンル。漫画原作の世界なら二軍が少ない、とにらんだのです。

「鶏口となるも牛後となるなかれ」という故事成語があるように、層の薄い場所を探す。1番になれる、空いている場所を探すというとイメージです。そして、まずは2番手からでも、のし上がるための勝負を仕掛けていく。一点をとがらせ突き抜けることで、そこから得られる仕事の経験、情報、醍醐味は、これまでとはまるで違うものになると思います。

 

ずっと「やりたい!」宣言をする。

オファーを頂き、それに全力で応えていく。プロとして大切な姿勢です。しかしながら、ただ受け身になるのではなく、積極的な受け身をとることで、より一層、自分のやりたいことを実現できるかもしれません。

具体的には、「やりたい!」を周囲に宣言しておく、ということ。「私はこんな人です」「私はこういうことをしたいと考えています」と旗を立てておくと、「お、それなら!」といろんな人が旗の下に集まってきてくれる。

このSNSの時代、Twitterに、Facebookに、出会いの連続です。セレンディピティー、偶然の幸福で満ちている。世界は何かを探しているし、何かを見つけたがっているのだと思います。

渡辺さんもそう。「GANTZ」 の時も「好きです、好きです」と言っていたことで仕事が決まり、「ドラゴンボール Z」 も、「やりたいです!」と言い続けたら決まった。作品に取り組むべき実力が伴っているのはもちろんですが、旗を立てていることで、見つけてもらいやすくなるのは間違いありません。

この時、大切なのは、言っちゃえるかどうか。照れずに宣言できるかどうか。旗を立てることは、人から見られることでもありますが、堂々と掲げていればそれはきっと様になるのだと思います。

いかがでしたでしょうか? 渡辺さんの一つ一つの行動、選択はまさに「待っていても、はじまらない。」と感じさせるものです。まずは全力でアクションする。冷静に状況を俯瞰する。周囲に宣言する。これらの行動自体は、誰にもできることかもしれません。しかし、実際に行動に移せている人は意外と少なく、そこにこそ前に進めるかどうかの分岐点がある気がします。

渡辺さんご本人の言葉による思いは、ぜひ本書で感じてもらえたらと思います。次回は、作家の白岩玄さんから見えてきた潔く前に進むための3カ条です。