2017年デジタルの10大潮流No.5
VRとARは新たなステージに
2017/02/08
前回に引き続き、電通イージス・ネットワーク、カラの「TOP 10 TRENDS」から2017年の大潮流を紹介します。
VRとARは新たなステージに
2016年はVR(仮想現実)の年になるはずだったが、実際のところ最も人気が高かったコンテンツはAR(拡張現実)だった。
2017年も、VRとARが非常に重要であることに変わりはないだろう。しかし、その重要さは変化していくと思われる。
オキュラスリフト、HTCのVine、ソニーのプレイステーションVRなどは全て2016年に現れ、それに伴い多くのゲームや“エクスペリエンス”、そして360度動画が登場した。
カンヌライオンズでは、初めてVRキャンペーンが賞を獲得した。その一つがニューヨーク・タイムズの「The Displaced」だ。紛争で故郷を追われた難民の子どもたちの生活を、VRテクノロジーで追体験させた。同紙はコンテンツが視聴できるアプリを用意すると同時に、Google カードボード(VR用の簡易ヘッドマウントディスプレー)を100万個読者に配布した。同紙はVRコンテンツを日常的に配信するサービス「The Daily 360」をスタートさせており、イラク・ファルージャにおける戦闘の様子をリアルな感覚で体験できる360度動画もその一つだ。
リオオリンピックでは、テレビ放送権を持つ事業者が、アプリで利用できる360度コンテンツのVR配信を行った。
YouTubeやFacebookなどのメディア事業者は、360度動画広告フォーマットを提供し始めた。
一方、ARはポケモンGOによって脚光を浴びた。同アプリは配信開始から2カ月で5億ダウンロードを記録し、現在も多額の収益を獲得している。
高級品やファッション関連のアプリでAR人気が高まっている。ARを使って新しい服やメーキャップさえ試すことができる。しかし、ユーザーエクスペリエンスはシームレスでなければ効果がない。優れたビジュアルでなければ購入意欲はそそられない。
ARは、指示を与えたりトレーニングを実施したりするのにも最適となる。ブルドーザーなどの建築機械を提供するキャタピラー社は、車両メンテナンスのやり方を教えるARアプリやデバイスを制作中だ。
マイクロソフトが新たに開発したHoloLensは、現実世界に重ねて3D映像を表示するヘッドセットだ。ARとVRの組み合わせによって実際にその場にいるような感覚を体験することができる。開発者版の提供が開始され、すでに米航空宇宙局(NASA)などのパートナーがHoloLensを用いた技術を導入し、コンテンツを開発している。
今後VRとARが普及・浸透するには、ユーザーの期待に見合うテクノロジーの発達と新たな消費者行動の両方が必要だ。
ARは短期間のうちにさらに普及するだろう。なぜなら、VRに比べ、ARコンテンツを制作する技術を持つ人の数がはるかに多いためだ。ARコンテンツを簡単に制作する方法を紹介した動画もたくさん見つけることができる。
VRは、ホームエンターテインメント分野で大きく成長する可能性がある。しかしそのためには、現在の消費者の映画やビデオの視聴行動に取って代わるような、独自の方法を開拓することが必要だ。