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セカイメガネNo.54

僕はインスタグラマー、略してIGer

2017/03/24

理由は分からないけれど、最初は抵抗があった。フェイスブックが既にあるのに、セルフィーの洪水の中で見知らぬ人と写真を共有して何が面白いのか。けれど、インスタグラムに最初の写真を投稿して2周年を迎えた。もう1600枚以上の写真をアップしてきた。今じゃ自分がインスタグラムの熱烈ファン、“IGer”(インスタグラマーの略称。「アイガー」と発音)だって認めざるを得ない。

ある日たまたま始めて、使っているうちに他のソーシャルメディアにはない特徴がたくさんあると気づいてきた。自分のタイムラインにどんな写真が上がってくるか分からないのが面白い。僕の好みに合うだろうとアプリのアルゴリズムが推測した写真を次々アップしてくる。

投稿された食べ物の写真で一番数が多かったのは何だと思う? 2000万種類以上のハッシュタグが付けられたその食品は、ピザ! みんながアップした写真はたいがい他とは一味違ってる。膨大なピザの写真が勢いよくインスタグラムに流れていく。6億人のユーザーが投稿した何十億枚の写真の集積が、デジタルでつながった世界を万華鏡のように反映している。

構図を決め、不要な部分を切り取り、興味を引く写真に仕上げる。IGerとしての僕の腕は着実に進歩してきた。デザインの新領域を探求する機会を手にし、言葉を惜しんで使うことの威力を知った(100語以内の言葉、もしくはいくつかのハッシュタグを付けるだけで物語を完結させる訓練だ)。

投稿写真は、人生を模倣する。素材を厳選し、決め決めポーズ、フィルターやリタッチしまくりで恥ずかしげもない派手好き。フィルターを嫌い、撮ったそのまま、あるがままの姿を見せたがる素朴派。ユーザーはさまざまだ。あなたはどっちの現実を生きているんだろう? ま、それは自分が決めることだけど。決断に迷ったら、アルゴリズムに助けてもらえばいい。

ふと疑問に思う。人は自分の好きなもの、アルゴリズムが推奨する作品を見続けるだけで現実世界を深く理解し、展望することができるのか。自分がいいと思うものや人を追っかけているに過ぎないんじゃないか。嫌いなものも同じように追いかけて、幅の広い見方を手に入れ、自分を成長させる方がいいのか。疑問は深まる。あなた自身の解答を考えてみてほしい。その間を利用して、新しい写真をインスタグラムに投稿しているから。だって僕は、IGerだもんね。

(監修:電通 グローバル・ビジネス・センター)

筆者が2017年、インスタグラムに投稿した一番のお気に入り写真。 マラッカ海峡に面する漁村Tanjung Sepatで撮影。 過疎に直面する村をアートで再生する活動に電通LHSも一役買っている
筆者が2017年、インスタグラムに投稿した一番のお気に入り写真。
マラッカ海峡に面する漁村Tanjung Sepatで撮影。 過疎に直面する村をアートで再生する活動に電通LHSも一役買っている