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広告以外で、デジタルマーケティングNo.3

広告会社がB2Bマーケティングでできること

2017/04/19

前回までの記事で、デジタル化による企業の対面営業高度化や、業務プロセス上の課題を発見するためのカスタマージャーニー作成法について解説してきました。

これらはB2C業態への適用を前提に書いていましたが、最近、広告会社に対してB2B業態のクライアントから問い合わせが増えていると感じます。過去に私自身も、情報・通信や旅行、医薬品、自動車などの業種の、B2Bマーケティングプロセス変革のサポートをさせていただきました。

今回は、われわれのようなB2C業態のコミュニケーションを中心にサポートしている企業が、B2B業態に対して何を強みにサポートしているのかを紹介していきます。

広告会社の一般的なプロジェクトの進め方

まず広告会社がクライアントから頂く依頼としては、既存のウェブサイトリニューアルが入り口のことが多いように感じます。また「マーケティングオートメーション」(MA)ブームも相まって、サイトリニューアルに合わせ、よりインテリジェンスなウェブマーケティングを志向し、ご相談いただくケースも増えています。

一般的に、プロジェクトは以下のような進め方をしています。

一般的なプロジェクトの進め方

まずコンサルティングフェーズです。ウェブマーケティングを目的とした依頼が多いのですが、ウェブ(デジタル)チャネルだけで閉じた解決策を提示することは皆無です。これまでの記事でも書いてきましたが、B2B業態においては、リアルとデジタルのチャネルを統合したマーケティング施策がより重要であると考えています。

よって①「現状分析」で、まずは既存の営業やマーケティング業務上の課題を、それぞれの現場社員からのヒアリングを通じて把握します。同時に、営業業務やマーケティング業務のシステム環境の把握も行います。これは対面営業活動データと非対面ウェブデータを統合し、リアルとデジタルのチャネルで顧客に対する最適な情報サービス提供を目指すためです。その際、基幹システムや業務システムのリプレースといった話に及ぶこともあるため、当社グループ会社のSIベンダーと連携するなどして統合的な対応をしています。

その後②「KPI・KGI設計」で、広告プランから顧客管理、販売までのコストと利益のシミュレーションを行い、投資金額の妥当性を探ります。広告プランまでシミュレーションに含めることは、広告会社ならではの取り組みです。

その後、③「要件定義」、④「制作会社・MAベンダー選定」でシステム要件定義を行い、最適な制作会社やベンダーをフラットに選定していきます。また業務要件定義においては、複数部署を横断したマーケティング業務のプロセス設計、さらには新たなシステムを活用し営業職員をバックヤードからサポートする活動をタスクとする「インサイドセールス」部門の立ち上げなどのサポートも行います。

その後の実際の構築においては、プロジェクトマネジメントフェーズとして、制作会社、SIベンダー、ツールベンダーと共に推進していきます。そしてカットオーバー後の運用と検証もサポートしていく流れとなります。

リアルとデジタルのチャネルを統合したマーケティング施策

しかし、ここまでの説明であればB2C業態クライアントと、ほぼ同様なプロセスであるように思われるでしょう。
ここでB2B業態クライアント特有のマーケティング特徴を挙げてみましょう。

1.クライアントにとっての顧客は個人ではなく組織であること
よって顧客の検討プロセスが複雑かつ長期に及ぶことが多くなります。

2.最終顧客は一般消費者であることが多いこと
最終顧客まで含めたバリューチェーン全体を考慮する必要があります。

3.販売する製品やサービスおよびそれらのカスタマイズが多種多様であること
そのため対面営業(リアル)チャネルがより重要です。

4.営業活動はアウトバウンドが中心でありその効率性が重要であること
なお、強い企業であれば引き合いをどのように効率的に回すかも重要となります。

そのような特徴がある中で、広告会社はどのような価値を提供できるのか、説明していきたいと思います。

広告会社ゆえに提供できる価値

B2B業態のマーケティング特徴をまとめると、「最終までの顧客ニーズの察知と理解、および長期にわたる商談をリアルとデジタルのチャネルを駆使しながら効率化すること」といえます。

それに対して広告会社が提供できる価値は三つあります。

1.ワンストップで対応
先に挙げたように、「コンサルティング」と「プロジェクトマネジメント」を専門とする広告会社と、ウェブサイトやマーケティングオートメーションなどの「デジタルマーケティング」を専門とするデジタルマーケティング企業、基幹や業務システムなどの「IT」を専門とするSI企業がグループ内にそろっており、ワンストップで対応ができます。

2.コンテンツ
顧客の購入サイクルが年単位となることが多いため、顧客にとって価値のある情報コンテンツを提供できれば、つながりの強化が可能となります。またそれをオープンに提供することで、顧客自ら関係を望んでくれることさえもあるのです。

例えば、ソフトウエアを販売している企業が、自社顧客に向けて海外の最新ITに関する記事を提供すると、顧客との接点を薄く保ち続けつつ、閲覧記事から顧客が興味のあるジャンルを知ることができます。ただし、質の高いコンテンツはコストがかかります。この課題を解決するために、例えば出版社が所有する過去の記事を2次利用するといった座組みを提供しているのは、広告会社ならではと思います。商談自体はどうしても顧客担当者個人が接点となりますが、このような取り組みは顧客組織に対し面として接触することが可能となります。なお、これらは「コンテンツマーケティング」と呼ばれる取り組みかもしれません。しかしコンテンツマーケティングというと概念のみが先行していて、結局費用対効果が見えないといった声をよく聞きます。販売までのプロセスでコンテンツの役割を明確に定義し、費用対効果を明確化できる仕組み化が重要です。デジタルマーケティングにおけるコンテンツマーケティングの考え方については、次回以降で紹介していきたいと思います。

3.クリエーティブ
B2B2C業態で、エンドユーザーが一般消費者となる業態のクライアントには、広告会社のクリエーティブ力が価値となることが多いと感じています。

例えば、旅行会社にとって顧客は学校や企業などですが、その先には生徒や親、あるいは一般従業員が存在します。つまり最終顧客は一般消費者なのです。旅行会社が提供する商品が、最終消費者に受け入れられることがビジネス成立の前提となり、最終消費者のインサイトを捉え商品を魅力的に表現することは、広告会社だからこそできるのではないかと思っています。

旅行会社が修学旅行商品を紹介するウェブサイトやパンフレットのコピーとして、
「魅力ある学校づくりのパートナー」
といった旅行会社自体を売り込むありがちなメッセージではなく、
「一生忘れない風景を見せよう」
「この世界全てが教室です」
のように、生徒や親に対してどのような価値を提供する商品であり学校であるべきなのか、ということを表現した方が「グッとくる」のではないでしょうか。なお、これらは実際のコピーライターが作成したコピーです。

以上、広告会社ならではのB2Bマーケティングの取り組みを紹介しました。われわれはこれらに加え、B2BマーケティングならではのABM(アカウント・ベースド・マーケティング)といったような新たな視点も取り入れながら、そもそも自身がB2B業態である広告会社ならではの価値提供についてさらに模索しています。