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フェイスブック×電通総研“SNSってそういうことだったのか会議” 「消える動画」需要に隠されたインサイト

インサイトメモ №57

  • 大志摩 丈嗣
  • 下村 祐貴子
  • 三島 英里
  • 小椋 尚太
  • 天野 彬

2017/06/16

フェイスブック×電通総研“SNSってそういうことだったのか会議”
「消える動画」需要に隠されたインサイト

さまざまな調査データを分析し、生活者のインサイトを明らかにするインサイトメモ。今回は「Facebook」「Instagram」といったSNSを運営するフェイスブック ジャパンのメンバーを招き、電通総研メディアイノベーション研究部のリサーチャーを交えて座談会を実施した。

前編 座談会参加者
左からフェイスブック ジャパンの下村氏、三島氏、電通総研の小椋氏、天野氏。なお、もう一人の参加者であるフェイスブック ジャパンの大志摩氏は空港からビデオ通話で座談会に参加した

スマートフォン(スマホ)ユーザーの“ビジュアルコミュニケーション”について2015年より調査してきた電通総研は、先日「若年層のSNSを通じたビジュアルコミュニケーション調査」の結果を発表した。この座談会は、調査結果を踏まえながら、実際に大規模なSNSを運営するフェイスブック社と意見交換することで、より立体的にユーザーの利用動向とインサイトを浮き彫りにするのが目的だ。

なお、フェイスブック社の運営するSNS「Facebook」は、日本での月間利用者が2700万人、「Instagram」は同じく1600万人(いずれも2017年3月時点)。その90%以上はスマートフォンからのアクセスで、もはやSNSは日本人の日常生活に欠かせないものとなっている。SNSの浸透はどんなインパクトを持ち、またそこにどんな変化が起こっているのか、ディスカッションを通じて明らかにしたい。


座談会参加者

【フェイスブック ジャパン】
大志摩丈嗣(Marketing Science)
下村祐貴子(Head of Communications)
三島英里(Instagram Community Manager, APAC)

【電通総研】
小椋尚太(メディアイノベーション研究部 研究主幹)
天野彬(メディアイノベーション研究部 副主任研究員)


“コト消費” のカギを握るSNSでのビジュアルコミュニケーション

「若年層のSNSを通じたビジュアルコミュニケーション調査」から、下記のファインディングスが抽出された。今回フォーカスするのは、若年層で主流となりつつある「ビジュアルコミュニケーション」。そこにはどんな示唆があるといえるのか。

調査からのファインディングス

 

この調査を実施した背景にあったのは、SNSと“コト領域”の親和性の高さだという。電通総研の小椋尚太氏は調査目的をこう説明する。

「SNSの特徴は、ネットとリアルが強くつながっていること。ユーザーがイベントや旅行など自身の生活体験を“コンテンツ”として発信し、リアルと接続されたSNSの人間関係の中で、共有・消費しています。“人と人の間に発生する価値”によって駆動しているという意味で、SNSは近年マーケティングで重要視されている“コト領域”をいち早く取り入れたサービスといえます」

「加えてスマートフォンの普及と、動画などビジュアル関連のテクノロジーの進化で、個人の表現力・発信力は高まり、SNSが持つコト領域の可能性は拡大しています。そんなSNSの利用特性を深く調査することで、今後のマーケティングにおいて有益な知見が得られるのではと考えました」

モノ単体では売れない時代、かつ個人の情報発信力が年々増している時代だからこそ、リアルでの体験やイベント=コト領域との親和性が高いSNSの存在は、マーケティングを考える上でますます重要性を増すということだ。

そして、SNSの中でも「若年層のビジュアルコミュニケーション」に着目したことについて、電通総研の天野彬氏はこう述べる。

「SNS利用時の主流デバイスがスマートフォンに移り、より多くのユーザーが情報発信者となりました。特に若年層を中心に女性の利用者が増加した影響で、文章の投稿よりも、写真や動画で日常の体験をシェアする使われ方が増えています。そうした“ビジュアルコミュニケーション”を楽しむユーザーにはどんなインサイトがあるのか、調査を通して今までにない視点を獲得できました」

フェイスブック ジャパンで広報を担当する下村祐貴子氏は、ビジュアルを用いたコミュニケーションへのシフトを、日本だけでなく世界的な傾向だと語る。

「写真と動画を使ったコミュニケーションの割合は、世界的に増加しています。中でも若年層が率先して、テキストコミュニケーションからビジュアルコミュニケーションに移行しつつあります」(下村氏)

このトレンドを背景に、現在はどのSNSもビジュアルコミュニケーションの機能を充実させつつある。Facebookではスマートフォン用アプリにカメラ機能を追加し、「マスク」「フレーム」「フィルター」など、写真や動画用のエフェクトを多数搭載した。Messengerアプリにも5000種類以上のフレームやスタンプを追加している。

また、もともとビジュアルコミュニケーションを前提としたサービスであるSnapchatやSNOWも日々機能を拡充しているし、LINEでも人気のスタンプが無料で使える「LINE Camera」というアプリが注目されている。

そしてビジュアルコミュニケーションの代名詞的存在であるInstagramでは、昨年8月にローンチしたInstagram Stories機能の強化に注力。ロケーションやハッシュタグなどのスタンプに加えて、要望が多かった「フェイスフィルター」も追加した。

Instagramのコミュニティマネージャーとして、主にアジア地域のユーザーと接してきた三島英里氏は、Instagramが短期間で日本の若年層に受け入れられた主要因がビジュアルコミュニケーションの潮流にあると解説する。

「Instagramはもともとビジュアルをメインとしたプラットフォーム。テキストからビジュアルへの流れをけん引してきた自負があります。ここ5年で、SNSでのコミュニケーション手段はかつてないほど視覚的になり、手軽で簡単に共有できる形が求められるようになりました。昨年から今年にかけては、投稿した写真や動画が24時間以内で消えるInstagram Storiesやライブ機能を追加しましたが、これらも急速に若年層に受け入れられつつあります」(三島氏)

「消える」「残らない」ことへの安心感がコミュニケーションを加速させる

 

Instagram Stories
時間が経過すると自動的に消滅する、Instagram Stories。いまどきのSNS文化が生んだ機能といっていいだろう

天野氏は、若年層のスマホユーザーがSNS上で使用する動画サービスや、そこでの情報行動の最近の特徴は「ES-M-L」(エス・エム・エル)というキーワードにまとめられるという。

動画時代のES-M-L

まず、現在のトレンドとして注目されているのが「Ephemeral」(はかない、1日限りの、という意味)。Snapchatや前述のInstagram Storiesに代表される、一定時間で消えるフォーマットの写真や動画だ。

Instagram Storiesの利用者は右肩上がりで増え続けており、2017年4月の時点で、全世界で毎日2億人以上が利用するまでに成長した。ユーザーコミュニティーからの要望を日々ヒアリングしている三島氏は、Ephemeral需要についてこう語る。

「Instagram Stories実装の背景にあったのは、『もっと気軽に日常のあらゆる瞬間を共有したい』というコミュニティーからのニーズです」

「Instagramといえば、大切な思い出や1日のハイライトをシェアする場所というイメージがありますよね。従来はすべての投稿がプロフィールに残ったので、どうしても見映えや内容を気にしてしまい、気軽にシェアできない面がありました。しかし、実はハイライトとハイライトの“合間”にもいろんなことが起きている。そんな日常の何気ない瞬間も、Storiesによって気軽にシェアされるようになったんです」

“何気ない日常”が投稿されることで、投稿者が何をしているかをリアルタイムで感じられるし、投稿者の新たな一面を発見したりもできる。そのため、フォロワーとの関係性が従来とは違う形で深まる点も人気の理由のようだ。三島氏は例として以下のようなケースを挙げた。

「いつもはInstagramにフォトジェニックな風景を撮影して投稿している方が、実は2児のパパで、Storiesに子どもと戯れる写真をたくさん投稿していたりする。人となりが分かり、今までにない親近感が湧きますよね。投稿者にとっても、いつもと違った自分の側面を伝えられる機能として支持されていると思います。セレブやインフルエンサーといった人たちも、自動的に消滅するStoriesなら、気軽に私生活の一瞬をシェアしてくれることがあります」

一方、若年層へのさまざまな調査を行ってきた天野氏は、Ephemeralな動画サービスのニーズについて、スマホネイティブ世代ならではの“残ることへの不安”が背景にあるという見解を持つ。

「インターネットはあらゆる情報がストックされ、その情報にオープンにアクセスできることが強みでした。でも最近は、“残る”ことのデメリットも認識されるようになっていて、“残らない”ことの価値が議論され始めているように感じます。特にスマホネイティブ世代は“自分の写真がネットに残ってしまうリスク”に敏感で、だからこそ消える機能を持つサービスがヒットしているのではないでしょうか」

電通総研の小椋氏、天野氏
電通総研の小椋氏、天野氏

写真映えの“盛る”から、動画映えの“盛り上がる”へ

Instagramのフェイスフィルター
Instagramのフェイスフィルター。静止画、動画問わず、面白いフィルターで加工する機能やアプリは世界中で需要が高い

スマホユーザー、特に女性ユーザーの情報行動を読み解く上で重要な視点が「Moru」(盛る=画像や動画の加工)だ。調査では、10代女性は平均して1投稿あたり3個もの写真加工アプリを使うことが明らかになった。

天野氏は“盛る”行為が日本で受け継がれてきたある種の“伝統”だとした上で、加工アプリを使いこなすユーザーのインサイトをこう分析する。

「SNS以前にもプリクラで写真を加工してシェアするなど、かわいく“盛る”ことを求める文化がありました。ただ、最近では動画を中心にコミュニケーションすることが増えており、“その場を盛り上げたい”という欲求が強まってきています。動画なら“その場の熱量”も伝達可能だからです」

「そんな時に有効なのが動画フィルターで、 “盛れる”のはもちろん、素ではない自分として恥ずかしさを捨てて“盛り上がれる”要素も大きい。面白いキャラクターのマスクもどんどん拡充されてきていて、ブランドやパブリッシャーがスポンサードするようになっています。ユーザーはそれを使うことで日常のコミュニケーションの場がよりリッチになる。こうした新しいタイプの“使ってもらえる広告”の活用事例が増えています」

より“盛り上がれる”遊び方を提供すべく、FacebookやInstagramもさまざまなエフェクトやスタンプ機能をアプリに搭載している。

「カメラのエフェクト機能は、Facebookで注力していきたいことの一つ。例えば、AR(拡張現実)の画像フィルターを使ってインタラクティブな体験を作成するサービスを準備中です。みんなが自分のクリエーティビティーを発揮できるプラットフォームにしていきたいですね」(下村氏)

「Instagram Storiesにも最近、フェイスフィルターを追加しました。ユーザーからの要望が非常に多かった機能で、セルフィー(自撮り)はもちろん、友達と一緒にいるときにも楽しめるようなデザインを用意しています」(三島氏)

フェイスブック ジャパンの三島氏、下村氏
フェイスブック ジャパンの三島氏、下村氏

ライブ配信の主戦場が動画配信サイトからSNSへシフト

三つめのキーワードは、「Live」(SNS上でのライブ配信)。従来、ライブ配信は専用の動画配信サイトなどが中心だったが、現在は急速に“SNSシフト”が進む。

フェイスブック社の調査では、2017年4月時点で、Facebook上に公開されている動画のうち、ライブ動画が占める割合が20%に達したという。ライブ動画の視聴時間も前年比4倍を記録するなど、SNS上での需要は確実に高まっている。

下村氏はFacebook上でのライブ動画配信について、「修学旅行中の学生や、観光客が旅行先の様子を配信するなど、『今ある瞬間をみんなにシェアする』という使われ方をすることが多い」という。

「セミナーやイベント、スポーツの試合をFacebook上でライブ配信するなど、企業も積極活用しています。2017年5月にはライブ配信を視聴しながら特定の友達とプライベートなチャットができる『Live Chat With Friends』も登場し、ライブ動画を通じたリアルタイムな会話をさらに楽しめるようになりました」(下村氏)

一方、アーカイブされないタイプのEphemeralなライブ配信も需要が高い。「Facebook Stories」では、よりパーソナルで気軽なコンテンツが配信される傾向にあるという。Instagramも1月にStoriesのライブ配信を導入した。

「Storiesでのライブ配信は、特に若い世代の利用が盛んです。一人でなんとなく暇なときや、友達と遊んだり食事をしているときなどに配信するケースが多く見られますね」(三島氏)

SNSのライブ配信のメリットについて、今回の調査では「長期保存はしたくないけど思い出を拡散したい」「動画を加工したり投稿することで多くの人とつながれたり自分を表現できる」といったユーザーの声が寄せられている。投稿のハードルが低く、手軽に自己発信ができて、かつSNS的なコミュニケーションが実現する点が、ライブ配信のSNSシフトを後押ししているのかもしれない。

天野氏は、ES-M-Lに共通するポイントとして、「コンテンツ過多な情報環境においては、コミュニケーションの“一回性”が逆説的に価値を高める側面があります。その一回の強度をどれだけ充実させられるかについて、スマホネイティブ世代はより自覚的だろうと思います」と指摘した。

今回の座談会にグループビデオ通話で緊急参戦したフェイスブック ジャパンの大志摩丈嗣氏は、以下のように総括してくれた。

「ES-M-Lのどれを取っても、“場を盛り上げる”という使われ方、“その場限り”のコミュニケーションに使われている側面がありますよね。今回の調査結果を見て、ユーザーの多くが『友達と一緒にいる時に写真や動画を撮り、盛る』、そのプロセス自体を楽しんでいるのが興味深かったです」

「自己表現や記録としての写真や動画がある一方で、SNS上でのビジュアルコミュニケーションを“遊び”みたいに捉えている部分もあるように思いますし、そうした“遊び”こそが未だ見ぬコミュニケーションの形を開拓していく実践に他ならないのではないでしょうか」

空港からビデオチャットで座談会に緊急参戦し、SNSのマーケティング活用について鋭い指摘をしてくれたフェイスブック ジャパンの大志摩氏
フェイスブック ジャパンの大志摩氏

※次回は、スマホネイティブ世代の新しい検索手段や、マーケティング的視点から見たSNSの価値について語り合います!