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企業価値は「人的魅力」で決まる? ~企業魅力度調査に見るスタートアップの企業価値~

新明解「戦略PR」 №49

  • 井口 理

2017/06/26

企業価値は「人的魅力」で決まる? ~企業魅力度調査に見るスタートアップの企業価値~

いやー、毎日暑い暑い!今年は例年に増して夏の暑さがドドンと前倒しでやってきたような…。お仕事で汗をかくのはちっとも構いませんが、汗っかきの私からすればこの気温は体力を消耗してしまいそうでつらいわー。でも、そんなことをものともしない、「熱い」企業ってのはあるもんです。今回はその「熱い」企業の秘密を解き明かしていきましょう!

企業価値

第2回企業魅力度調査が発表されました!

当社、電通パブリックリレーションズ(通称電通PR)の研究機関「企業広報戦略研究所」が先日行った第2回「企業魅力度調査」が発表されました。これは企業の魅力を「人的魅力」「会社的魅力」「商品的魅力」の三つの要素で分析し、主要10業界、計150社について生活者1万人を対象に調査したもの。

詳しくは、こちらのニュースリリースをご参照いただければと思いますが、今回私が注目した部分をまずはご紹介!調査では前述の「三要素×12項目」が用意され、それぞれに対して魅力を感じるか否かを聞いています。そこでまず注目したいのが企業に感じる魅力が総じて高まっているということ。どういうことかと申しますと、私がかねてより唱えている「商品・サービスのUSP(Unique Selling Proposition/独自の売り)がなくなり差異化できなくなっている中、企業そのものへのファンを発掘・育成していくことが大事」ということを裏付けてくれているのではないかと!

昨年と比較すると、この企業の魅力ポイント数の総量は全体として103.5%に上昇しており、これは商品・サービスだけを見ていた生活者が「企業そのものを見る、評価する」という目線をさらに強めていることの証左だと思うのです。一方で企業側も、これに乗じてどんどん企業主体の情報発信を強めており、生活者に対してその存在感を残すことに成功してきているとも言えるでしょう。

両者が「見る、見られる関係」をきちんと意識して、その関係を共に高めていこうとする動きが昨今の新たなトレンドと理解し、取り組んでいかねばならないということです。まさに欧米で先行するこういった取り組みが、日本でも常態化してくるのかも知れません。

全業界の魅力ポイント数の総量経年変化

全業界の魅力ポイント数の総量経年変化

「顔」が見えてこその安心感、そしてその先のファン化へ

中でも企業の魅力ポイント数の総量を押し上げたのが、三つの要素のうちの「人的魅力」でした。昨年比106.0%で、同じく102.9%の「会社的魅力」や101.4%の「商品的魅力」より高い数値を示しています。では「人的魅力」とはなんなのでしょうか。

ここでいう「人的魅力」とはリーダーシップの有無や職場風土、ソーシャルイシュー対応力など企業を構成する「個人」や事業活動を通じて周囲に感じさせる「法人」としての魅力を指しています。私は「顔が見えない企業は、コミュニケーションにおいて大きく損をしている」とよく言いますが、企業という組織体であっても「社長の発言」や「会社の性格」、あるいは「会社を構成する社員一人一人の立ち居振る舞い」でそのアイデンティティーが伝わっていくと考えています。

スーパーでよく見る「〇〇さんちの野菜」と同様、作り手を一人の人間として捉えることで、ようやく血の通ったコミュニケーションの入り口に立てるということ。すなわち、さまざまなレイヤーにおいて自分たちの企業を生活者によりよく知ってもらおうという各企業のコミュニケーション努力が、ここに来て奏功しているのかも知れません。

ちなみに、企業の魅力を感じる項目のTOP5において、「人的魅力」に関する評価が三つも入っています。それは「ビジョンを掲げ、業界をけん引している(1位/51.6%)」「信頼できるリーダー経営者がいる(3位/42.9%)」「チャレンジスピリットにあふれたリーダー・経営者がいる(4位/39.0%)」です。一見、生活者が商品やサービスを購入する判断基準から遠いように思われがちですが、実は企業に対するこういった良好な印象が、実際の購買活動にも影響を及ぼしていく時代となっているわけですね。

2017 年の魅力項目ランキング

「人的魅力」がとても重要となるスタートアップの企業価値

このような調査結果を見て、私が強く思うのは「スタートアップ企業こそPRをもっと活用すべきなのではないか?」ということ。なぜかというと、こういった創業者の「人となり」を理解してもらうことがスタートアップ企業にはとても重要だと思うからです。そしてそれを効果的にサポートできるのがPRという手法です。ご承知のようにスタートアップ企業は、その独自の才覚で新たな製品やビジネスモデルを発明し、それを社会に広めようとするわけです。そこでまず彼らが取り組むのが、投資家に向けて、いかにそのビジネスが成功・拡大するかをアピールし、当面の操業資金を確保するかということ。

運よく、優れた投資家の鋭い嗅覚で、その大きな可能性を発見・理解してもらえるスタートアップもありましょうが、欧米に比べて日本のスタートアップが実際に期待した資金を得て、成功裏にコトを進めることができる確率は極めて低いと言わざるを得ないのはご存知の通りです。そして、このようなスタートアップから生まれるイノベーションを育てきれないことが、日本の停滞感にもつながっているのではないかと思うのです。
多くの投資家は「まず人を見る」といいますが、それに対してきちんとアピールできる準備ができていないのではないか。裏返せば、そういう準備がまず必要なのだということを、まさに裏付ける結果が今回の調査で明らかになったと思うのです。

実は年齢や性別といった属性別でみても、全体的に魅力を感じる要素に大きな傾向差異は見つからないのですが、投資家および非投資家間という属性別でみたときの差異が非常に興味深いものになったのです。そこで差が大きく出た「企業に魅力を感じる要素」をあげてみると、「イノベーションにこだわる経営をしている」(投資家37.2%/非投資家27.5%)、次いで「社会の発展や、社会課題の解決に貢献している」(投資家40.7%/非投資家32.4%)、「良い企業理念・ビジョンにもとづいた経営をしている」(投資家38.8%/非投資家30.7%)となっており、それぞれ8~10ポイント程度投資家が高くなっているのです。

そうです、これらはすべて「人的魅力」に関わる評価なんですね。投資家というと「会社的魅力」に含まれるような「優れた成長戦略」や「安定的な収益基盤」、あるいは「長期的な成長が見込める」といった評価に注目しそうですが、やはり「投資家は、経営者の目を見て判断する」と言われるように、「人」への信頼感は極めて重要な投資要件なのかも知れません。

「スタートアップ×PR」が日本を変える

併せて「スタートアップにPRが大きく寄与できる」という背景を言わせてもらうなら、スタートアップはやはりその大半がイノベーション的なものが多いということがあります。すなわち、生活者に対して、ただ単に製品やサービスを提示するだけでは、とても分かりにくいものが多いだろうというということ。なぜならそれは、今までに見たことも聞いたこともないものだったりするから。

そこで、企業側は、それが今現在の生活者自身にどのようなベネフィットを提供してくれるのかをきちんとひもといてあげねばならないはずなのです。しかし、それができていない。それは対投資家においても同じことです。そしてここにも、理解促進を得意とするPRが効果を発揮するのではないでしょうか。

このように創業者の人となりをきちんと整理し、その立ち居振る舞いをサポートしつつ、信頼感を醸成する。またそこから生まれるイノベーティブな製品やサービスの今日的価値をしっかりかみ砕いて社会や生活者に伝えていくことは、まさにPRの得意領域ですよね。このような活動を踏まえた上で、生活者がそれら提供価値をスムーズに受け入れることができるであろう段階において、大きな投資確保、広告活動に打って出るのもありでしょう。しかし、まずは自身の立ち位置をしっかりとしたものにする。そのために「PRのチカラ」試してみませんか?

まとめ:企業価値は「人的魅力」で決まる!

・昨年と比較すると、企業の魅力ポイント数の総量は全体として103.5%に上昇。
・企業の魅力ポイント数の総量を押し上げたのは「人的魅力」。
・「人的魅力」とはリーダーシップや職場風土、ソーシャルイシュー対応力など、企業を構成する「個人」や事業活動を通じて周囲に感じさせる「法人」としての魅力を指す。
・特にスタートアップ企業では、創業者の「人となり」を理解してもらうことが信頼度獲得のためにも重要。
・特に社会に新たな価値を提供することの多いスタートアップ企業は、今現在の生活者自身にどのようなベネフィットを提供できるのかを説明し、理解度・共感度を高めていかなければならない。