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“小諸の土”産(コモロのミヤゲ!?)話

食卓に“農”をのせよう №2

  • 杉村 慶明

2017/08/22

“小諸の土”産(コモロのミヤゲ!?)話

7月4日行われた「KOMORO AGRI SHIFT “つくる農”から“つなぐ農”へ」 プレス発表会に行ってきました。そこでは小諸市が、DGCテクノロジーの協力を得て、土壌微生物の多様性と活性値を生産基準にする、「小諸基準」の策定に着手すると発表されました。
この試みのきっかけは、「消費者は、農家の顔が見えると安心するというが、農家も食べる人の喜ぶ顔が何よりの励みだ」という農家さんの話だったそうです。

キャラクター「こもろん」と、DGCテクノロジーの櫻本氏、小泉市長
キャラクター「こもろん」と、DGCテクノロジーの櫻本氏、小泉市長

これからの「小諸の農」は、土壌微生物から始まり、生命をつないでいく

 

「小諸の農」は、全国トップシェアの作物こそありませんが、高原野菜や関西の高級料亭でしか食べられないという白土馬鈴薯の産地として一定の知名度があります。地理条件(さまざまな地形、標高差、土壌の違い)を生かし、米、果樹、野菜(特にブロコッリーは、全国有数の産地)など多品目を生産していることが特色です。近年では、ワインや米の品質の高さが国内外で評価されています。

一方、激しい地域間競争の時代に、小諸にしかない特色を持つことは急務でした。そこで小諸市は、「新しい価値」と「新しい顧客」を生み出し、農家の収益を向上させる取り組みを模索していました。
冒頭でも記しましたが、KOMORO AGRI SHIFTが始まるきっかけは、「消費者は、農家の顔が見えると安心するというが、農家も食べる人の喜ぶ顔が何よりの励みだ」という農家さんの話でした。

作る人と食べる人の笑顔がつながれば、小諸の農は、生き生きしてくる。

笑顔をつなげるものは、作る人と食べる人の会話から生まれるのではないか。

そのような会話を続けるために、小諸の農家は、収穫して終わりではなく、農家が伝える物語を持ち、さまざまな人に、自らの言葉で自分の思いや考えを届ける、“つなぐ農”を目指そう。

「SHIFT」は、小諸市役所と市内農家で構成されたプロジェクトチームのこうした話し合いから始まりました。

では、これからの「小諸の農」は、何をつなぐのでしょうか? 何を語るのでしょうか?
プロジェクトチームは、「SHIFT」の方向性を今の小諸らしさを磨くことで見いだすことにしました。そこで、今の小諸らしさを再認識するために、小諸市民/軽井沢別荘族/観光客、首都圏在住者1000人に小諸の農に関するブランド実態調査を行いました。

その結果、多くの方が小諸に「多様で魅力的な農産物」「豊かな土壌」「里山の農風景」を想起していることが分かりました。多様性×土壌×農風景。これが、磨くべき小諸の農のコアバリューであり、多様な生命の営みこそが小諸の農を支えている、と気付かされたそうです。

1グラムの土壌の中には、1000種類以上の微生物がいると言われています。つまり、多様な生命の営みは、土壌微生物から始まります。「土壌微生物から食べる人まで、土壌微生物から農風景まで、小諸の農は、生命をつないでいこうじゃないか」。プロジェクトチームは、生命をつなぐ農に取り組むことにしました。

“小諸の土”産ブランドを目指せ

微生物が多様で活発な土壌は、豊かで元気な土です。土が元気だと、元気な農産物が育ちます。小諸の農家さんは、そのことを知っていました。しかし、農家さんが元気な土をつくるための指標や、元気な土であることをさまざまな人に伝える方法がありませんでした。

プロジェクトチームは、土壌微生物の多様性・活性値の測定技術を持つDGCテクノロジーと提携することで、この課題を解決します。この測定技術は、NASAの技術を応用し、95種類の異なった有機物(微生物のえさ)が入った試験用プレートに、サンプル土壌を中性にして純水で薄めたものを入れて、専用のロボットを用いて一定温度で15分間隔で48時間連続して測定し、各有機物が分解される速度を調べます。

DGCテクノロジーによる、土壌微生物多様性・活性値分析の様子
DGCテクノロジーによる、土壌微生物多様性・活性値分析の様子

微生物によって分解できる有機物の種類は異なっているので、たくさんの種類の有機物が分解できたということは、たくさんの種類の微生物がいるということになります。また、有機物の分解速度が速いということは、それだけ微生物が活発に働いているということになります。こうして、微生物の多様性と活性との両方を合わせて計測した値が、土壌微生物多様性・活性値となります。

プロジェクトチームは、この技術を活用した測定値をもとに、生産基準「小諸基準」を定めることにしました。また、数値指標だけでなく、土づくりの物語を伝える技能検定も基準の中に盛り込むことを検討しています。

「小諸の農」は、地名でも農産物でもなく、“元気な土”をブランディングします。“元気な土”を起点に、多様で魅力的な小諸の農産物を、“小諸の土”産として打ち出しました。

“小諸の土”産は、四つの付加価値を生み出すそうです。
①おいしさ:元気な土で育った作物は糖度が高く、残留硝酸態窒素(えぐみの原因)は少ない。
②安全:農薬や化学肥料を使い過ぎると、土壌微生物の活性指数は下がる。
③安定供給:元気な土で育った作物は、病気にかかりにくい。(連作障害の回避)
④物語:生命のつながり、見えないものへの配慮(土壌微生物)、生物多様性

これらは、「小諸の農」から食べる人に届ける生命をつなぐ旅の“お土産”、だそうです。すてきですね。

“小諸の土”を伝える「料理」や「アグリシェア体験」

 

プロジェクトチームは、“小諸基準”に合わせ、農産物のブランディングだけでなく、小諸のファンづくりを意識して、「料理」や「アグリシェア体験」を開発します。

元気な土で育った採れたての元気な作物に、ぴったりのレシピを考えることで、“小諸の土”産の物語を伝えます。「一汁一菜」をテーマにした「小諸料理」を早速頂いてきました。

小諸料理の第1弾メニュー
小諸料理の第1弾メニュー

またアグリシェア体験として、農体験を通じて“小諸の土”づくりの物語を伝える「KOMORO AGRI SHARE」を計画中とのこと。土づくりの苦労を知ってもらっても仕方ないので、働く人の疲れたカラダとココロが喜ぶような、癒やしの農体験メニューを考えています。それは、生命をつなぐ元気な土づくりをしている農家と農村のありのままの生活を体験できるものになりそう。

目指すは、企業の保養所ならぬ保養農村。家族で来たら、料理や園芸が学べるだけでなく、子どもに農育も。セカンドキャリアに備えて農業技術を学ぶもよし。メンタルケアや認知症予防に農作業が効くそうで、さまざまなケアメニューもそろえます。荒廃する遊休農地が増えている中山間地域の農家が稼げる新しい農の形を提示します。

プロジェクトチームは、農家をはじめとして、より多くの方に「KOMORO AGRI SHIFT」に参加いただくためにロゴを作りました。

弁当箱がモチーフ。フタをずらす(シフトする)とみんなの笑顔が見えます
弁当箱がモチーフ。フタをずらす(シフトする)とみんなの笑顔が見えます。

このロゴの面白いのは、「ロゴの色」や「アルファベットの『O」の文字の中の笑顔」を自分でアレンジ(変更)できること。プロジェクトへの参加意欲を高め、ジブンゴト化できるような工夫だそうです。

さらにチームは、小諸の農家同士が出会い、話し、アイデアを出し合える場が、このプロジェクトを推進させるエンジンになるに違いないと考え、アイデアを出し合うために、「話そう、楽しもう、そして、アイデアはちょこっとずつ」をスローガンに、会議室ではなくカフェでお茶でも飲みながら、ということで「KOMORO AGRI CAFE」を開催しています。

このカフェは、誰が参加してもいいそうです。これを読んでくださっている方も、参加してみませんか? 今、小諸で起きている最先端の農業「SHIFT」を体感できるかもしれません。

さて、次回は、「ORGANIC SHIFT」を特集します。8月24~26日、パシフィコ横浜(桜木町)で開催される「国際オーガニックEXPO2017」 を取材してきます。今度、出会う農家さんは、何をつなごうとしているのでしょうか?

国際オーガニックEXPO2017ホームページ