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「アイデア」と「ロジック」の二刀流でビジネスの未来をデザインする

ビジネスデザイナーが語るブレークスルーの起こし方 №5

  • 波部 篤男

2017/12/19

「アイデア」と「ロジック」の二刀流でビジネスの未来をデザインする

電通内に、顧客企業のイノベーションを創出するための組織「電通ビジネスデザインスクエア」が発足しました。本連載では、メンバーが「電通の考えるビジネスデザインとは何か」をお伝えします。第5回はビジネスデザイナーの波部篤男氏が、アイデアとロジックについて語ります。

【目次】
アイデアは価値を生み出していくための原動力
やるべき理由をつくるのがロジック
「シンプルで分かりやすい」「言葉に頼り過ぎない」「話者に依存しない」
不確実な未来における事業機会を可視化するには
「アイデア」と「ロジック」は分断して考えるものではない
 

アイデアは価値を生み出していくための原動力

電通ビジネスデザインスクエアの波部です。3年ぶりに電通報に記事を書きますが、仕事について書くのは初めてなのでちょっと緊張しています。今回は、「『アイデア』と『ロジック』の二刀流でビジネスの未来をデザインする」というテーマで、主に「ロジック」について述べながら、私たちの普段の仕事との向き合い方について説明します。

「アイデア」と「ロジック」の二刀流というのは、分かるようで分からない抽象的な言葉かもしれません。でも、電通がビジネスデザインに本気で向き合っていく上で、一番大切な概念だと思っています。

その理由は、ビジネスデザインと、電通がこれまで取り組んできたコミュニケーションデザインを比べることによって見えてきます。

まず、二つの共通点として、「アイデア」が核になっていることが挙げられます。コミュニケーションデザインにしろビジネスデザインにしろ、クライアントが私たちに求めているのは、「まだ世の中にない価値をカタチにすること」です。そのためにはアイデアは不可欠ですし、私たちがビジネスデザインの領域においても価値を生み出していくための原動力となっています。

では、違っていることは何か。それは、コミュニケーションデザインにおいては電通がプロである一方で、ビジネスデザインにおいてはクライアントがプロである、ということです。
コミュニケーションデザインにおいては、私たち自身が最終的なアウトプットを作るということもあり、プロとしての確信と責任感を持って提案を行っています。一方、ビジネスデザインにおいては、いくら私たちが新しく革新的なビジネスアイデアを提案したとしても、それを最終的に実現してカタチにしていくのは、クライアントの皆さまです。

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やるべき理由をつくるのがロジック

私自身も電通の経営企画局に所属していた時に提案を受ける立場になったことがありますが、ビジネスのオーナーに対してアイデアを提案する際、絶対に受ける三つの質問があります。

・なぜ、そのアイデアに取り組むのか
・他に、もっといいアイデアはないのか
・そのアイデアで、会社はどう変わるのか

私の個人的な経験から、アイデアだけでこれらの問いに答えることは非常に難しいです。特に、アイデアが新しく革新的であればあるほど、社内各所で賛否両論が生まれ、無限にあふれ出てくる「やらない理由」によって、実現に移らないまま消えていったアイデアを数え切れないほど見てきました。

決して無責任な気持ちでアイデアを提案しているわけではないのですが、受け手からは「言いっ放し」に見えてしまうという、双方にとって不幸せな状況が生まれていることもあります。

そこで重要な役割を果たすのが、ロジックです。クライアントは、「自社にはない何か新しい視点が出てくるだろう」という期待を持って私たち電通ビジネスデザインスクエアに声をかけてくれます。

その期待に応えるためにも、アイデアの提案と承認という一方向の矢印ではなく、お互いの思いが共有され、有意義な議論につながっていく双方向の矢印を、ロジックを用いて生み出していく必要があります。

言い換えると、「やるべきことをカタチにする」のがアイデアだとすれば、「やるべき理由をつくる」のがロジックです。アイデアとロジックを高い次元で融合させることによって、私たち電通ビジネスデザインスクエアは、「言いっ放しの提案」ではなく「パートナーとして一緒に対等の議論ができる提案」を日々目指しています。
 

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「シンプルで分かりやすい」「言葉に頼り過ぎない」「話者に依存しない」

では、ビジネスデザインにおいて求められるロジックとは、どのようなものでしょうか。
私は、以下の三つが大切だと考えています。

①シンプルで分かりやすい
「ロジック」という言葉を聞くと、複雑で堅苦しいイメージをお持ちになる方もいるかもしれません。でも、ビジネスデザインにおけるロジックは、「まだ世の中にないもの」を説明するものです。少しでも複雑になると、考えた人以外は誰も理解ができない呪文のようなものになってしまいます。どれだけ深く細かく考え尽くしたとしても、最終的なアウトプットは、誰もが初見で理解できる、シンプルで美しいものになるべきだと考えています。

②言葉に頼り過ぎない
ビジネスデザインの領域では、非常に多くの関係者と関わることになります。経営企画、事業部、R&Dといった役割の多様性だけでなく、国内・海外といった文化や国籍の多様性も含まれてくると、言葉に頼ったコミュニケーションだけではどうしても誤解が生まれてしまいます。実際、本記事で何度も登場している「アイデア」という言葉に対しても、人によってさまざまな解釈がなされているでしょう。そのような誤解を避けるためにも、ビジネスデザインのロジックでは、視覚的に理解できるチャートや数字を用いることが重要になってきます。

③話者に依存しない
多くの関係者と関わるということは、必ずしも自分が毎回説明できるわけではない、ということも意味しています。言い換えると、話し手の強烈な個性でプロジェクトが進み始めたとしても、ビジネスの実現に向けた長いプロセスの中で冷静になった時に、「なぜこれが良かったんだっけ?」という疑問が生まれてしまうことも少なくありません。そういう事態を避けるためにも、個々の資料を作り上げていくタイミングで、誰が話しても誤解なく伝えられるような設計を考えておくことはとても重要になってきます。実際の業務でも、クライアントが社内で承認を得ていくための資料作りをお手伝いすることが多くなってきています。

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不確実な未来における事業機会を可視化するには

そしてこれらの役割を担うのが、本連載初回に国見昭仁氏が「愛せる未来をつくるためのビジネスデザイン」の中で紹介している、電通ビジネスデザインスクエアの七つのサービスラインの、④Business Framing(起動・成長モデルを作る)、⑤Deep Prototype(プロトタイプで検証する)、⑥Future Analysis(未来を分析する)です。今回は、その中のFuture Analysisについて、簡単に概要を説明します。

Future Analysisは、1960年代にスタンフォード大学によって提唱されたDecision Managementという概念に基づいています。不確実な未来における事業機会を数字(NPV=正味現在価値)によって可視化することで、質の高い意思決定の実現をサポートすることを目的としています。未来のことを数字で予測するため、従来のファイナンスの概念だけでなく、確率などの統計学や、ファシリテーションにおける心理学など、さまざまな概念を統合した手法です。

具体的な特徴を一つ挙げるとすると、「事業のことを誰よりも知っているクライアントからの情報をインプットの全てとする」ことが前提になっています。そのため、プロジェクトの開始時にはクライアントの担当者に時間をもらい、徹底的なヒアリングを重ねます。

それによって我々自身のクライアントのビジネスに対する理解が深まるだけでなく、クライアント自身も自社のビジネスを見つめ直すことになり、関係者間で共通の理解が深まっていきます。そのようなプロセスを重ねながら、目指すべき理想像とビジネスとしての実現性がロジックによってつながり、「何を意思決定すべきか」という答えが見えてきます。

最終的に出てくる結論は非常にシンプルで、誰が見ても分かりやすいものになりますが、結論にたどり着くまでにはさまざまな専門性が求められるため、非常に濃密なプロジェクトになります。そこで電通ビジネスデザインスクエアでは、専門チームを立ち上げることによって日々質の高いアウトプットに向けて研さんを重ねています。

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「アイデア」と「ロジック」は分断して考えるものではない

ここまで、ビジネスデザインにおける「ロジック」について説明してきました。ここで最後にお伝えしたいのは、「アイデア」と「ロジック」は決して分断して考えられるものではなく、個人の頭やチームの中で常に共存しているものだということです。

新しく革新的な「アイデア」があるからこそ「ロジック」はよりシンプルで美しいものになりますし、「ロジック」の力を借りることで「アイデア」はよりとがって洗練されたものになっていきます。
前々回の記事でもご紹介しましたが、電通ビジネスデザインスクエアでは異なった専門性や価値観を持ったメンバーが一体となって仕事に取り組んでいます。

そこから生み出されるアウトプットが、クライアントの皆さまのビジネスがさらに進化・成長していくためのきっかけとなり、その結果として、世の中に次々と新しい価値が生み出されていくことに貢献できるとうれしいですし、私自身もそこに次々とチャレンジしていきたいと考えています。

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