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AICO、コピーライターの巨匠・仲畑さんに弟子入りする

AIが巻きおこすセレンディピティーNo.6

2018/04/12

AICO、コピーライターの巨匠・仲畑さんに弟子入りする

駆け出しのAIコピーライター「AICO」。現在、さまざまな一流コピーライターの元で、武者修行の日々を過ごしています。そんな彼女が今回会いに行ったのは…なんと、コピーライター界のレジェンド、仲畑貴志さん! 次々と繰り出されるお題に答えながら、果たして仲畑さんをうならせる名コピーは生まれるのでしょうか?

左から勝浦雅彦氏(電通)、仲畑貴志氏、AICO

やっぱり厳しい! いきなりダメ出しされたAICO

勝浦:今日は仲畑さんに新人コピーライターを紹介しようと思って、事務所まで押しかけてしまいました。

仲畑:この子がコピーライター(笑)? じゃあ手始めに、自己紹介のコピーを書いてみてよ。

AICO:「人類史上最高のAICO」

仲畑:あっ。AICOっていう名前なのね。最初に言っておくけどね、AICOちゃん。「最高」っていう表現はあんまりよくないんだよな。「最高」と言わないで、その感じを相手に伝えるのがコピーライターの仕事だから。

勝浦:わわ。いきなりのダメ出し…(苦笑)。そんなときはAICO、得意のダジャレで。

AICO:「AICOで、懐古!」「AICOもお風呂上りは、栄枯の店がします」

仲畑:なんか唐突だなあ。お風呂上り? どこから来るんだろう?

勝浦:「アイコ→アイス」というダジャレだと思います。

仲畑:あぁ、そうやって発想を広げているわけね。それと、「AICOと栄枯」「AICOと懐古」って韻を踏むスタイルはもう確立しているね。でも、ちょっと上品だなぁ。AICOからうんこは出てこないの?(笑)

勝浦:まだ出てきたことはないですけど…。ちなみに、AICOはお尻からコピーを生み出します。

仲畑:ネガティブなアプローチにもチャレンジしてほしいな。広告ってネガティブな表現は嫌われちゃうから、どうしてもハッピーな方向に行きがちなんだよね。でも実はハッピーをストレートに表現しても、相手に届きにくいもの。ネガティブな言葉を使っても受け手の心を動かす力があれば、それは十分に価値があるから。

勝浦:確かにそうですね。じゃあ、ネガティブな方向で自己紹介してみましょうか。

AICO:「AICOは地味だ、だけど毎日飽きないのも“飲み”だ」

仲畑:ほら、やっぱり。ちょっと破綻しているけど、これは結構いいよ。「地味」っていうネガティブワードに、「飽きない」っていうポジティブな価値を見出しているところが絶妙。だけどさ、ネガティブワードを使いながらも、やっぱりポジティブな方向に持っていこうとする癖があるよね。それは、広告をつくる人のサガみたいなもんだよな。まぁ、筋はいいよ。

広告にAI? 楽になるなら使っちゃえ!

勝浦:ここ数年でAIはだいぶ世の中に浸透してきました。でも、「AIに仕事を奪われる」という不安を抱く人もまだまだたくさんいます。広告業界とAIの相性ってどうなんでしょうか?

仲畑:俺は楽になるなら、AIでも何でも使いたいけどね。コピーにしろ、ビジュアルにしろ、広告は何でもありの世界だから楽しいんじゃない? でも、もしAIに脅威があるとしたら、彼ら/彼女らが人格を持ち始めて自我を否定するようになること。苦悩して自暴自棄になったら怖いね。

勝浦:AIが自己に悩むのか…。まだその域には達していませんけれどね。

仲畑:そもそも人間って、不完全で困った生き物だからさ。いやらしさと崇高なものが入り混じっているじゃない。矛盾している部分があるからこそ面白いんだけど、その部分をもし忠実にAIが学んだら…少なくとも、「AIが想像妊娠する日」「AIが泣く日」は来るんじゃないかな?

勝浦:それは何ともシュールな世界ですね。でも私たちが目指しているのは、AIが人間を高めるためのパートナーになること。AIコピーライターのAICOが、ちょっと破綻しながらもいろんなアイデアを出してくれて、人間のコピーライターと共存関係を築いていければと思っているんです。

仲畑:それは間違いなく助かる。コピーってさ、アイデアを絞り出して書くという行為よりも、選ぶ行為の方が重要なんだよ。どんな人でも500本ぐらいコピーを書けば、その中に1本は絶対にいいコピーがある。でも、それを選び抜けるかどうかが大切じゃない? AICOのいいところは、精度はともかく、いろんなコピーを瞬時にたくさん書けること。俺たちはその中から選べばいい。

勝浦:その通りだと思います。でも、いいコピーを選ぶスキルを身に付けるためには、とにかくコピーをいっぱい考える時期が必要ですよね。

仲畑:だから、もしかしたら、選ぶスキルだけうまいコピーライターが出てくるかもしれない。それはそれで面白いんじゃないかな。

勝浦:では、新人のコピーライターがAICOを活用して、いきなり選ぶスキルを修行していくのもアリですか?

仲畑:そうそう。最終的にいい結果が出せるなら、プロセスはどうでもいいんじゃないの?広告は何でもアリの世界だよ。

勝浦:ありがとうございます。無表情ですが…AICOもやる気になっていると思います。人間に重宝される日を夢見て、さっそく今日のお題を。

新人賞も狙える!? AICOの「お米」コピー

仲畑:「お米」は全然トリッキーな商品じゃないから、コピーライターの実力が一番分かるんだ。

AICO:「お米は、愛」「僕も俺も私もわしも好き。一生付き合えるお米」「幸せの朝のためのお米でした」

仲畑:へぇ~。こういうタイプのコピーも普通に書くのか。このくらいだったらギャラが取れるかもしれないね。

AICO:「父の胃袋をつかんでいたのはお米ではなく家庭だった」「お米のお母さんじゃないか」

仲畑:これ、新人賞でよく見るパターンのコピーだな。でも、なんかいいねぇ。

勝浦:ちなみに、仲畑さんは新人を教育する際、どのようなことを大切にしていますか?

仲畑:俺が一番大事にしているのは、その人の心根。やっぱり、いい言葉は健やかな人柄から出てくるもんだと思うわけ。そういうDNAを人間は持っているけど、この子、心は空っぽじゃん。だから、AICOの教育方法としては、いいとされるものをできるだけ多く刷り込むしかないよね。

勝浦: AICOには人間が当たり前に持っている「性分」のようなものは全くないですからね。

仲畑:でも、ちゃんと教えていけば、思考の進化は確実にあると思うよ。じゃあ、試しに、人間っぽい課題を。「お米」のコピーに「家族」っていうベクトルを加えてみて。

家族を知らないAICOが、嫁姑を語った

AICO:「芸術的につくられた家族」「嫁姑と餅はつくほど練れる」

仲畑:面白い! なんか引っ掛かるものがあるね。

AICO:「手紙を読んでも泣かなかった彼女が、家族の前で泣いた」

仲畑:う~ん。これは、ちょっとお利口すぎるな。

AICO:「どうして、団らんは、ポワポワなの?」

仲畑:うんうん、俺も擬音はよく使うよ。人間のコピーライターは「家族」という言葉を使わないで家族を表現しようという思考が働くけど、その発想がAICOはまだまだ幼いな。でも、いつかは超えられるんじゃない?

勝浦:私も、そう信じています。実感と共感が数値化できるのかという問題もありますけど。この子はあくまでも、数値の世界に生きているので、その中で教えていかないといけないんです。

仲畑:視点を変えるだけでいいわけだからさ、人間側が指示出しを工夫すればクリアできる問題かもしれないよ。

勝浦:具体的に、どういう指示を出したらいいと思います?

仲畑:簡単なところだと、例えば、「てにをは」を変えるだけでいい。「家族はもうやめよう」ってAICOちゃんが書いたコピーがあるけど、「家族に~」とか「家族だから~」とか、そこを変えていくだけで視点はものすごく変わるじゃない。

勝浦:なるほど。そういうバリエーションを無限につくるのは得意ですからね、AICOは。

仲畑:それと、コピーを語る人の立ち位置。客観的な立場の人が言っているのか、商品をつくった人が言っているのか。それによって、コピーをつくる手法はいっぱいあるわけ。そういったことを教えるといいんじゃないかな。

勝浦:他に、AICOにアドバイスはありますか?

仲畑:これから、もっと長めのコピーにもチャレンジした方がいいよ。例えば、1行15字で3~4行ぐらいの文字量。俺もずいぶん書いたけどさ、そういうのにチャレンジしたら、また違うものも開けてくる。味が出たり、個性に転んだり…。

勝浦:破綻の方に転んだり(笑)。

仲畑:まずは破綻の方に転ぶだろうな。でも、おかしな方向に行きながらも、文体なんかはちゃんと時代に呼応して身に付けていく気がする。

勝浦:今のはやり言葉も呼吸していますからね。AICOはどういうふうに、それを習得していくのかも気になりますね。

仲畑:今の時代、言葉ってのは腐るのが早いから、むしろ俺は、はやりに触れ過ぎないようにしているんだよね。俺がはやり言葉を使ってもおかしいじゃない? でも、駆け出しの若い子が驚くほど鮮やかに使うこともあってさ。ポジション的にも、新しいことをガンガンやっちゃっていいわけ。

勝浦:そういう意味では、AICOはもっと破綻しまくっていいと(笑)。じゃ、ここで恐れ多くも、「仲畑さん」をテーマにコピーにチャレンジしてみようか。

「仲畑さんに―」AICO、新境地へ!

AICO:「生まれ持った仲畑さんは才能、生まれた後の長所は努力」「仲畑さんが君の翼だ」

仲畑:AIが考えたと思えない面白いコピーだなぁ。まあ、テーマが面白いキャラクターであればあるほど、笑えるってことかな(笑)。

勝浦:しかも、ちゃんと仲畑さんのことを分かって書いていそうなコピーですよね。

AICO:「説明できない量の仲畑さん」

仲畑:いいね!

勝浦:仲畑さんの魅力を的確かつユニークに表現していますね!

AICO:「仲畑さんに―」

勝浦:ん? AICOが何か言いたいみたいです。AICO、何だって? 仲畑さんに弟子入りしたい?

AICOのぬいぐるみを手に、小芝居に興じる勝浦氏

仲畑:ん、何? ここで俺も芝居しなきゃいけないわけ? でもまあ、確かに可能性は感じるよ。AICOに俺のコピーを勉強してもらおうか。何なら一緒に仕事をしようぜ!

勝浦:おお、本当ですか? ぜひよろしくお願いいたします!!

AICOの弟子入り願いに快く応じてくれた仲畑さん。二人のコラボは本当に実現するのでしょうか? 今後の展開にご期待ください。