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カスタマージャーニーで「チャンスポイント」を発見する

人に寄り添える「People Driven Marketing」のすすめ №4

  • 矢島 貴直

2018/04/24

カスタマージャーニーで「チャンスポイント」を発見する

PDM STORY A子さん
スポーツ用品店勤務・A子さんのお悩みとは?(イラスト:金井沙樹)

ピープル・ドリブン・マーケティング(PDM)の考え方を紹介する本連載。今回のテーマはJourney(カスタマージャーニー)、つまりユーザーの購入に至るまでの心理・行動の流れです。

PDMロゴ

マーケターが考える「理想のカスタマージャーニー」と、現実のユーザー行動や心理の間には往々にして差があるもの。しかし、そのギャップ部分にこそチャンスポイントがあるというのが今回のお話です。


<目次>
~A子さんの物語・Journey編~
顧客タイプによって来店を促すためのコンタクトポイントが異なる
 ・週末にジョギングを楽しむマラソン好きな社会人の場合
 ・家族でアウトドアを楽しみたいお父さんの場合
理想のジャーニーと現実のジャーニーのギャップ部分にチャンスポイントがある
A子さん、チャンスポイントの見つけ方に目覚める

~A子さんの物語・Journey編~

大型スポーツ用品店「スポーツピープル」に勤務するA子さんは、来店客・EC客の行動を調査・分析し、お客さまにもいろんなタイプがいることを具体的な数字と共に把握しました(※第2回「People」参照)。

例えば
「週末に趣味のマラソンシューズを探しに来る30~50代の社会人」
「家族とアウトドアを楽しみたいと思っているお父さんとその家族」

などです。

その前提を踏まえてお店への集客プランを考え始めたA子さん。しかし単に「いろんなタイプのお客さまがいる」と分かっただけでは、結局従来通りテレビCMとチラシに頼ったコミュニケーションになってしまいそうです。

「お客さまのタイプ別にそれぞれ寄り添った集客施策って、どうやって考えればいいの?」

顧客タイプによって来店を促すためのコンタクトポイントが違う

電通第2統合ソリューション局の矢島です。今回はプロモーション領域を中心とした統合プランニングに従事してきた私が、PDMにおけるカスタマージャーニーマップの作成・使い方について説明します。

生活者の「購買に至るまでの心理・行動」を1枚の時系列フローにまとめる「カスタマージャーニーマップ」作成の重要性はよく語られるところです。しかし単にマップを作成するだけは、その生活者に対するマーケティング施策は発見できません。

豊富なユーザーデータをベースに人にフォーカスするPDMでは、顧客をいくつかのタイプにセグメンテーションしたり、一人の顧客(n=1)を想定して、それぞれにカスタマージャーニーマップをつくります。

そして、それぞれの顧客体験プロセスを時系列で見ていくことで、各セグメントにおいてボトルネックとなっている潜在的な課題点=チャンスポイントを可視化し、最も効果的なアプローチを設計します。

実行動データやアンケートに基づいて作成した、カスタマージャーニーマップの例
実行動データやアンケートに基づいて作成した、カスタマージャーニーマップの例

ここでは、タイプ別のアプローチ例を二つ見てみましょう。

週末にジョギングを楽しむマラソン好きな社会人の場合

来店者アンケートなどをデータ解析した結果、週末ジョガーな社会人は、平日は仕事で頭がいっぱい。ランニングシューズの情報にまで頭が回りません。休日に見ていたマラソン中継で「スポーツピープル」のテレビCMが流れても、すぐに来店行動へは結び付かないようです。彼らにとって自分のシューズに最も関心が高まる瞬間は、まさにジョギングしているそのタイミングだけかもしれません。

【アプローチ例】
店舗に近い場所でジョギングしている顧客に対し、まさに走り終わって休憩しているタイミングで、「今日の調子はいかがでしたか?もし走りに不満を感じたら、スポーツピープルへニューモデルを見に来ませんか」というメッセージが届いたらどうでしょうか?

家族でアウトドアを楽しみたいお父さんの場合

アウトドア好きのお父さんを対象に実施したグループインタビューでは、以下のような構図が浮かび上がってきました。

子どもが大きくなり、お父さんはそろそろ家族でのアウトドアデビューをもくろみますが、アウトドア経験のない家族はいまいち乗り気ではありません。「スポーツピープル」のテレビCMを見てもなかなか来店できずにいるようです。

【アプローチ例】
アウトドア情報サイトを見ているお父さんに「この夏、アウトドアデビューをしたいご家族さまにスポーツピープルでは店頭キャンプ体験をご用意。ご家族のあらゆる疑問にキャンプマスターのスタッフがお答えします!」というバナー広告が表示されたらどうでしょうか?

またその週末、家族で買い物に向かう車中、ラジオから「ただいまスポーツピープルでは仲良し家族のアウトドアデビューを応援する店頭キャンプ体験実施中!」というCMが流れてきたら、ちょっと立ち寄ってみよう、とお父さんと家族の気持ちを後押しできるのではないでしょうか?

このように、セグメントごとのインサイトを捉え、「それぞれのお客さまがどのような気持ちで、どのような行動を取るのか」を把握し、お客さま視点のコミュニケーションプランを構築することが重要なのです。

理想のジャーニーと現実のジャーニーのギャップ部分にチャンスポイントがある

今回、A子さんはそれぞれの顧客に対して「いつ、どこで、どのようなメッセージを届けるのがよいのか」について悩んでいました。それぞれスポーツ用品店に来る目的やきっかけ、店に来るまでの行動も全く異なることが予想できたからです。

潜在顧客に初来店してもらうための、もしくは既存顧客に継続来店してもらうための施策は、実際のところどうやって探ればいいのでしょうか。その顧客を動かすのは広告メッセージなのか、店頭体験なのか、あるいはそれ以外の別の要素なのか?

PDMでの打ち手は下記のようなものです。

  • セグメント別に「理想」と「現実」のカスタマージャーニーマップを作成して、比較

まず、前回記事で見たような実行動データやアンケートを基に、「それぞれのセグメントでどのようなジャーニーをたどるのか」を時系列で可視化します。

そして、企業側が考える「理想のロイヤル顧客のジャーニー」と「現実の離脱顧客のジャーニー」のギャップを浮き彫りにします。

このギャップ部分、つまり顧客が離脱してしまうボトルネックとなっている部分に、コンバージョン獲得のための「チャンスポイント」を発見するのです。

例えば、A子さんにとっての「理想」は、他店には行かず定期的に来店するロイヤル顧客の購買行動です。一方で「現実」は、他店を併用しているスイッチ顧客の購買行動になるでしょうか。

「マラソン好き社会人」を例に、理想と現実のカスタマージャーニーを並べて比較し、意識・行動の違い(ギャップ)に着目してみました。

現実(離脱顧客)と理想(ロイヤル顧客)のカスタマージャーニーを比較し、課題顧客にとってボトルネックとなっている箇所を可視化する
時系列のマップを作成することで、「どこで離脱しているのか」を可視化する
顧客体験プロセスを時系列のマップとして比較することで、「どこで離脱しているのか」を可視化する

こうして各セグメントごとにチャンスポイントを発見できれば、「チャンスポイントを中心に据えたコミュニケーションシナリオ」の作成が可能となります。

このシナリオこそが、ブランド体験やコミュニケーション設計にまつわるあらゆる関係者に共有されるべき「お客さま視点のよりどころ」です。メディアプランニングにせよ、クリエーティブにせよ、この「セグメントごとのシナリオ」に沿う形でつくっていくのです。

PDMではさらに「実際にそのシナリオ通りに行動してもらえたか?」まで可視化してPDCAサイクルを回しますが、そのあたりの話はまた別の回で。

なお、今回A子さんは自力で分析まで行いましたが、電通とパートナー企業によるオンライン・オフラインの豊富なコンタクトポイントを活用すれば、より精度の高いカスタマージャーニーマップを作成できます。興味のある方はぜひご相談ください。


A子さん、チャンスポイントの見つけ方に目覚める

A子さんは店長やお店のスタッフにも手伝ってもらって「お客さまのタイプ別カスタマージャーニーマップ」を作成し、理想と現実のジャーニーを比較しました。すると、各タイプのお客さまが、それぞれ普段どのようにスポーツに取り組み、何を求めて来店するのかが見えてきました。

  • マラソン好きな社会人のお客さまの場合

このタイプのお客さまの多くは、店への要望として、「ネットで下調べしたシューズが自分の足に合うものかどうかを、適切にアドバイスしてほしい」と考えていることが分かりました。

また、最近毎月来てくれているロイヤル顧客に話を聞くと、「一度、店舗主催のランニングイベントに参加してスタッフと顔なじみになった。信頼感がある」との回答が複数得られました。

「つまり、スタッフからのアドバイスやイベント参加の有無が、チャンスポイントなのかも」

A子さんは、社会人のお客さまが来店する週末に、店舗スタッフによるランニングイベントと、その場でのニューモデルの比較試し履きコーナーを設ける企画を立てました。こうした施策を続けていけば、「マラソン好きな社会人」のお客さまたちのジャーニーに変化が生じて、現実から理想に転じてくれるかもしれません。

そしてA子さんは、今回見つけ出した「チャンスポイント」を軸に、広告などのコミュニケーション戦略を練り始めました。(続く)


PDM