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お題を疑うチカラ

ろーかる・ぐるぐる №139

  • 山田 壮夫

2018/08/30

お題を疑うチカラ

秋田の知り合いから頂戴した「自家製の小茄子漬」をポリポリかじりながら、ようやく明治学院大学春学期期末試験の採点をし終わりました。

実は今回、学生さんに問題を発表してから試験まで、一カ月近くの猶予を与えました。その間、いろいろ調べたり、相談したり、悩みまくったハズ。履修確定後の、学期を通じたクラスの平均出席率は88.5%。A3用紙に表裏、びっしり記述された解答用紙109枚。一枚一枚、学生さんの顔を思い浮かべつつ拝見しました。

今年の問題は「新しい『港区のお土産』を提案してください」というもの。実はこれ、例年より難しくしてあります。ポイントは、東京土産や東京タワーのお土産はあっても、「港区の土産」なんて存在しないこと。そもそも「港区の土産」って何なのか?何のために必要なのか?誰が求めているのか?そもそもの出発点から悩まなければならない構造になっています。

彼らが世の中で現実に出合う「問題」の多くは、実はこういったツッコミどころ満載だったりするにもかかわらず、大学の試験はたいてい、そのあたりをきちんと整理した純粋培養だったりするので、今年はあえて彼らに「お題を疑うチカラ」も求めたのです。

例えば湯浅さんは、それを「行政がビジョンを実現するための手段」と位置付けました。

港区には「訪れたくなるまち、憧れの港区 ~人、まち、文化の交流を生み出す、価値ある都市観光の創造~」という観光振興ビジョンがあります。(出典:港区ホームページ)そこで世界中から港区を訪れる数多くの外国人観光客に、各国地元の特産品を持ってきてもらい、交換し合うシステムをつくろうという提案をしてくれたのです。

大半の学生さんがスイーツのような「モノ」や、バスツアーのような体験型のイベントを通じての「土産話」を発想していた中で、湯浅さんの世界中の土産が行き交う「仕組み」というアイデアは目立っていました。それも肝心要の「港区の土産」を明確に定義できたからこそだと思います。

一方、三村さんは「港区」を「夜遊びの街」と定義しました。「おいしい謝罪」というコンセプトで設計されたのは、六本木や赤坂でついつい遊び過ぎた男性が、奥さま方のご機嫌を取るためのマカロン。その一つ一つに「ごめんなさい」「今度ディナー行きましょう」などメッセージが入るという企画でした。

ヘボン先生も、びっくり!?

「ふつうの試験だと、他人と答えが同じだとうれしいでしょ?でもね、この講義ではどれだけ意識的に視点をずらして、他人と違う着想をできるかが勝負。周りの人と同じ解答にならないように頑張ってね」と繰り返し伝えていましたが、109人もいれば発想がダブることもあります。

例えば「港区在住で、お金持ちのおじさんにグルメをおごってもらったり、ラグジュアリーなデートを楽しむ、まるでセレブのような女子」を意味する「港区女子」には予想通り(笑)、集中しました。そしてその大半が「そんな生活に憧れる地方の女子向けに、きらびやかさを演出するコスメ品」といったような、比較的無難な企画に落ち着きがちでした。

もし、その女性の背後にいる「港区おじさん」(なんて言い方があるのか分かりませんが)にまで思いを至らしめることができれば、ひと味違ったアイデアが生まれたと思うのですが。

石関さんの「イヤミな野菜」というコンセプトは、見た瞬間笑ってしまいました。「六本木育ちの白菜」とか「山手線の外側には出たことがないジャガイモ」とか、その目指すところが瞬時に想像できたからです。

「都会の真ん中にある港区は派手なものが多いから、逆に地味なものを」と考えたようですが、まさにこのような(いい意味での)「へそ曲がり」を求め続けた半年間でした。

「常識を覆すための思考法」は広告会社に限らず、あらゆる業界で必要な方法論だと信じています。先日も、一昨年受講した卒業生から連絡をもらい、一緒にご飯を食べました。今年の学生さんとも、またどこかで会えるとうれしいなぁ。

どうぞ、召し上がれ!