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メディア行動データ × ソーシャル・シークエンス分析No.4

「生活が不規則」な8メディアライフスタイル

2018/10/02

このコラムでは、電通メディアイノベーションラボが、ビデオリサーチのひと研究所と共同で実施した現代のメディアライフスタイル研究の結果を紹介しています。これまで、3回に分けて、7グループ・30のメディアライフスタイルについて説明してきました。今回は生活が不規則な二つのグループ「⑥外泊・徹夜族」と「⑦リズム不規則族」に含まれる8のメディアライフスタイルについて解説します。

最初に、今回使われている言葉については少し説明が必要です。まず、「生活が不規則」という言葉からはつい不健全なイメージを抱きがちですが、今回はそうではなく、朝起きて昼間に活動し夜に睡眠を取るという典型的な日常生活の流れに当てはまらない日が1週間に1日以上ある場合をそう呼んでいるにすぎません。

また「外泊」といっても、必ずしも自宅外で宿泊し睡眠を取ることを指しているわけではありませんし、「徹夜」といっても、元々夜間に想定されていた活動に予定通り従事している場合も含まれています。

今回の二つのグループ「⑥外泊・徹夜族」と「⑦リズム不規則族」は、そういう意味ではれっきとしたライフスタイルの「型」を持つ人々を集めてきたもので、合わせると構成比がほぼ1割(10.1%)に上ります。過去2回にわたりご紹介してきたメディアライフスタイルのどれかに属する9割の方々から見ると、家族や知り合いの10人に1人程度はそうしたスタイルの人がいるかもしれないと言われたら、意外に大きなシェアと感じられるのではないかと思います。

その中で、典型的な生活リズムに収まらない日が週に1日から数日あるのが「⑥外泊・徹夜族」であり、もう一つの「⑦リズム不規則族」は、非典型的な生活リズムが1週間を通じて続いているという違いがあります。

ではまず「⑥外泊・徹夜族」からご紹介していきましょう。

「外泊・徹夜族」の4スタイル

「外泊・徹夜族」の四つのスタイルは、1週間のうち何日か夜に自宅に帰らない日がある点で共通していますが、スタイルごとにその曜日が異なっています。

「外泊・徹夜族」は働く人々、特に男性が主な担い手になっています。この点では、前回ご紹介した日中の外出率が高いグループと同じです。

この中で、都会暮らしの若い独身サラリーマンの方々にとっては「24.外泊徹夜型(金・土曜夜)」は理解しやすいかもしれません。週末の金曜日には仕事の同僚、土曜日は学生時代からの仲間と夜通し飲み明かし、朝方になって始発の電車で自宅に戻ってくる、といった生活を送る方は、このスタイルに当てはまる場合が多いと考えられます(もちろん、金曜日・土曜日に夜勤が入っている勤労者もこのタイプに分類される場合が多くなりますが)。

今回は、目先を少し変えて「23.外泊・徹夜型(日曜夜)」の人々の1週間のメディアライフスタイルを見てみましょう。

「23.外泊・徹夜型(日曜夜)」に見いだされる、交代(シフト)制の生活

 

「23.外泊・徹夜型(日曜夜)」のスタイルを持つ人々の特徴は、グラフの右端にある日曜日の夜間に通常表れる濃いグレーの山(睡眠)が3割程度の人にしか表れていない、つまり自宅外で起きて活動している方が7割も含まれていることです。

他方、グラフの左端の月曜日の朝5時を見ると、グレーの領域がきちんと表れています。

つまり、このスタイルは毎週必ず日曜日の夜に自宅外で活動しているということではなく「調査期間の週に限っては」最後の日曜日に自宅外にいたということが分かります。また、このスタイルでは、日曜日の夜に加えて、少なからぬ人が水曜日や土曜日の夜にも外出していることが分かります。

メディア接触の特徴としては、在宅している時間帯には、テレビを中心にPCやモバイルなど多様なメディアや機器に接触していますし、水曜日や日曜日の夜には、外出先でもテレビを視聴する環境があることが分かります。

興味深いのは、在宅時間の中で赤く塗られた部分(テレビのタイムシフト視聴)が比較的目立っていることです。おそらく、毎週同じ曜日に自宅で休めるわけではない不規則な生活を送る中でも、気に入ったレギュラー番組を見逃さないよう録りだめておく習慣が身についているのだと考えられます。

このスタイルの中から一人を取り上げ、1週間のメディアライフスタイルを見てみましょう。

ここに示したのは、販売・サービス職に従事する27歳の女性の1週間のメディアライフスタイルです。

月曜日には13時頃から2時間ほどの昼寝をしていますし、火曜日の夜から水曜日の午後までにかけて長い睡眠時間があります。そのあと、16時前に自宅を出て次に帰宅するのが翌日の朝10時前。そのあと午後から夕方にかけてと、夜に睡眠があります。日曜日には午前中から昼過ぎまでの睡眠に続き、翌月曜日までの外出が見られます。

この方は、働いていて週に2回ほどは夜中から午前まで外出先で過ごすわけですから、交代制で働く看護師などである可能性が高いと考えられます。

この人の場合、若い世代の特徴を反映し、自宅内外でモバイル利用時間帯が多いことが確認できます。テレビ視聴はリアルタイム視聴に限られており、夜のゴールデンタイムに在宅している曜日にはテレビを専念視聴しています。このように、テレビ放送には不規則な生活時間の影響を受けつつも逆に番組編成を通じて生活時間にリズムをつくる力があるともいえそうです。

「リズム不規則族」の4スタイル

ここまでメディアライフスタイルの異なる七つのグループを3回に分けて紹介してきましたが、最後に「⑦リズム不規則族」の特徴についてみて見ましょう。

「リズム不規則族」の四つのスタイルは、それぞれ異なる不規則ぶりを示しています。この中で今回、後ほど詳しく紹介するのは「30. 夜更かし型」ですが、それ以外の三つのスタイルも際立った特徴を示していますのでここでそれぞれ少しご紹介します。

「27.終日在宅・メディア漬け型」は1週間を通じて外出はほとんどせず自宅で過ごしています。圧倒的に男性に多く、学生や専業主婦ではない無職が32.4%と多い他、専門職や自由業についている人が全体の2割を超え(21.6%)、30スタイルの中で最も多くなりました。在宅時間のほとんどを特定のメディア(PCネット利用が圧倒的に多いですが、その他テレビのリアルタイム専念視聴やラジオの専念視聴など)と共に過ごします。特にPCでのネット動画視聴が1日当たり99.0分と、全スタイルの中で圧倒的な時間の長さです。

「28.在宅中心・不規則外出型」は、朝は8時台まで睡眠を取った後、午前中を中心に在宅で過ごすことが多い人たちです。夜は多くの人が午前2時前まで起きています。平均年齢が若く女性の割合も多いタイプで、主婦(24.0%)や大学生(19.8%)が多くを占めます。メディア利用の特徴としては、主に日中のゲーム機やPCゲームの利用を中心に1日当たり平均78分(モバイルゲームを含む)をゲームをして過ごしていることが挙げられます。

「29.昼夜逆転型」は、1週間を通じて文字通り昼夜が逆転した生活を送っている点が際立つ人々です。全30スタイル中、男性の割合が最も高く88.5%が男性です。職業構成を見ると警備や深夜の土木工事などの労務・作業職に従事している人が57.7%と、これも全30スタイルの中で最多です。

さて、「30.夜更かし型」はこれら3スタイルとどう異なる「不規則」型といえるのでしょうか。特徴を見てみましょう。

「30.夜更かし型」の主な担い手は夜間営業中心の販売・サービス職

 

「30.夜更かし型」は、平日は、午前0時の段階でも4割以上が宅外にいて、朝5時でも1割前後が外出し、午前中を中心に睡眠を取る生活を送っています。

平均年齢は若く(35.6歳)、女性比率も38.6%と少なくないタイプです。特筆すべきは「販売・サービス職」従事者の割合の高さで、全30スタイルの中で最多の36.8%に上っています。つまり、夜間営業している飲食店など、都会型に多いライフスタイルを送る人々がこのスタイルに該当しているのだと考えられます。

このスタイルの人々のメディア接触の特徴を挙げると、モバイルへの依存度が高く、特に1日当たりの宅内でのモバイルウェブ・メール(71.2分)とモバイルゲーム(35.6分)の利用が、全30スタイルの中でそれぞれ最も長くなっています。

このスタイルの中から一人を取り上げ、1週間のメディアライフスタイルを見てみましょう。

ここに示したのは、販売・サービス職に従事する23歳の女性の1週間のメディアライフスタイルです。

平日・休日問わず、基本的に自宅外での活動時間帯は夕方17時以降となっており、仕事が深夜に及んでいると想像できます。生活は完全な昼夜逆転とまではなっていませんが、朝5時からお昼すぎまでが睡眠時間になっています。

テレビの専念視聴がところどころに見られるものの、宅内でのモバイルの利用時間帯が外出前と帰宅後にかなり長く表れていることから、メディアライフスタイルのリズムはほぼモバイル上での情報収集、コミュニケーションやエンターテインメントにより形づくられていることが分かります。

非典型ライフスタイルの将来に注目

今回は「生活が不規則」な二つのグループについて詳しく紹介してきました。こうした非典型層の生活を送る人々の間にも、テレビとモバイルなどを身近な情報源と位置づけるメディアライフスタイルが浸透していることが確認できました。

今回の二つのグループは、1980年代頃以降に都市生活やメディア接触の24時間化が進んだ影響を受けて、構成比が大きく伸びてきた層と考えられます。現在、関東居住者(東京駅50キロ圏)で1割というシェアは、他の大都市ではどうなのかという点や、将来的に拡大するのか逆に高齢化の進展や働き方改革などの政策や制度の導入や価値観の変化により、減少するのか、という点が注目されます。

ここまでで、今回得られた7グループ・30メディアライフスタイルについての詳細なご紹介は終わりです。

次回が最終となる連載第5回では、今回の成果を踏まえた振り返りと今後の展望についてまとめたいと思います。