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メディアライフスタイルプロジェクトの展望

メディア行動データ × ソーシャル・シークエンス分析 №5

  • 美和 晃

2018/10/16

メディアライフスタイルプロジェクトの展望

電通メディアイノベーションラボがビデオリサーチのひと研究所と共に取り組んだメディアライフスタイル研究プロジェクトの紹介は、今回が最終回です。

研究の背景には、近年の生活パターンの多様化とデジタルメディアの増加により、人とメディアの関わり方の全体像を俯瞰して描くことが難しくなっていることがありました。

そこで私たちは、世の中に現在どのようなメディアライフスタイルがあるのか輪郭をはっきりと描き、それぞれのスタイルが世の中のどのくらいずつを占めるのかしっかりと把握することをプロジェクトの課題としました。

第1回で触れた通り、ビデオリサーチが実施する生活・メディア行動調査「MCR/ex」より、4971人分の672時点(7曜日×15分間隔)の行動データを「ソーシャル・シークエンス分析」という解析手法を用いて分析しました。

そこから抽出されたのが、7グループ・30メディアライフスタイルです。

メディアライフスタイルの分かれ方を決定づける要因

7グループ・30メディアライフスタイルの分類結果を振り返っておきます。

それぞれのスタイルへの分かれ方が決まる上で最も影響力を持っていた要因は、起床・外出・帰宅・就寝などの基本的な生活リズムでした。今回の七つのグループも、大きく捉えると在宅時間帯の多少や生活リズムにより三つの基本的なパターンに分けることができました。

7グループ・メディアライフスタイルの構成

詳しくは、以下の記事をご覧ください。

●日中の在宅率が高いグループ
●日中の外出率が高いグループ
●生活が不規則なグループ

次に影響力が大きかったのが、それぞれの生活パターンの中でいつどんなメディアへの接触が行われているかという点でした。これにより「メディアライフスタイル」といえるものへさらに分かれていることが判明しました。

起床・外出・帰宅・就寝の時刻が同じような生活リズムでも、接触しているメディアの組み合わせが異なれば異なるメディアライフスタイルとし、30のメディアライフスタイルに分類しました。

生活リズムに埋め込まれた各メディアの役割

今回は生活とメディアに関するデータを一気に統計分析しました。なぜなら、人々のメディア行動は生活リズムと表裏一体の関係を保ちながら役割を果たしていると考えられるからです。

そして、この考えに基づき生活行動とメディア行動を同時に分析してみることにより、さまざまなスタイルの中で各メディアが果たしている役割や、なぜそのスタイルで特定のメディア接触が多くなるのかを理解しやすくなります。

例えば、今回の分析で興味深かったのは、次のような点です。

●テレビのタイムシフト視聴の二つの役割
在宅時間帯が多くテレビのリアルタイム視聴時間帯が多いスタイルでは、テレビ番組をもっと見るためにタイムシフト視聴していることがうかがえた。

他方、平日は忙しくてリアルタイムのテレビ視聴時間を確保できないため帰宅後の時間帯や土日の日中に余暇充足の意味合いで優先的にタイムシフト視聴しているスタイルもあった。

●テレビとネット動画の帰宅後のリラックス時間への浸透力
典型的なサラリーマン型生活の中には、夜の帰宅後の時間帯におけるテレビのリアルタイム視聴が根強く浸透している。

他方、リラックス時間帯にネット動画を視聴するスタイルの人々も出現した(特に、このスタイルでは就寝直前時間帯のモバイル動画の浸透力が高い)。ネット動画でも「モバイルだから外出先で」というわけではなく帰宅後の余裕のある時間帯こそ視聴されやすく、テレビと共通の役割を持っている。

●不規則(非典型的)な生活を送る人々におけるモバイルの役割の大きさ
不規則な生活を送るグループの中には、自宅や外出先という意味での場所に拘束されないコミュニケーション空間へのニーズに基づくモバイル利用が特に浸透しているスタイルがあった。

また、メディア接触行動はこのように基本的な生活リズムに表裏一体となり埋め込まれているものですが、最後の例で見たモバイル利用や、テレビのリアルタイム視聴などのように、メディア接触が生活そのものにリズムを与えたり、リズムを形づくるのに重要な役割を果たしている場合もあることが分かりました。

「ドライ」な分析から人間と時間との関わりの実像を描く

このように、生活とメディア接触を組み合わせた15分刻みの行動データを同時に分析することで「こういう人いるよね」とリアルに感じられるメディアライフスタイルが表現されました。

データを「ドライ」に統計処理することを通じて、1日や1週間の「時間の過ごし方」という人間的な実像が丸ごと浮かび上がってきました。

これは、ビデオリサーチのMCR/exが持つ「時間帯」×「場所」×「行動」という立体的な情報構造と、ソーシャル・シークエンス分析が持つ、一人一人の行動の順序を損なわずに集約できる優れた特徴を組み合わせることにより初めて実現されたものといえるでしょう。

ソーシャル・シークエンス分析の展望

ソーシャル・シークエンス分析は時間や空間内の配列に順序のあるデータであれば応用できる汎用性のある手法であり応用範囲も広いと考えられます。

例えば、今回利用した日記式の調査データだけでなく、テレビ・PC・モバイルなどの機器の利用・視聴ログデータに基づきメディアライフスタイルを分析することもできるかもしれません。

また、多数のチェーン店を構えている小売業であれば、商品陳列のパターンを店ごとに変えてみたときの売り上げの違いを分析したり、来店客ごとの店内回遊順序パターンによる売り上げの違いを分析したりするなどのやり方が考えられます。当然、オンラインの回遊行動データからも同じような分析ができるかもしれません。

今後、共同チームでは、まずはメディアライフスタイル研究をさらに進化・発展させていきたいと考えています。今回の成果を基に、同一地区(ここでは東京)の複数年の調査データを分析することでメディアライフスタイルがどのように変化してきたのか可視化することや、より注目したい詳細な行動データ(たとえば、テレビを含む、さまざまな機器での動画視聴)に焦点を当てた分析を行うプロジェクトにも挑戦したいと考えています。

今後の成果にもぜひご注目いただきたいと思います。