「偏愛ストラテジー」~ファンの心に火をつける6つのスイッチ~No.5
ファンがファンを増やす「拡散スイッチ」
2018/12/19
こんにちは。この「偏愛ストラテジー」コラムの最終回です。このコラムでは、私自身のファン経験をもとに、人が商品やサービスのファンになるまでの道筋を「心に火がつく6つのスイッチ」という形でお伝えしています。
ブランド、商品やサービス、コンテンツなどを生み出す送り手のみなさんが、受け手であるファンの偏愛を起こすために準備しておくべきスイッチとして、
1.接点をつくる「よりそいスイッチ」
2.関係を深める「特別扱いスイッチ」
3.偏愛を維持する「言霊スイッチ」
4.脱落を防ぐ「仲間スイッチ」
5.自走してもらう「自分ごとスイッチ」
と、ここまで5つを紹介してきました。
最後は、ファンを増やすための「拡散スイッチ」です。
ファンが増えていく理想の状況とは?
正直に言いましょう。ファンは維持するのも大変ですが、やはり獲得するのが大変です。獲得にはコストも手間もかかります。それを避けては通れません。そこで、できるだけ「ファンが増えていきやすい状況」をつくるのがポイントになります。
そのために大切なのは、すでにいるファンの偏愛のチカラを借りること。つまり、ファンを起点に話題を拡散させ、次のファン予備群に届けるような仕掛けを考えることです。
こうすることで、ファンがファンを呼ぶという理想の状況が生まれるのです。
ファンがファンを呼ぶための2ステップ
ファンがファンを呼ぶような状況をつくるには二つのステップがあります。まずは、ファンに参加してもらうこと、次にその楽しさや喜びを拡散してもらうことです。
・ステップ1 ファンに参加してもらう
偏愛しているとはいえ、普段のファンは商品を買ったり、サービスを受けたりしているだけの受け身の状態です。モノ消費よりコト消費と言われる昨今、偏愛を発揮できるファンの消費スタイルは、ただ「買う」よりも、いかに「満足度の高い体験ができるか」という、コト消費を考えることが重要になります。
とはいえ、単純に体験型にするだけでは、モノ消費が無形になっただけにすぎません。ポイントは「能動的参加感」を抱いてもらうことです。受け手自らが能動的に動き、自分のための出来事だと感じて充実感を得られること。このような消費のスタイルをつくるのが最初のステップです。
ちなみに、能動的参加には以下のような種類があるので参考にしていただければと思います。
・ステップ2 楽しさや喜びを拡散してもらう
参加した後、ファン予備群に伝えるにふさわしいと思われるかどうかが重要です。
ボタン一つで参加できるSNSのキャンペーンでも、そこに楽しさがあり「参加してよかった」と感じられれば、「友達に教えてもいいな」と思ってもらえます。
ちなみに、SNSやデジタルプラットフォームを使うことで気軽に参加してもらうのが今のトレンドです。ファンに会員組織へ入ってもらうよりもSNSアカウントをフォローしてもらう方が(普段からコミュニケーションを取っていれば)ハードルは低いといえます。
拡散の効果を高めるために、送り手ができることは?
このように、ファンは楽しかった参加経験を口コミやSNSでの投稿などで拡散してくれますが、送り手はそれを漫然と待つのではなく、ファンが拡散しやすい状況を用意しましょう。
拡散とは、送り手が発信した情報にファンが反応することにより、ファン予備群に届く状況です。
①送り手が情報を発信し、②ファンがその情報を元に行動を起こしたり、感想をコメントしたり、とさまざまな反応をして拡散します。この拡散がうまくいくと、今度は③ファン予備軍が反応し、1次情報である発信元へアクセスします。
例えば、友達がきれいなイルミネーションの写真を投稿していたら、自分も見たいなと思って、「いつまで開催しているのだろう」と検索します。そしてそのイベントのオフィシャルページにたどり着きます。これが新たなファンをつかまえる絶好の機会なのです。
この循環をうまくいかせるために、送り手はファンが友達に拡散しやすいよう、伝えやすいネタを準備しておくことが重要です。また拡散された後のことを意識して、イメージを統一しておくことや、ファン予備群が反応してきた時に見せられる情報を置いておくことも忘れずに!
こうすることで、ファン予備群に偏愛度の高い情報が届くだけでなく、拡散元となったファンの偏愛度も上がるという副次的効果もあります。人は自分が伝えた情報が、伝えた相手にとって有益だとうれしいものです。とっておきの情報を友達に伝えた時に「本当によかった」「教えてくれてありがとう」と言われるとちょっと誇らしいですよね?
私も個人的に、ファンをしているアーティストにインスパイアされたフィギュアアートの写真を撮りSNSでシェアしています。フォロワーが増えたり、コメントをもらえたりするとテンションが上がり、頼まれてもいないのに「勝手に宣伝隊長」をしてしまうのです。
さて、5回にわたる「偏愛ストラテジー」コラムにお付き合いいただきありがとうございました。ここで書ききれなかったことや事例などは下記に紹介している著書「偏愛ストラテジー」をご一読いただけると幸いです。
最後に一つ、質問です。
送り手の皆さんも何かのファンではありませんか?
送り手はファンを増やすことに一生懸命になりがちですが、一度立ち止まって、自分の中の偏愛を探してみてください。その「好き」という気持ちの中にはたくさんのヒントが詰まっていると思います。
このコラムがそのきっかけになればうれしいです。またどこかでお会いできるのを楽しみにしています。