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メディア環境激変の中で手に入れた豊かさと課題

平成の30年 情報メディアの変貌と革新No.2

2019/03/19

メディア環境激変の中で手に入れた豊かさと課題

電通メディアイノベーションラボは、2月に『情報メディア白書2019』を刊行しました。今年の巻頭特集「平成の30年 情報メディアの変遷と革新」では、現在へと至るメディアの歩みを長期にわたるデータを交えて振り返っています。

連載第1回では、長期データを改めて分析する中から浮かび上がった「若年層の就寝時刻の前倒し」の現象を取り上げ、若者のメディア接触行動の変化を促した意外な要因となっている可能性を指摘しました。

2回目となる今回は、本書の巻頭特集のPART 1「メディア接触行動の変貌と“豊かなメディア社会”への展望」に込めた思いや考えと、読み解きの視点をお伝えします。

“豊かなメディア社会”とは?

まず“豊かなメディア社会”という言葉について。これは、平成以前から利用されてきた従来メディアに90年以降のインターネットの普及と進化が加わることにより新たな価値の発掘・交流・共有が促される社会状況がもたらされた、というポジティブな考えを込めて名付けたものです。

本書の巻頭特集では、平成の30年間に生じたメディアを取り巻くさまざまな話題を年表としてまとめました。30年間を振り返ると、多様な現象や流行がメディアを通じて姿を現してきたことが改めて浮かび上がりました。

そうした現象や流行の中には、新たなメディアが舞台となった例も多く、近年ならばYouTubeでの再生数が当時の世界記録となった「ピコ太郎」の「PPAP」(2016年)や若者の間でも今やすっかり行動が定着した「インスタ映え」(2017年)などが思い浮かぶと思います。

図表1 主要メディアの接触率

図表1には、1998年から2018年までの20年間にわたる主要なメディアへの1日当たり接触率の推移を示しています。これを見ると一目瞭然ですが、20年間にわたりインターネットへの接触が一貫して伸びています。サービスの種類が増えるのに伴い、インターネットが先の例のような新しい流行現象の発生源としての役割や、新しい価値を共有・拡散させるゆりかごの役割を果たすようになってきました。

インターネット利用が広がりを見せる中で、暮らしのスタイルや趣味、さらには価値観などのレベルで、以前はどちらかといえばマイナーで社会へ広く知られる機会が少なかった人の活動や物事にも光が当たり、注目されることが増えてきました。

また、社会で広く知られるだけが大事ということではなく、共通の興味や関心を持つ人々がお互いに地理的・時間的制約を超えてつながり合える新しい場所をインターネット上に見つけることができるようになりました。多くの人々がそうした変化を感じているようです(図表2)。

図表2 メディアの多様化による社会の変化(1)

もちろん、こうした利便性ゆえのトラブルや事故も数多く発生してきたものの、平成の30年間のメディア社会は、このような意味で、総じて“豊か”になってきたといえるのではないかと、私たちは考えています。

平成「後」の“豊かなメディア社会”に向けた“戸惑い”と課題

こうしてネット空間の中で好きな場所を見つけ、心地よい時間や体験を過ごすことができるようになったことと対照的に、他方では、少しでも感覚が違う人との「ディスコミュニケーション」とか「不寛容」が目立つ社会となってきており、数多くの課題も指摘されるようになりました。

例えば、情報が増えて世間の人々の平均的な考えが見えにくくなったことや、自分とは無関係な情報に触れることが増えたこと、さらにはコミュニケーションの話題が一致しにくくなったことについて、そのように感じるという人も過半数を大きく上っています(図表3)。

図表3 メディアの多様化による社会の変化

このようにして見ると、インターネット利用の定着とともに手にした「豊かさ」と、それと裏腹の感覚ともいえる「戸惑い」が人々の中で共存している様子をうかがうことができます。

こうした状況を踏まえ、今回の巻頭特集では、変化の激しかった平成の30年間における異なる世代間のメディア接触行動に見られるギャップをデータで跡づけてみました。例えば、同じ若者といっても、20代以上と違い10代にはさらに新たなメディア接触様式が浸透しつつあることなどを紹介しています。

また、このように、同じ世代が青春時代に熱中した「新しい」メディアとともに年齢を重ねていくことで世代間のメディア接触行動の違いが生み出されていく現象を、巻頭特集では「世代特性の持ち上がり」という視点から解説し、今後の予測を行っています。

さて、この連載は次回から『情報メディア白書2019』と関連させつつ、平成の30年間でいつの間にか私たちの日常生活に浸透し、いまや当たり前のようにメディアを通じて受容しているコミュニケーションのスタイル、コンテンツ接触のスタイル、情報行動のスタイルについて、その来歴をさかのぼりながらたどり直す企画となります。どうぞご期待ください。